Mobile:NEWS 2002年5月31日 02:13 PM 更新

「504i」向けiアプリの“落とし穴”

機能向上の良い点ばかりが強調される「504i」。だが、表裏一体のデメリットも存在する。“パケット代”の問題はその1つ。そして、504i以降はコンテンツプロバイダも苦しい状況に立たされる可能性もある

 504iの登場で、iアプリの仕様は大幅に拡張された。特にこれまで10Kバイトだったiアプリの容量が30Kバイトに拡大されたことによって(5月20日の記事参照)、「表現力が豊になって、コンテンツの未来が広がる」という期待が高まっている。

モバイル・コンテンツ・フォーラムが5月27日に開催したセミナー「モバイル・カスタマイズモデルとASPサービスの進展」 に講師とした登壇した真田氏は、504i向けiアプリ開発には、これまでと異なるノウハウが必要であると説く

 しかし、携帯向けJavaアプリケーションの開発を専門とするケイ・ラボラトリー(以下ケイ・ラボ)の真田哲弥社長は、「実際のところ、悪い面についての危惧を持っている」と話す。

30Kバイト化で、上がる開発費

 504iの30Kバイト化がもたらすのはメリットばかりではない。コンテンツプロバイダにしてみれば、それがビジネスとして成立してくれないと困るからだ。アプリケーションサイズが3倍になったことで、「単純に工数が増える。しかし工数増えた分、売り上げが伸びるかというと、ユーザーは3倍は払ってくれない」(同氏)。

 しかも、市場は504iばかりではない。iモードユーザーの1000万人以上は未だに503iユーザーだ(ドコモのページ参照)。コンテンツプロバイダは、503i向けと504i向けの同時開発をしなくてはならないことになる。開発費はさらに増加する。

 こんな状況を改善するため、ケイ・ラボでは503i用の複数のiアプリを結合して504i用として利用できる「Glue」という開発環境を開発した(5月23日の記事参照)。Glueを使うことで、従来のiアプリ資産を504i用にも活用できるだけでなく、同時開発の負担を減らすことができると真田氏は力説する。

ダウンロード速度高速化がもたらすものは……

 もう1つ、504iではパケット通信速度が従来の3倍に当たる28.8Kbpsに高速化された。額面通り受け取れば、これはうれしい話だが、考慮が必要な点もある。通信は高速にはなったものの、ドコモはパケット料金のほうは変更していないのだ。

 同じく、高速なパケット通信が特徴のFOMAの時は、誰もが口を揃えて“パケット料金の低価格化”を主張した。「通信速度が高速になった分、ユーザーは瞬時に大量のパケットをやりとりしてしまう。またリッチなコンテンツは可能になるが、その分パケット量がかさむ」というのが、その理屈だ(2001年2月の記事参照)。

 FOMAとは絶対的な速度の違いこそあるものの、504iでもこの理屈は当てはまるだろう。同じ時間、iモードを使っていればパケット料金はかさむ。よりリッチになったiアプリをダウンロードすれば、これまでのiアプリの3倍のパケット代がかかる。

 「ユーザーは最初の月、驚くことになる。『パケ代こんなに来た、ヤベー』。それで何をするかというと有料コンテンツを解約する」(真田氏)

 ユーザーが携帯電話代として1カ月に払える額はおそらく一定だ。合計料金が予算をオーバーしたときには、“パケット代を減らそう”とは考えず、まず固定料金として毎月発生しているコンテンツ料金に目がいく。

 リッチなコンテンツを多数提供することで、パケット代が増加し、有料コンテンツの解約に結びつく……。高速化された504iでは、そんな可能性さえあり得る。

待ち受けアプリが持つ可能性

 もちろん、コンテンツプロバイダにとって朗報ともいえる機能もある。504iのウリの1つ、待ち受けアプリだ。

 従来から待ち受け画像コンテンツは、大きな人気を誇っていた。しかしビジネスとしては難しい部分もある。「待ち受け画面コンテンツの泣き所は、解約率が非常に高いこと」(真田氏)

 待ち受け画像は端末内に保存できるため、欲しい画像を取得したユーザーは早々とコンテンツを解約してしまうのだ。コンテンツプロバイダは、頻繁に新しい画像を用意するなど、解約防止のためにさまざまな工夫を重ねてきた。

 それが、待ち受けアプリの登場で状況が変わるかもしれない。待ち受けアプリは“画像が動く”だけでなく、「待ち受けアプリが実現する画像の自動切り替えが、解約のブレーキになる」(真田氏)からだ(5月21日の記事参照)。

 ケイ・ラボでは、こんな待ち受けアプリの有用性に着目し、「MotherDock」という簡単に待ち受けアプリを作成できる開発環境も開発した(5月22日の記事参照)。画像の自動ダウンロードも視野に入れたアプリ開発が可能だ。

次第に変化していくコンテンツビジネス

 既に多くのコンテンツプロバイダが、ケイ・ラボの開発環境を活用して、504iコンテンツを開発。“ビジネスになる”504iコンテンツは、一筋縄ではいかないことを感じさせる。

 従来から、iアプリは機種ごとの互換性の低さが指摘され、コンテンツプロバイダは機種ごとにiアプリを用意する必要があった(2001年2月の記事参照)。504i以降は、1本の開発コストが増えることに加え、対応させなくてはいけない機種数も増加する。

 さらに、ディスプレイの高解像度化が始まっているのも苦しいところだ。N504iは、ほかの504iの1.5倍の画素数を持つ液晶を採用した(5月30日の記事参照)。待ち受け画像、iアプリ共に、今後は高解像度版と低解像度版の両方を開発していく必要に迫られる。

 ユーザーの側にも注意が必要だ。通信速度が上がっているためストレスは軽減されているが、増加したiアプリサイズ、高精細ディスプレイ向けの待ち受け画像は、パケット代金の増加に直結する。

 これまでユーザー数の急激な増加に支えられてきたiモードのコンテンツビジネスだが、そろそろユーザー数の伸び率は低下。市場の拡大による売り上げ増加は厳しくなっていくだろう。その上で、止まることのない端末の機能拡大は、コンテンツ開発費がまだまだ上昇することを意味している。

 504iの登場は、コンテンツビジネスの面でも新しい時代が始まることを象徴しているのかもしれない。

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[斎藤健二, ITmedia]

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