Mobile:NEWS 2002年7月4日 11:58 PM 更新

低分子から高分子まで――有機ELの最先端製造技術をチェック

フラットパネルディスプレイ製造技術展で、次世代ディスプレイとして期待されている「有機EL」関連の出展が注目を集めている

 ビッグサイトで開催されているフラットパネルディスプレイ製造技術展(ファインテック・ジャパン)。会場でひときわ注目を集めていたのが、次世代ディスプレイとして期待されている「有機EL」関連の出展だ。会場中央に設けられた有機ELコーナーには25社が有機EL関連の出展を行い、最新製造技術をアピールしていた。

 出光興産のブースでは、昨日発表した長寿命材料を使った白色有機ELを展示していた。この材料を使うことで、ノートPC並みの輝度(100カンデラ/平方メートル)で10数万時間の寿命と、経年による色変化の低減、120度の耐熱性などの特徴を備えた、より実用的な白色有機ELを作ることができる。バックライトに使って機器を薄型にできるほか、耐熱性を生かして車のメーター用照明にも応用可能という。


長寿命材料を使った白色有機EL

 同社は石油事業で培った有機合成の技術を生かして、1985年から有機ELの開発に着手。1995年には世界に先駆けて青色発光材料を開発している。今回の白色有機EL材料は、同社が得意とする青色系に橙色系の発光材料を組み合わせて、白色を出している。「2系統の色を組み合わせて白色を表現するのは従来からある手法だが、これまでは2色の特性がそれぞれ違っていて、経年による色の変化が起こっていた。今回は、2色の特性を近づけることで、白色が安定して出せるようになった」(同社)。


有機ELの材料

 東芝と松下電器産業の電子ディスプレイ事業が統合して今年4月に設立された東芝松下ディスプレイテクノロジーのブースでは、3G携帯電話向け2.2インチ有機ELディスプレイが参考出展されていた。

 4月の電子ディスプレイ展「EDEX2002」では、東芝側が開発していたという17インチの高分子有機ELディスプレイを展示していた同社だが、今回の2.2インチは松下側が開発していたというシャドーマスク蒸着方式の低分子タイプ。スペックは176×220ピクセル(QCIF+)で26万色表示、輝度は100カンデラ/平方メートル。液晶に比べて高コントラスト・広視野角で高速応答性に優れた点を、動画のデモンストレーションでアピールしていた。「このディスプレイの特徴は“電流”で駆動している点。電流駆動用ドライバICを新開発した。この方式は、トランジスタの画質ムラを補正しやすい。来年4月頃に製品化の予定」(同社)。


液晶に比べて高コントラスト・広視野角で高速応答性に優れた有機ELディスプレイ

 このように、有機ELの発光材料には、低分子と高分子がある。開発が先行し、すでに製品化の段階にきているのが低分子タイプ。しかし、水分や高エネルギー粒子に弱いという特性から、シャドーマスクによる蒸着方式でしか作れないなど、製造プロセスでの制約がある。一方、高分子はインクジェット方式などの印刷法で製造できるため、高精細で大画面の有機ELディスプレイを作れる。

 この高分子タイプを出展していたのがセイコーエプソン。「世界最高レベルの解像度」(同社)という130ppiの2.1インチ有機ELディスプレイを参考出展していた。同社独自のインクジェット成膜技術によって、高画質、高精細を低コストで実現している。「インクジェット方式は、高価な有機材料の無駄が少ないほか、タクトタイム(製品1つあたりの生産時間)が短くて生産性が高い。大画面化も容易。2004年頃の量産を目指している」(同社)。


セイコーエプソンの高分子タイプ2.1インチ有機ELディスプレイ

 大画面化では、低分子タイプでもチャレンジが行われている。低分子タイプのパターンニングでは、材料の特性からシャドーマスク蒸着方式が主流になっていることは先に触れたが、この方法では、ガラスと金属製マスクとの熱膨張率の違いが発生し、大型サイズになるほどマスクとのズレが大きくなる。このことから「低分子は大画面化が難しい」といわれてきた。

 だがこのほど、オプトニクス精密が有機EL用の大型蒸着マスク技術を開発した。今回の展示会では、15.5インチ用の蒸着マスクを展示していた。「金属の材質組成を見直すことで膨張係数をガラスに近づけ、さらに膨張しにくい構造で大型サイズでの高精度蒸着を可能にした。この技術は、最大30インチまで応用できる」(同社)。


オプトニクス精密が出展した有機EL用15.5インチ蒸着マスク。最大30インチまで応用できるという

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関連リンク
▼ フラットパネルディスプレイ製造技術展
▼ 出光興産
▼ 東芝松下ディスプレイテクノロジー
▼ セイコーエプソン
▼ オプトニクス精密

[西坂真人, ITmedia]

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