Mobile:NEWS 2002年7月9日 07:39 PM 更新

サイバーショットU、スティック型の理由〜ソニーに聞く開発裏話

手のひらサイズながらデジタルカメラの基本機能を押さえた「サイバーショットU」。デザインや小型化へのこだわり、今後の進化の方向性について聞いた

 「常時携帯し、日常を画像でメモするビジュアルブックマークスタイル──」をコンセプトに開発された、手のひらサイズのデジタルカメラ「サイバーショットU」(6月27日の記事参照)。部品点数を「DSP-P2」との比較で30%削減するなど技術的な部分に注目が集まりがちだが、「所有することの満足度」を高めるための工夫も凝らされている。

カラーによって違う塗装方法

 「これまでのサイバーショットのメインユーザーは30代の男性。サイバーショットUは、既存ユーザーのサブマシンとしての利用や、増え始めている20代の女性や若年層へのアプローチを考えたデジタルカメラ」と話すのは、ソニーマーケティング デジタルイメージングマーケティング部マネジャーの佐藤淳氏。

 従来機種の「DSC-P9」や「DSC-P5」の利用頻度を調査したところ、週に1度、月に1〜2回、またはイベントや旅行の時にしか使わないというユーザーが多く「価格に見合うだけの使われ方をしているのだろうか」(佐藤氏)という疑問がわいたという。


ソニーマーケティング デジタルイメージングマーケティング部マネジャー、佐藤淳氏

 また、増えつつある女性や若年層のユーザーへのアプローチを考える時期に来ていたとも話す。「現在のサイバーショットシリーズの女性ユーザー比率は20パーセント(ソニー調べ)。カラーバリエーションで選べる「DSC-P2」のリリースで、女性のユーザー比率が10パーセント上がったといい、そこで獲得したユーザー層を伸ばすためにも「女性に受け入れられるためにふさわしい機能は何かを追求した製品の必要性を感じた」(佐藤氏)。

 開発に当たっては、20代の女性へのリサーチ結果も反映されている。「女性が気にするのはデザインや色、大きさといった外観的な要素と操作性のシンプルさ。所有していることの満足感を得られるデザインと、毎日持ち歩いて思い立ったときにすぐ撮影できる機動力にはこだわった」(佐藤氏)。

 サイバーショットUには、メロウパールピンク、メタルソニックブルー、シルキープラチナシルバーの3色がラインアップされている。カバーのロゴ部分はアルミをダイヤで削りだす処理が施され、色の付け方も各色ごとに異なるという。

 「ボディにはアルミ合金を採用している。メタルソニックブルーはアルミ素材自体に青い色を付けてアルミのメタリック感を活かしている。メロウパールピンクは1回アルミ素材の上に下地を塗ってパールピンクをかぶせている。シルキープラチナシルバーは、パール顔料入りの塗料を使って光の加減で色味が淡く変化する」(佐藤氏)。パールピンクは「今、女性に一番人気のあるネイルカラーの色を調べてそれに近い色を再現している」(同氏)というこだわりようだ。

なぜスティック型なのか

 サイバーショットUは、やはり小型軽量デジカメとして注目を集めているカシオ計算機の「EXLIM」(6月7日の記事参照)とは異なる小型化へのアプローチを図っている。「EXLIM」は薄さを追求しているが、サイバーショットUは敢えてスティック型にこだわった。

 「スティック型はホールド感が良い」(佐藤氏)ということもあるが、バッテリーに単4のニッケル水素充電池2本を使っていることがスティック型の原型となっているようだ。これはユーザーの利便性を考えた上での選択であると佐藤氏は言う。予備のバッテリーを用意する際に、「専用のリチウムイオン充電池にしてしまうと数千円のコストがかかる。ニッケル水素充電池なら500〜600円ぐらいで入手でき、ユーザーのコスト的な負担も軽い」(同氏)。また持ち時間が短いため推奨はしていないが「いざというときにはコンビニで売っている単4のアルカリ電池でしのげないこともない」(同氏)。

 また、「多少厚くなってもカバーを付けてレンズを保護し、カバーの開閉によってカメラをオン/オフできるという使い勝手のよさを優先した」とも。「スティック型は、サイバーショットのアイデンティティを継承しつつビジュアルブックマークというコンセプトを落とし込んだ結果」(佐藤氏)。

小型化へのアプローチ

 コンパクトに仕上げるための技術については、従来のサイバーショットシリーズで培った実装技術を進化させたものだと佐藤氏は話す。「P1、P5と新しい製品を出すたびに部品点数を減らしていって実装技術を上げてきた。その結果サイバーショットUでは最新機種であるP2の約30%減の部品点数。基板を折りたたむような形で内蔵するフレキシブル実装も、従来機種より進化した形になっている」(佐藤氏)。CCDには1/2.7型のプログレッシブ型を採用、機動力の速さや操作性の素早さに貢献しているという。

 ソニーは7月より従来の半分ほどの大きさのメモリースティック「メモリースティックDuo」(6月3日の記事参照)を発売すると発表しているが、汎用性を考えたときにサイバーショットUをDuoのみで使える仕様にするのは時期尚早だと佐藤氏。「従来機種の買い増し需要も想定しているため、Duoのみの対応にしてしまうと今までの(メモリ)資産を活かせなくなってしまう。メモリースティックスロットならアダプタを付けることでDuoも利用できるため、現時点ではメモリースティック対応が最適の選択であると考えている」(同氏)。

 小型化と価格帯のバランスから、今回搭載を見送ったのは光学ズームやデジタルズーム、ムービーの音声対応といった機能。「光学ズームは現状ではこの厚さの中に搭載するのは無理。デジタルズームを実現するには基板上に画像処理のための回路を積まなければならない。また、ムービーの音声対応のためにはマイクを内蔵する必要があり、ボディにマイク用のスペースが必要になる。サイバーショットUは小型であることから機能の取捨選択が大事。今回見送った機能は、製品のコンセプトやデザイン、コストなどをトータルで考えて割り切った部分」(佐藤氏)。

利用シーンのバリエーションで選べるように

 今後の進化の方向性については、「ビジュアルブックマーク」というコンセプトをさらに強化するさまざまな方向性を模索しているという。

 サイバーショットU自体がこれから発売される製品であるため具体的なことはまだ明かせないというが、デザインや機能、利用シーンのバリエーションをユーザーに提案できるようなブランドに育てて行きたいと佐藤氏は話す。「イメージとしては腕時計のG-SHOCKやSWATCHのような感覚。例えば海外旅行専用のUや、スポーツ観戦専用のUがあってもいいかもしれない。ユーザーの日常に応じたバリエーションを揃え、常に新しいニュースをUから発信したい」(同氏)。

関連記事
▼ 手のひらサイズのデジタルカメラ「サイバーショットU」と「EXILIM」を徹底比較
▼ 日常風景を“ブックマーク”するデジカメ――手のひらサイズの「サイバーショットU」
▼ ようやく登場のDuo、採用第1弾は“iショット対応端末”
▼ 高速レスポンスに“感動した!”――カシオ「EXILIM」
▼ カシオ、“世界最薄デジカメ”「EXILIM」を発表
▼ ウワサの“カードサイズデジカメ”を見てきました

関連リンク
▼ サイバーショット公式サイト

[後藤祥子, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!