Mobile:NEWS 2002年7月12日 07:59 PM 更新

ツインCPUが携帯にもたらすもの(1/2)

携帯電話にアプリケーションプロセッサを搭載する、いわゆるツインCPUの時代が迫ってきた。特に第3世代端末では、ツインCPU化はもはや当たり前のことと受け止められている。ツインCPUは携帯電話に何をもたらし、今後どうなっていくのだろうか

 携帯のツインCPU化は、予想以上に早いペースで進みそうだ。3G(第3世代)端末では、そのほとんどがアプリケーションプロセッサを搭載したツインCPU構成を取ってくるといわれている。

 しかしツインCPUは3Gに限った話ではない。NTTドコモ向けの富士通製端末「F504i」が搭載した(5月30日の記事参照)のを皮切りに、来年春までには2G(第2世代)、2.5Gの端末でもアプリケーションプロセッサ搭載が進みそうだ(6月25日の記事参照)。

 ツインCPUの現状と今後の進化の方向性、さらにはツインCPU化で携帯電話の何が変わっていくのか。探ってみることにした。

過渡期にさしかかったツインCPU

 通信を司るベースバンドチップのほかに、アプリケーション用のCPUを搭載したのが、ツインCPUと呼ばれる構成だ(そのメリットはこちらを参照)。

 しかし一口にツインCPUといっても、端末によって、どちらのCPUがどのような処理を行うかはだいぶ異なっている。現在のツインCPUは、動画処理やJavaの動作など一部の処理のみをアプリCPUが行うものがほとんど。基本的なソフトウェアは従来通りベースバンドチップ側で動き、高速な処理を必要とするものだけをアプリCPUで行う。

 例えば、NEC製のFOMA端末「FOMA N2002」では、既にIntelのStrong ARMが搭載されているが(4月22日の記事参照)、利用するのはMPEG-4のデコードが中心。富士通製の「F504i」でも、Javaと3Dポリゴンに関してはアプリCPUが処理しているが、そのほかのソフトウェアは従来通りベースバンドチップで処理されていると見られる(5月30日の記事参照)。

 ただ、これはツインCPU化への移行期ゆえの、いわば過渡的な仕様ともいえそうだ。

 「今のアプリCPUは、コアチップ(ベースバンド)に対して“従”なんです。コアチップが主導権を持っていて、アプリCPUは子プロセッサ。これから(機能的に)上位のアプリが出てくると、コアチップ中心では対応しきれない」。こう語るのは、NECの瓜屋晋氏だ。NECは松下電器産業、松下通信工業と共同で3G向けツインCPUアーキテクチャの開発を進めるなど(2月28日の記事参照)、ツインCPUに積極的な端末メーカーの1つ。瓜屋氏はその同社で、ツインCPUアーキテクチャ開発に携わるNECネットワークスのモバイルターミナルコアテクノロジー開発本部グループマネージャーを務めている。

 同氏によれば、主なアプリケーションはアプリCPU側で動かし、ベースバンドチップはPCのアーキテクチャで言う“モデム”としての役割のみを担う──。それがツインCPUの最終的なゴールになる。実際、NECと松下が共同開発しているツインCPUアーキテクチャは、完全にアプリCPUを中心としている。ユーザーの目に触れるソフトウェアはすべてアプリCPUが処理する格好だ。

 「コア側(ベースバンドチップ)は、伝送して符号を解読するところまでしかしていない。音を出すとか、音の符号化、画像の符号化はアプリCPU側が行う」(瓜屋氏)

 つまり、音声通話時でさえもアプリCPUが動作している。3G端末では音声コーデックにAMRという方式を用いるが、音声を符号化するところまでアプリCPUが行い、その通信のみをベースバンドチップが請け負う。

 この仕様を採ったのは、テレビ電話を意識したためだ。テレビ電話の場合、音声処理のほかに動画像処理が必要になる。音声処理をベースバンド側ですべて行う仕様にしてしまうと、動画像処理を行うアプリCPUが同時に動くことになる。音声と映像が同期を取って処理を行うためには、アプリCPU側ですべてを行うほうが都合がいい。

 待ち受け時の画面表示も、アプリCPU側が行う。ベースバンドチップを“主”と考えるアプリCPU、例えば日立製作所のアプリCPUである「SH-Mobile」は、待ち受け時にはほぼ停止し、ベースバンドチップがSH-Mobileをスルーして液晶を制御することができるようになっている(6月25日の記事参照)。しかし、この仕様は、あくまでベースバンドチップが中心の構成で生きるものだ。

 それに対し、ベースバンド側が通信だけに特化しているNEC・松下のツインCPUアーキテクチャでは、「液晶だけ表示したい、という場合は、アプリCPU側で“一部だけ動かす”という処理を行い、消費電力を削減する」(瓜屋氏)。


NEC・松下のツインCPUアーキテクチャでは、アプリCPUが中心になる。通話時の音声処理から、電話帳などのアプリケーション、そしてもちろんJavaや動画再生など、そのほとんどはアプリCPUが処理。ベースバンド側(伝送系)は、単に通信を行う。音声がAMRにエンコードされた状態でベースバンド側に渡されることを想定したインタフェースのため、AMRコーデックを採用していない2Gや2.5G端末では、ここで規定するインタフェースをそのまま使うわけにはいかない。「2.5G向けに(このインタフェースを)使う場合、多少の変更が必要」(瓜屋氏)

携帯向けCPUに名乗り挙げる3つのチップ

 ツインCPU化の際、重要になるのは、“どのアプリCPUを採用するか”という選択だ。携帯向けCPUとして現時点で有名なものとして、日立製作所の「SH-Mobile」、米Texas Instruments(TI)の「OMAP」、Intelの「XScale」の3つがある。

 アプリCPU側でほとんどのソフトウェアを動作させる場合、いったんあるアプリCPUに決めたらそう簡単にはほかのCPUシリーズには変更できない。ソフトウェアの互換性もなければ、ベースバンドチップとの接続インタフェースも異なっているからだ。

[斎藤健二, ITmedia]

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