Mobile:NEWS 2002年7月26日 08:17 PM 更新

携帯を武道館ライブのチケットに〜モバイルシンボル

1万人が、すべて携帯をチケットとして利用──。そんなライブが行われた。三菱商事のモバイルシンボルを使ったもので、携帯からWebにアクセスして2次元コードを入手。来場者は、会場入り口で、チケット代わりに携帯を読み取り機にかざしていった

 「ご入場の方は、携帯を右手に、バーコードを表示させてお待ちください──」。7月26日、東京九段下の武道館で行われたHIP HOPグループ「RIP SLYME」のライブに集まった1万3000人のファンは、皆、携帯を開いて入場を待っていた。


携帯を手に、入場を待つファンたち。電子チケットだけに、こうした催しにつきもののダフ屋の姿もない。入場ゲートは3つ。読み取り機は計40台が用意された。「慣れれば、紙のチケットよりも早く処理ができる」とモバイルシンボルに技術協力しているウェルネットの宮澤一洋営業部長

 今回のライブチケットは、携帯のディスプレイに表示された2次元コード。三菱商事が提供する「モバイルシンボル」である。24日に発売されたRIP SLYMEのセカンドアルバム「TOKYO CLASSIC」に記載されたURLに携帯電話からアクセスすることで、チケット代わりの2次元コードが表示される。

 紙のチケットを廃し、「全員が携帯で入場する」(モバイルシンボル担当の三菱商事自動車事業部の千田隆平氏)。1万人におよぶ入場者を、すべて電子チケットで対応するという壮大な試みだ。

 4時開演に合わせて、2時から入場はスタート。「携帯をチケットにするのは始めて」というファンが多い中、トラブルもなく入場は進んだ。右手に持った携帯を、机に置かれた読み取り機にかざすと、瞬時に認証が行われる。

 「アルバム発売から24時間で10万件以上のアクセスがあった」と発売元であるワーナーミュージックジャパンの担当者。先着1万名を無料招待したため、アクセスが殺到した。チケットを獲得できたファンの1人は「午後3時からアクセスを繰り返して、チケットにエントリーできたのは深夜の2時」だったという。

 ウェルネットの宮澤氏によると、チケットエントリーとモバイルシンボル(2次元コード)の配信は別システム。エントリー用のサーバは負荷が高かったようだが、モバイルシンボルの配信は「同時に100のシンボルを10秒以内のレスポンスで配信する実績がある」と説明した。

技術指向ではなく、市場を作っていくことが重要

 三菱商事の千田氏は、「テクニカルオリエンテッドではなく、市場を作っていくことが重要だ」と強調する。


モバイルシンボルを表示した携帯電話と読み取り機。2次元コードには、国内で主流のQRコードを採用。1次元コードに比べて、記録できる情報量が103バイトと多いのがメリットだという。懸念された読み取り機のコストも、1台5万−10万円に抑えた

 1次元、2次元コードを使って携帯をチケット代わりにするのは技術的に珍しい取り組みではない。昨年の東京モーターショーでも、携帯を使った電子チケットが販売され成功を収めた(2001年10月の記事参照)。現在では携帯のディスプレイではなく、赤外線を使った取り組みも盛んだ(7月23日の記事参照)。

 千田氏は、まず「対応できる携帯の数がどれくらいあるかが重要だ」とする。専用の機能が付いた端末が必要な赤外線と違い、単純なWebアクセスを利用するモバイルシンボルでは「国内だけで5000万台が対象になる」(千田氏)。

 さらに、どれだけ身近に感じてもらえるかを重視。今回のライブのチケットも、プロモーションの一環として捉えている。「これが料金の収納代行だったら面倒で使ってもらえないかもしれない。コンサートだからみんな必死になって使った。実際に何が求められているのか、から入っていく」(同氏)。

 チケットや料金収納代行に関連する多くの企業の利害をまとめていけるかどうかも大事な点だ。「目指すのはあくまで公共のインフラ。オープンシステムだ」と千田氏。今回は携帯をチケット代わりに利用したが、モバイルシンボルが狙うのは、公共料金の支払いや乗り物のチケット、バーチャルクーポンなどになる。

 紙を使った公共料金支払いの問題の1つは、「請求書を送る側にコストがかかること。1通あたり、200−280円の世界だ」(千田氏)。請求書を電子化し、モバイルシンボルをコンビニで見せることで、低コストかつ簡便に支払いができる世界を目指す。既にモバイルシンボルは一部の都内コンビニに設置されており、携帯電話料金の収納に利用されている。「公共料金、大手交通機関とのシステム構築が始まっている。8000店舗のコンビニへの配備も決定した」(同氏)。

紙より携帯? 来場者には好評

 今回のライブは、一般の人たちが携帯を使った決済にどれだけ馴染めるかを計るバロメータだったともいえるだろう。試みは成功したように見えた。ファンたちは学生が中心で、携帯の扱いに慣れているということもあり、戸惑う人もほとんどいなかった。

 「友人と隣の席が取れなかった」「獲得した電子チケットの譲渡の仕組みはまだこれから」。……など、今後の技術的な課題はあるものの、利用者には案外好評のようだ。「紙と比べると、携帯のほうが忘れなくていい──」。ある女性の入場者は、そう語っていた。

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関連リンク
▼ 三菱商事
▼ モバイルシンボルのページ

[斎藤健二, ITmedia]

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