Mobile:NEWS 2002年7月31日 03:50 AM 更新

「ストレート端末のネガティブイメージを変える」〜J-D06“graphica”の挑戦

個性的なデザインの端末がなかなか出てこない日本の携帯電話市場で、ひときわ目を引くストレート端末「J-D06“graphica”」が登場した。このクールなデザインはJ-フォンと三菱電機の端末デザインに対する挑戦でもある

 7月19日から店頭に並んだJ-フォンのストレート端末「J-D06“graphica”」(以下graphica)(7月22日の記事参照)。斬新で未来的なデザインは発表時から注目を集め、発売時期の問い合わせも多かったという。

 同社は昨年から携帯のニーズについてマーケティングリサーチした。その結果、現状の携帯デザインに対する不満が高いことが分かり(7月10日の記事参照)、「前向きに取り組んでいく必要がある」(J-フォン・プロダクトマネジメント統括部 デバイス・SIM・サービス部主任・福原知鈴子氏)と判断。graphicaの開発に着手した。

 「似通ったデザインが多いというのは誰もが感じていること。例えば今は折りたたみ式が主流で、デザイン的には若い女性向けと思われるようなものが多いように感じられる」(同氏)。大人が持てるデザイン、男性が持てるようなデザインの端末が少ないことから、それらの要素を製品の中に落とし込むことができないかと考えたのだ。


J-フォン・プロダクトマネジメント統括部 デバイス・SIM・サービス部課長代理・大江裕氏(左)と同部主任・福原知鈴子氏(右)

2つのデザイン案の中から選ばれたgraphica

 J-D06“graphica”のデザインコンセプトとしてJ-フォンが三菱電機にオーダーしたのは、「大人の男性にも受け入れられること」「360度、どこから見てもスマートでかっこよく、これまでにない携帯電話として強い印象を与えること」「高級感があること」の3つ。

 ストレート端末を選んだのは、多くの人が現在、ストレート端末に持っているネガティブイメージを覆したいという思いがあったからだと福原氏は話す。「ストレート端末は、おじさんが持つもの、サラリーマンが持つもの、ダサい、かっこ悪いというネガティブなイメージが付きまとっている。実はストレートはこんなにかっこよくて使いやすい……という提案をするための挑戦でもあった」(同氏)。

 それを受けた三菱電機デザイン研究所がJ-フォンに提案したのは、2つのカテゴリー案。「発売されたgraphicaのほかに、もう1つ、シルバーを基調にストレートなラインを多用した直方体のオブジェのようなモデルがあった」(三菱電機デザイン研究所情報システムデザイン部情報第2グループ・山名新二氏)。そしてユーザーへの調査の結果、より広く受け入れられたメタルオレンジのgraphicaが選ばれることになった。「使いやすさや、手に持ったときのなじみ感など、実際に使ったときのことを想定した評価はメタルオレンジのgraphicaがやはり上だった」(福原氏)。

 三菱電機側は、これまでにない新しいイメージの端末開発に向けて、パーツの構成や配色、素材感に工夫を凝らしたという。プラスチック素材でありながら高級感を出すため、「表面の仕上げにはかなりこだわった。これまで使ったことのない輝度の高い塗装方法を使って一見アルミに見えるような仕上がりになっている」(三菱電機デザイン研究所 情報システムデザイン部長の原正樹氏)。


三菱電機デザイン研究所 情報システムデザイン部長の原正樹氏(右)とデザインを担当した情報第2グループ山名新二氏(左)

 オレンジの塗装はスリーコートという三層のコーティングでアルミ調の質感を実現している。「シルバーメタリックの塗装の上にクリア感のあるオレンジの塗料を重ね、さらにUVという硬くなる透明の素材を使い、傷がつきにくいようにしている」(原氏)。裏側やボタンのシルバーの部分は金属的な質感でありながら手になじむしっとりした質感に。また、メニュー操作のボタンは光沢感のあるクロムメッキ素材を使って、ポイントとして目立つように作られている。

 サイドのブラックのラインはメタリックオレンジを引き立たせるために、光沢度の高い素材を使っている。「うるし塗りの漆器のように、光沢があって高級感も感じるイメージを狙った」(山名氏)。液晶ディスプレイ部分はハーフミラーコーティングが施され、プラスチック素材でありながらガラスのような見え方をするよう工夫されている。

 オレンジを選んだ理由は、斬新さとインパクトをユーザーに与え、登場したときに強い印象を残す色だったからだと山名氏は言う。「あまりインパクトが強すぎる色でユーザーに嫌われてしまっては意味がない。ある程度のユーザーに受け入れられる色であり、今年のトレンドカラーの中にも入っていることからオレンジを採用した」(山名氏)。カラートレンド上のオレンジの持つ意味が「新しい何かを発信する色」で、今回の端末開発のコンセプトに合致したことも理由の1つだ。実は候補として、ブルーやブルーグリーン系の色も上がっていたが、企画優先型の端末としては弱かったため見送られたという裏話もあった。

 graphicaは、通常の製品に比べるとそれぞれのパーツの技術的な難度が高かったため、部品メーカーや塗料メーカー、工場とかけあいながらハードルをクリアして量産にこぎつけたと原氏は話す。

 graphicaの企画が立ち上がったのが2001年12月でリリースは7月。量産までは約半年という短い期間だった。「端末の開発期間としてはスーパーイレギュラー。鬼のスケジュールで、うちもメーカーも泣く人が続出した」(福原氏)。

今後のJ-フォン端末はデザインにこだわる

 福原氏は、「キャリアが発注してメーカーに作ってもらい買い取るというOEMの仕組みが、冒険するような商品を生み出しにくいそもそもの構造を作っている」と、日本で個性的な端末が出にくい理由を分析する。

 メーカーはキャリアに買ってもらうためにたくさん売れるようなデザインを考えることになり、冒険をするというよりは、大きい液晶やカメラなどといった人気の高い機能を嫌われないような端末デザインの中に落とし込むということになってしまう。いわば、ネガティブチェック。台数を出そうとすると、どうしても無難な端末になってしまうというわけだ。「何か思い切ったことをやろうという提案がメーカーのデザイン現場にきていないのではないか。それが個性的な端末が出ない土壌になっているのかもしれない」(福原氏)。

 J-フォンはこのような状況を打破するべく、今後携帯デザインに対して真摯に取り組んでいく方針だという。「スペックやプライスに関係なく、すべての端末に対してデザイン面に力を入れていく」(J-フォン・プロダクトマネジメント統括部 デバイス・SIM・サービス部課長代理・大江裕氏)。所有することへの満足感を感じられ、持つ人にふさわしいデザインを持つ端末開発に向けメーカーに協力を仰いでいると大江氏は話す。

 「いつ、どの端末からとは言えないが、気が付いたらJ-フォンのデザインはちょっと違うとユーザーに評価されるべく動いている」(同氏)。

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[後藤祥子, ITmedia]

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