Mobile:NEWS 2002年9月24日 03:26 PM 更新

働くお母さんを解放するテクノロジーとは?

インターネットの普及でSOHOワーカーとして働くお母さんが増えてきた。そうした女性たちを助けると称するハイテクツールはたくさんあるが、「本当に必要としている」ものとはズレがあるようだ

 インターネットのブロードバンド化で、家に居ながらにして働ける環境が整ってきた。無線LAN、携帯電話、ネット家電、ハイテク住宅──便利なインフラも次々に登場している。

 小さい子供を育てながらでも働けるので、お母さんSOHOワーカーが増えているそうだが、彼女たちは今のテクノロジーにどんな感想を持ち、何を期待しているのだろう。

 モバイルコンピューティング&コミュニケーション研究会の講演でW-SOHOを運営するエイガアルの伊藤淳子氏が、“働くお母さん”たちの本音を語った。


W-SOHOを主宰するエイガアルの伊藤淳子氏

働くお母さんの本音とは

 伊藤氏が運営するW-SOHOは、女性のSOHOワーカーを支援するサイトで、登録会員は現在、2万人超。働くお母さんも多いという。サイト内の掲示板では最近のテクノロジーに関する書き込みも多く、最近では「無線LAN」が話題になったそうだ。

 発端となったのは「キムタクのCM」。キムタクがPCを持ったままトイレに行くシーンを見た人の「こういうのっていいよね」という話から無線LANの話が盛り上がったという。キムタク効果もあるだろうが、家庭内のシーンを通じて「インターネットにつながったまま移動できる」というその特徴を訴えたことが、お母さんたちに伝わりやすかったらしい。

 しかし、公衆無線LANサービスについては「私たちとは関係ない」と思っている人がまだまだ多数派だとか。「ビジネスマンとオタクが集まるイメージ」という声も聞かれたという。マイナスイメージが先行して、便利さが今ひとつ伝わっていないようだ。

 複雑化する一方の携帯電話については、「そんなに多くの機能はいらない」と考える人が多いという。伊藤氏が10人ぐらいの主婦に聞いてみたところ、ケータイメールを使っている人は多いものの、iモードの閲覧や着メロのダウンロード、Javaのゲームなどは「ほとんどやっていない」という声が大半だったそうだ。

 伊藤氏は、キラーコンテンツがないことが、彼女たちが積極的に使おうと思わない理由だと分析する。「何ができてどのように便利なのかを具体的に提示できないと、最初は面白いと思っても飽きて使わなくなってしまう」。

 働くお母さんはとにかく忙しい。家事、育児、そして仕事までこなすとなると「小さい子供がいるご家庭では自由な時間が細切れでしかとれない」(伊藤氏)。便利なテクノロジーがあっても、その使い方や生かし方をじっくり調べる時間などないというわけだ。「分かりやすい、便利、簡単に使える」が、彼女たちの心をとらえるキーワードなのかもしれない。

 最近話題の情報家電やハイテク住宅についての意見も興味深い。家事や育児を助けてくれるのではと期待する人も多いというが、現在のアプローチは主婦が考える「便利さ」とは「ズレがあるようだ」と伊藤氏は指摘する。「外から風呂を沸かせなくてもいいから、風呂を掃除してほしいというのが彼女たちの本音」(同氏)。

 電子レンジや冷蔵庫、洗濯機など、これまでに発売されたネット家電は(2月5日の記事参照)、あらかじめ料理のレシピが入っていたり、冷蔵庫の中身の管理をしてくれる。確かに便利そうなのだが、その機能を使いこなすために「新しい何か」を覚えたり、データを入力したりしなくてはならない。そのためにはまとまった時間が必要になる。普段の行動の延長線上に「自然な形で」ハイテクが組み込まれないかぎり、彼女たちに受け入れられるのは難しいのだろう。

働くお母さんが今望むもの

 それでは今、働くお母さんが望むものは何なのか? それは「子供の安全確認ツール」「モバイルオフィス」「暇つぶしツール」の3つだ。

 子供の安全確認には「ココセコム」のような端末も出ている。だが、彼女たちの望んでいるのはそこまで大げさなものではなく、「スーパーマーケットで子供とはぐれたときにすぐ見つかる」ような身近なものだそうだ。また、子供に持たせられる単機能で低価格な携帯電話があったらいいという声もあるという。「今、(操作が簡単で、「いまどこサービス」(用語参照)が使える)ドラえホンがあったらいいのにというお母さんもいる」(伊藤氏)。

 モバイルオフィスでは、近くに住む人同士が共同で作業をするのに便利な、SOHOインキュベータオフィスのようなものが求められているという。SOHOワーカーが少なかった昔は離れた地域の人たちとチームを組んで働くことが多かったが、最近では近所の知り合いと組むことが増えていると伊藤氏。「自宅から100メートル以内で無線LANが使えると便利」というのが彼女たちの意見だそうだ。

 暇つぶしツールは、仕事や育児の合間の短い自由時間を有効に使える「簡単なチャットやゲーム」のようなものだ。

 こうした意見を聞いてみると、それほど大げさなものは望まれていないという印象を受ける。簡単なゲームやチャットはPCや携帯電話で既に提供されているし、SOHOインキュベータオフィスも町の施設と無線LANの組み合わせで実現できそうだ。企業が「今あるもの」を分かりやすく提案できれば、それが働くお母さんのささやかな手助けにつながっていくのかもしれない。

 伊藤氏の語る「働くお母さんの本音」。テクノロジーが「人が生活を共にする」部分に組み込まれようとしている今、「急激な」変化ではなく「身近なところからの」機能やインタフェースの見直しが求められているようだ。

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[後藤祥子, ITmedia]

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