Mobile:NEWS 2002年9月27日 11:57 PM 更新

日本通信・三田聖二社長が語る「MVNOのこれから」(1/2)

DDIポケットのMVNOとして、定額によるワイヤレスモバイル環境を提供する日本通信。「通信キャリアにはできない」サービスを目指す同社の「次の一手」を三田聖二社長に聞いた

 DDIポケットのMVNOとして、日本通信が事業を始めてから約1年が経つ。その間、同社はつなぎ放題のモバイルインターネットサービスや、体感速度を上げるアクセラレータの提供など、既存の通信キャリアができなかった斬新なサービスを打ち出し、順調に契約者数を伸ばしてきた。

 英国で生まれたMVNOという制度を日本に持ち込み、いち早く事業化させた同社にとって、これまでの展開はその目論見どおりだったのだろうか。また、今後、ライバル企業との競合やホットスポットなど新しいインフラにどう取り組んでいくのだろうか。

 同社の三田聖二社長に日本通信のこれまで、そしてこれからについて、話をうかがった(聞き手:後藤祥子、文中敬称略)。


日本通信の三田聖二社長

ZDNet:DDIポケットのMVNOとして事業を始めてから1年が経過しました(8月22日の記事参照)。三田さんからみて、事業は見込み通りに展開したのでしょうか?

 成功でしょう。6年前から事業として展開している携帯電話の回線ビジネスは、売り上げは100億円以上あったのですが、毎年のように10億円規模の損失が出ていました。それがMVNOをスタートさせてから、わずか9カ月ほどで単月黒字を目指せるレベルまで改善できたんですから。さすがに1年で毎月の赤字をなくせるところまで行くとは思いませんでしたが、これもこのビジネスモデルがうまくいったからです。

ZDNet:成功のポイントはどこにあるんでしょう。

 IPのネットワーク技術を個々のケータイ屋さんは持っていませんからね。メーカーさんも持っていない。データ通信事業を始めたら、彼らにできないいろいろな付加価値を付けたサービスができるということは、元々想像していました。この付加価値を付けたサービスが当たった。それで今があるわけです。

ZDNet:その代わり、他社の参入も相次いでいます。

 参入したのはNTTコミュニケーションズ、富士通、三菱、京セラといった大企業。彼らが参入してきたのは、(MVNOという)ビジネスモデルが優れていると評価したからです。私たちが社会に紹介したビジネスモデルを、大企業が認めた。そのことのほうがむしろ重要です。

 それにNTTコミュニケーションズが使ったのは、DDIポケットの卸売り回線ですよ。NTTから分割された会社が、競合相手であるKDDIの子会社のネットワークを使うという発想は、これまでの日本ではなかったものでしょう。

 これはNTTコミュニケーションズが(私たちが使っている)DDIポケットの128Kbpsパケットネットワークの価値を「優れている」と認めたからだともいえます。実際、DDIポケットは独自網としてIPネットワークをPHSの裏に打ちましたからね。128Kbpsの通信ができるような仕組みを早期に作っていた。

ZDNet:MVNOが日本で解禁されるにあたっては、三田さんご自身が深く関わっていますね。

 日本通信は6年前からMVNOを日本で立ち上げようとしてきました。それが一昨年、総務省が「次世代携帯電話ビジネスモデル研究会」をスタートさせ、移動体通信をこれからどうするか、有線と違ってオープンじゃない移動体通信をどうすればオープンにできるか、という議論を始めたんです。私もそれに加わってきました。

 それでオープンじゃないとどうなるのか。(キャリアが自己リスクでやるだけだと)いい技術を持っていても、事業展開が失敗したらすばらしい技術も一緒に失敗してしまう。「これは問題だ。どうすればいいか」という話になって、それならMVNOがあると。結局、昨年の7月になって、MVNOをやるべきだという総務省の結論が出ました。それからわれわれは準備期間を含めて8月にMVNO事業をスタートさせたわけです。

 (その意味では)日本通信はMVNOという制度を日本に紹介した会社。リーダーシップはこれからも守っていきますよ。競合相手が10社になっても20社になってもそれは同じです。

ホットスポットは「100%失敗する」

ZDNet:モバイルワイヤレスといえば無線LANのホットスポットに関心が集まっています。何らかの対応をする予定はありますか

 冷静に(状況を)見ているところです。アップルにはニュートンというPDAがありましたが、技術は素晴らしかったのに登場するのが早すぎて売れなかった。そういう例は山ほどあります。無線LANのホットスポットサービスもそうです。今いろいろな方たちが有料サービスとして売り込もうとしていますが、(彼らは)100%失敗すると思います。理由は簡単、お金にならないからです。

 (携帯電話やPHSが)無線のサービスでお金を儲けられるのは、クローズドだからですよ。免許は基準を満たした業者に限って与えられ、その事業者しかネットワークを作れません。その構築には何千億円という設備投資をしなくちゃならないから、きちんとお金儲けをする仕組みを作らせるようになっている。周波数と技術はクローズドになっていて、例えば周波数は使っていいのはここからここまで、しかもその人しか使っちゃいけないというように限らせている。ところが、無線LANのホットスポットは周波数も技術もオープン。だからビジネスモデルが構築しにくいんです。

 日本通信としては、ネットワークサービスとして「噂」の段階でやるつもりはありません。それが「実現」したところでサービスします。ベースがIP技術だから、無線LANもFOMAも「ワンオブゼム。やる時期になったら対応すればいいんですよ。

 たとえばもし法人が「やりたい」というなら、そのニーズに合ったホットスポットを、うちがいわば「ホットスポットのMVNO」として契約すればいいわけです。DDIポケットのネットワークを通してローミングさせられるようにもなるでしょう。もちろんそれは考えているし、既に準備して待っています。

ZDNet:PHSと無線LANを組み合わせたサービスは、鷹山も考えているようですが?

 言うだけなら誰でもできますよ。でも、ビジネスは「実現できること」を考えなければならない。PHSと無線LANを1つの端末でローミングさせるというのは、技術的な可能性は確かにある。でも、メーカーに端末を作ってもらうためには数千万円の投資が必要。最低ロットでも10万個は作らなければならないでしょう。

 その上、彼らのネットワークは(まだ)IPになっていない。ですから、アステルにつながった瞬間にIP網に入るわけではないんです。それでまたお金がかかります。通信事業者として数十億円の投資をする気があるんでしょうか?

 WiFiの機能は既にPCに標準で内蔵され始めているし、それを1つの端末にするのにどれだけの意味があるのか。彼らはこの業界もビジネスも分かっていない。早く大がかりな事業を立ち上げなければならないという事情は分かりますが、もう少し勉強してから話してほしいですね。

[後藤祥子, ITmedia]

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