Mobile:NEWS 2002年10月2日 03:36 AM 更新

“Bluetoothの未来”を探る――CEATECレポート

期待されながら、なかなか普及しないBluetooth。しかし、「今度こそ」と思わせる変化が起き始めている。CEATECでのBluetooth関連展示を紹介しながら、その今後を展望してみよう

 “注目の近距離無線技術”と言われて久しい「Bluetooth」。CEATECでも、ここ数年はBluetoothが毎年のように次世代技術として展示されてきた。だが、展示会のコンセプトモデルとして華々しく紹介されても、最終製品として市場に出てくるものは、実際にはほとんどないのが現状だった。

 CEATECのホール5からホール8にある「電子部品・デバイス&装置」ゾーンには、Bluetoothモジュールの開発に力を入れる部品メーカーが並んでいる。各メーカーが出展している最新のBluetoothモジュールを紹介しながら、Bluetoothを取り巻く現在の状況や今後を探ってみよう。

 現在、Bluetoothモジュールは、第1世代から第2世代への移行期にあり、部品メーカー各社はモジュール新製品を相次いで投入し、セットメーカーにアピールしている。第2世代のBluetoothモジュールは、消費電力が下がってサイズも小型化し、1モジュール当たりの価格も下がっている。

 村田製作所のブースでは、自社のBluetoothモジュールが採用されているLogitech(日本法人はロジクール)製のBluetooth対応ポインティングデバイスを使ってワイヤレスプレゼンテーションを行っていた。


同社製モジュールが使われたBluetooth対応ポインティングデバイス

 同社のBluetoothモジュールは、RF回路やベースバンド回路などすべての機能を1チップ化しながら小型化を実現している。今回のCEATECでは「1チップ化したものでは業界最小」という9.3×7.9×1.8ミリのBluetoothモジュール試作品も参考出展していた。


「1チップ化したものでは業界最小」というBluetoothモジュール試作品

 「第1世代から第2世代になって3ミリ以上小さくなった。モジュールのサイズダウンにより、今まで組み込めなかった周辺機器にもBluetoothが搭載できるようになって、携帯電話メーカーだけでなくPC周辺機器のセットメーカーも興味を示している」(村田製作所の担当者)。

 京セラのブースでは、先日発表したばかりの携帯電話向けBluetooth RFモジュール「RB07」を展示。CDMA端末向けでは世界最小となるモジュールのサイズは8×7×1.7ミリと非常に小さい。高密度実装技術によって小型化を可能にした。Bluetooth ver1.1に準拠し、すでにBluetoothロゴも取得済みだ。米QualcommのMSMベースバンドチップと組み合わせ、小型なBluetooth携帯電話を作ることができるという。


CDMA端末向けでは世界最小のBluetooth RFモジュール「RB07」

 太陽誘電のブースでは、参考出品ながら業界最小となる7×7×1.8ミリのBluetooth RFモジュールを紹介していた。用途に合わせてさまざまなタイプを用意している同社のBluetoothモジュールは、松下電器産業のDVカメラ用Bluetoothアダプタや、東芝の家電機器制御用Bluetoothユニットなどに使われている。


DVカメラ用Bluetoothアダプタや、家電機器制御用Bluetoothユニットなどに使われている

 Bluetoothモジュールの業界では、このようにモジュールのサイズダウンがトレンドとなっている。「より小さく、より軽く」が求められる携帯電話に搭載するためには、小さければ小さいほど有利になるからだ。もちろん、小型・軽量=性能につながる他のモバイル機器へ搭載する場合も同じことだ。    現在、部品メーカー各社はみな同じ英CSR社(Cambridge Silicon Radio)のBluetoothチップを使っており、仕様の差は少ない。つまり、“モジュールサイズ”が他社との差別化の大きな武器になるのだ。

Bluetooth応用製品はヘッドセットから

 日本では携帯電話への搭載が思うように進んでいないが、欧州ではBluetooth対応携帯電話にBluetoothヘッドセットという組み合わせが、一般的になってきている。運転中の携帯電話使用に規制がある欧州ではヘッドセット自体が普及しており、Bluetoothによってこれをワイヤレス化するニーズは、日本に比べても数段高い。


ソニーエリクソンのブースで展示していたBluetoothヘッドセットとBluetooth対応携帯電話

 ミツミ電機のBluetoothモジュールも、業界では定評ある製品の1つ。昨年5月に発表したソニー製Bluetooth対応cdmaOne機「C413S」には、同社のモジュールが採用されている。ブースでは、車載用携帯電話ハンズフリーシステムやBluetoothヘッドセットを参考出品していた。


ミツミ電機が参考出品したBluetoothヘッドセット

 あるメーカー担当者によると、欧州でヘッドセットが人気が高いのには、携帯電話の通信方式の違いにも理由があると言う。「欧州のGSM方式は、電波の出力が強いため、電磁波の影響を心配して端末をアタマに当てるのを嫌がるユーザーも少なくない。そのため、ヘッドセットが重宝がられているようだ」(メーカー担当者)。

 セットメーカーの中で、より商品化に近いBluetooth対応機器を展示していたのが松下電器産業だ。同社ブースでは、Bluetooth対応のMDプレーヤーアダプタとワイヤレスヘッドフォンを参考出品していた。


Bluetooth対応のMDプレーヤーアダプタとワイヤレスヘッドフォン

 Bluetoothを使ってMDの音をワイヤレスでヘッドフォンに送信できる。オーディオのリモート制御を規定したAVプロファイルとヘッドセットプロファイルの2つのプロファイルに対応しており、高音質のサウンドを無線環境で楽しむことができるという。デモンストレーションでは、特に音質面の良さを強調。ワイヤレスヘッドフォンを装着して、実際にBluetoothで飛ばした音を聴いてみると、確かにこれまでのBluetooth対応ヘッドセットとは一線を画している、ポータブルMDを楽しむには十分な音質になっていた。試作機は、すぐに製品として売り出しても遜色のない仕上がりだったが、実際の発売時期や価格などは未定とのこと。

 「現時点では、一般ユーザーが気軽に買えるとは言いがたい価格。Bluetoothモジュールのコストダウンに期待したい」(同社)。

 このように、Bluetoothモジュールの価格が高い点が、セットメーカーがなかなかBluetoothの製品化に踏み切れない大きな理由の1つになっている。

 コストダウンが図られた第2世代のBluetoothモジュールは、1モジュール当たりの価格が第1世代に比べて数百円ほど下がっているが、それでも1000円台前半とまだ高い。特に、部品のコスト要求が厳しい携帯電話にとっては、Bluetoothモジュールは、携帯電話の構成部品の中でも1、2を争うほどの高価な部品になってしまうのだ。搭載が一番望まれている携帯電話に、Bluetoothがなかなか普及しない理由がここにある。

 部品メーカー各社も、モジュールのコストダウンに取り組んでいるが、あるメーカー担当者は「モジュールに組み込むBluetoothチップ自体の価格が下がらないとこには、どうにもならない」と嘆く。現在、BluetoothチップはほとんどCSR1社でまかなっている。Bluetoothのコアパーツが、1社の寡占状態になっているというのも、コストダウンが遅々として進まない理由の1つなのだ。

 だが、明るいニュースもある。それは「OSのサポート」だ。

 米Microsoftは9月26日、Windows XPにBluetoothサポートを追加するためのアップデートソフトをPCメーカー向けにリリースした。また、Microsoftよりも先に、Mac OS XでBluetoothの正式サポートを表明しているAppleは、同社のデジタル音楽プレーヤー「iPod」やPalmのPDA、ならびにSony EricssonのT68iを含む一部Bluetooth携帯電話とMacを同期化するためのソフト「iSync」のテスト版を先日リリースしている。

 このようにOSレベルでのサポートが始まると、一気に普及が進むことは十分に考えられる。今回の取材でも、「ヘッドセットなど携帯電話関連中心だったBluetoothの応用製品に、OSのサポートでPC周辺機器が加わる。来年には一気に市場が立ち上がるのでは」といった声もあるなど、OSのサポートに期待する部品メーカーは多かった。

 先月にソニーが発表したBIP(Basic Imaging Profile)対応のBluetoothデジカメ「サイバーショットDSC-FX77」や、別売りのBluetoothユニットを使ってワイヤレスで印刷できるセイコーエプソンのダイレクトプリント機「「PM-860PT」など、徐々にBluetooth対応製品は増えている。来年のCEATECこそは、参考出品でないBluetooth対応の新製品を、数多く見ることができるのではないだろうか。



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▼ 特集:CEATEC JAPAN 2002

[西坂真人, ITmedia]

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