Mobile:NEWS 2002年10月4日 08:58 PM 更新

光ディスクはここまで小さくできる――「SFFO」開発者に聞く

直径3センチで2Gバイトを記録できる光メディアをPhilipsが開発している。その経緯や開発のポイント、将来性について、開発者のFrank C.Penning博士に話を聞いた

 CEATEC JAPAN 2002でちょっとした話題になっているのが、Philips社のブースで展示されている次世代小型光ディスク「SFFO」(Small Form Factor Optical disc)だ。

 このディスクは波長405ナノメートルの青紫色レーザーと開口数0.85の対物レンズを採用――つまり「Blu-ray Disc」をベースにして開発されている。幅34ミリ、厚さ約7ミリというCFカードサイズのドライブを使用し、直径わずか30ミリのメディアに単層で1Gバイト、2層で2Gバイトのデータを記録することができる。

 今年7月にハワイで開催された光ディスクおよび光メモリの国際会議「ISOM/ODS 2002」(Joint International Symposium on Optical Memory and Optical Data Storage 2002)で発表され、そこでも出席者たちの注目を浴びている。

 このSFFOの開発経緯やそのポイント、将来性について、Philips Researchのシニアサイエンティスト、Frank C.Penning博士(Optics and Mechanics Storage sector)に話を聞いた。

どこまで小さくできるか?

 Penning博士はまずSFFOの開発経緯について、「SFFOは自分たちのテクノロジーを見せる技術デモのようなものだ。Blu-ray Discをベースとした光ディスクテクノロジーを使用し、技術的にどのくらいまで小さくできるのかを見せたかった」と説明する。

 同社は、言うまでもなく世界でも屈指の技術を持つメーカーである。光ディスクの分野でも常に最先端を走っており、CDやDVD、Blu-ray Discなど光ディスクのライセンサーとしても有名だ。その同社が「どこまで小さくできるのか」という点にひたすらこだわって、このSFFOを研究開発したわけである。


SFFOの開発を行ったPhilips Research社のFrank C.Pennning博士

 また、Penning博士は光ディスクのモバイルユースの“市場性”に注目したことも、開発の動機になったと話す。「Blu-ray Discのような大容量メディアの需要は当然ある。だが、小さなディスクのマーケットもあるのではないか。例えば、ポータブルオーディオ機器や、携帯電話、PDA、ノートパソコン、デジタルカメラおよびビデオカメラなどだ」(同氏)。

 ポータブル機器の市場は年々拡大してきており、それに合わせるように小型の記録デバイスも、メモリカードを中心に数多くの製品が発売されている。しかし、デファクトスタンダードと呼べる製品はまだない。確かにこの中にSFFOのような小型光ディスクの市場はありえるだろう。

 特に光ディスクはメディア単価が安く、保存用のライトワンスディスクや何度も使用できるリライタブルディスク、再生専用のディスクなど、さまざまな展開を行うことができる。これまでのメモリ関連製品と異なり、用途に合わせていろいろなファミリー展開をすることが考えられるのだ。CD-R/RWの世界的な普及が、こういった使い方をユーザーの身近なものにしていることも見逃せない。


SFFOの試作ドライブ

2つのキーコンポーネント

 Philips ResearchではCFカードサイズという世界最小サイズの光ディスクを開発するにあたり、2つのキーコンポーネントを開発している。1つは開口数0.85の世界最小の対物レンズ。もう1つは、アクチュエータ(データを読み書きするための駆動装置)である。特に対物レンズでは「プラスチックレンズと2Pテクノロジーを使用したガラスレンズの2種類を開発した」(同氏)。

 この“2Pテクノロジーを使用したガラスレンズ”とは、球面のガラスレンズの上に樹脂を乗せ、紫外線で硬化させることによって作成される非球面のレンズのことだ。実際、SFFOで採用されている対物レンズは、いずれもBlu-ray Discとは比較にならないほど小さい。また、対物レンズとディスク表面までの距離も「わずか75ミクロンしかない」(同氏)という。


SFFO用に開発された世界最小の超小型対物レンズ。Blu-ray Disc用のレンズとは比較にならないほど小さい


SFFO用に開発された小型のアクチュエータ


SFFO用のピックアップ。もちろん、同社の開発した超小型対物レンズとアクチュエータが採用されている

SFFOの設計のポイントと今後の展開

 「光ディスクもここまで来たか」とさえ感じさせるこのSFFOが狙う市場は、(Penning博士も述べているように)もちろん、モバイル機器である。博士によれば、それを前提にした設計のポイントが3つあるという。「1つはどれだけ小さくできるかということ、もう1つが省電力性、最後が対衝撃性だ」。

 サイズについては、「現在の試作機では厚みが約7ミリあるが、5ミリにすることはもちろん可能だ」という。例えば、今のメディアは1.1ミリのサブストレート(基板)を使用したBlu-ray Disc用のメディアから切り出したものを使用しているため、厚みが1.2ミリある。しかし、「SFFOはBlu-ray Discの技術を応用しているが、これと同じにする必要はどこにもない。もちろん、これをもっと薄くすることもできる」(同氏)。

 メディア自体、最終的にどういった形状のものにするのか決まっているわけではなく、さまざまなものが試作されている。例えば、CFカード形状のドライブと硬貨サイズのリムーバブルメディアなどもある。


CFカードサイズのドライブのモックアップとメディア

 省電力については、「ICの開発はこれからだが、1−10Mbpsのデータ転送スピードで50ミリワット以下」になるのだそうだ。実際には消費電力はスピードとのトレードオフの関係になるので、「より低消費電力することも可能だろうし、消費電力を増やしてもよいなら、高速なデータ転送スピードを実現することができる。最終的には、どういったアプリケーションで使用するかという点によって決まるだろう」(同氏)。

 対衝撃性については、同氏によれば「まだ、テストは行っていない」段階。しかし、実際の製品化となれば、当然それなりのものに仕上がるに違いない。

 同氏によれば、SFFOはまだPhilips社内で研究開発している段階であり、商品化のめどなどは現時点で立っているわけではないという。今回のCEATECの展示もあくまで“参考出展”だ。

 しかし、モバイルユースの次世代小型光ディスクストレージとして見た場合、このSFFOは用途も広く、サイズ・容量ともに魅力たっぷりだ。数年後にはモバイルでも光ディスクがごく当たり前に使用されている――この小さなメディアは、そんな大きな可能性さえ、十分感じさせてくれる。



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関連リンク
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[北川達也, ITmedia]

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