Mobile:NEWS 2002年10月25日 04:12 PM 更新

Intelモバイル部門トップが示した2つのビジョン

IDF基調講演でモバイル部門トップのChandrasekher氏が提示したビジョンを、もう少し詳しく見ていこう

 「Intel Developer Forum Fall 2002 Japan」の基調講演で、Mobile Platforms Group担当副社長兼ディレクターのAnand Chandrasekher氏が提示したIntelのビジョンは、大きく分けると2つあった。

 1つはあらゆるデバイスが、いつでもどこでも、シームレスに相互接続する環境を作ることにより、ネットワーク化されたオフィス、ネットワーク化された自宅、そして外出先からのネットワークアクセス環境が、それぞれデジタルサービスでつながるというビジョン。

 特にデジタルホームの分野は、ブロードバンドネットワークアクセス環境の整備が進んだことに加え、Universal Plug&Play(UPnP)ベースのアプリケーションに普及の兆しが見えること、高速の802.11a無線LANネットワークがコンシューマーエリアに降りつつあることなど、さまざまな要件が揃いつつある。

 基調講演では9月に米国サンノゼで行われたIDFの基調講演で同社副社長のLouis Burns氏がプレゼンテーションしたストーリーと同じく、VAIO Mediaでホームネットワークを通じたビデオ、オーディオ、写真の活用を提案するソニーや、Windows XP Media Center Editionでリビングルームへの中核へ切り込もうとするMicrosoftからのエンドースメントを紹介していた(基調講演の概要紹介)。

 UPnPをベースにした家庭内ネットワークに関しては、これまでもZDNetの中で何度も紹介してきた(9月17日の記事参照)。Chandrasekher氏が言うように、UPnPをはじめとする標準化が進められ、それに対応する製品が登場しつつあるこの分野は、今年末のVAIOシリーズから始まり、来年第1四半期以降にはもっと大きな流れへと変わっていくことが、間違いないだろう。

 もっとも、Chandrasekher氏の専門はやはりBaniasだ。

 来年の第1四半期に登場する見込みのBaniasは、低消費電力のプロセッサとして知られているが、マーケティング的にはワイヤレスアクセス機能を持つ、モバイルPC向けに最適化された製品プラットフォームとして、市場への浸透を図ろうとしている。その理由は、停滞するPC市場の中で数少ない成長市場であるモバイルPCが、新コンセプトプロセッサのBaniasを投入する上で最適と考えているからだろう。

 Chandrasekher氏は、モバイルPCの平均成長率が年15%になるという予測や、ワイヤレスLAN内蔵ノートPCの出荷比率が飛躍的に伸びていることなどを挙げ、ワイヤレス機能を持ったモビリティの高いPCの有望さをアピール。例えばIntel自身、社員向けPCをワイヤレス機能を持つノートPCへと切り替えた結果、週に4−5時間も業務をこなすための時間が削減できたという。言い換えると、デスクトップPCからワイヤレスモバイルPCへの切り替えにより、4−5時間分の仕事を余分にこなすことができる。

 Chandrasekher氏は「我々の計算では1日5分の効率アップで、ワイヤレスモバイルPCの初期費用を吸収できる。しかし実際にはそれを大きく上回る効果がある」と話し、企業のクライアントPCが世界的にワイヤレスモバイルPCへとシフトすると予想した。

 ワイヤレスで利用するPCが、仕事で本当に便利なツールになるためには、いくつかの条件がある。まず十分に高いパフォーマンスがあること。次に“電源もワイヤレス”であること(=バッテリー駆動時間)。付加価値の高いワイヤレスアクセス機能を備えること。セキュアな無線アクセスが可能であること――などだ。

 Baniasは省電力なプロセッサだが、熱設計電力が小さくなるわけではないため、Baniasになったからといって、フォームファクタは大きく変化しない。しかし、同じ消費電力ならばパフォーマンスは高くなる。また、Baniasプラットフォームで提供されるデュアルバンド無線LANチップのCalexicoは、無線LANアクセスの有無を自動的に判断するためワイヤレスの電源をオンにしたままで利用しても、バッテリー持続時間へのインパクトがほとんどないという(米IDFでのCalexico関連記事参照)。

 これらBaniasとBaniasプラットフォームの優れた点を、有望市場のワイヤレスモバイルPCというカテゴリに投入することで、Baniasの立ち上げの取っ掛かりにしたいというわけだ。Chandrasekher氏は別に行ったインタビューの中で「日本市場の事情が異なるのは分かっている。ビジネス向けのワイヤレスモバイルPCとして売り込むというのは、あくまでも営業的な戦略であって、個人でより良いビジネスツールを得たいと考えるユーザーにもBaniasプラットフォームはアピールできる」と話しており、企業向け市場だけを見ているわけではないと強調していた。

 また、今年2月に行われたサンフランシスコのIDFでアナウンスしていた、バッテリー持続時間延長のためのイニシアティブに関して、先週、台湾において具体的な作業部会を結成したことを明らかにした(2月28日の記事参照)。

 「Extended Batterylife Working Group」と名付けられた作業部会には、IntelのほかDell、NEC、松下電器産業、Legend(聯想)、LG電子、富士通、Samsung、東芝、Microsoftが参加し、一日中バッテリーだけで使えるPCの実現を目指す。低消費電力デバイスの開発やOSと連携した省電力化、そして次世代バッテリー技術の開発などを共同で行ない、進化ペースを加速させるのが狙いだ。

(なお、Chandrasekher氏へのインタビューを本日、別途掲載する予定)



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▼ Baniasの理想実現に向け、Intelが支援プログラム発足
▼ Intel Developer Forum Fall 2002レポート(USA)

関連リンク
▼ Intel Developer Forum Fall 2002 Japan特集

[本田雅一, ITmedia]

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