Mobile:NEWS 2002年11月1日 08:40 PM 更新

モバイルスタンダード対応の“温度差”

Javaやマルチメディアメール、Webなどが世界的に普及するにあたり、端末メーカーなどからはサービスの標準化が求められている。しかし、推進役の一翼を担う通信キャリアの本音は、“自社のサービスプラットフォームをデファクトスタンダードに”することなのかもしれない

 携帯サービス標準化への動きが、OMA(Open Mobile Alliance、用語)を中心として進んでいる。しかし、端末メーカーと通信キャリアでは、標準化に対する取り組みに少々温度差もあるようだ。

 11月1日、総務省とフィンランド運輸通信、フィンランド大使館が「フィンランド・日本ITシンポジウム」を開催。互いを「将来のモバイル・ビジネスパートナー」とうたい、NokiaやNTTドコモなどのキープレイヤーも交えて講演が行われた。

“自社専用”の壁を取っ払う、OMA

 「Open Mobile Architectureに向けて」と題した講演を行ったのは、Nokiaのモバイルソフトウェア担当副社長のTimo Poikolainen氏。現在、Javaやマルチメディア系のメール、Webの記述言語などは、通信キャリアごとに異なった仕様になっているが、これを統一するのがOMAの役割だとする。

 「テレコムプラットフォームのように、サービスプラットフォームを作って、“社内専用”の壁を取っ払う」とPoikolainen氏。

 ここで言う“テレコムプラットフォーム”とはGSM方式のことを指す。GSM圏では通信方式が定められており、ユーザーは好きな端末と好きな通信キャリアを組み合わせてサービスを受けられる。モバイルインターネットのサービスについても標準化を行い、Javaアプリケーションなどのサービスを、どの端末や通信キャリアでも同じように利用できるようにするのが狙いだ。


GSMの世界では音声通話の標準化が済んでおり、ユーザーは好きな通信キャリアと端末を組み合わせられる。しかし、Javaや画像添付メールなどのモバイルインターネットサービスでは特定の通信キャリアと特定の端末が結びついてしまっている(ちょうど現在の日本の状況と同じだ)。ここにも相互に互換性を持たせようというのがOMAの狙いだ

 OMAでは、さまざまなサービスの標準化を進めているが、特に3つのサービスに焦点を当てているとPoikolainen氏は言う。「MMS」「Java」「XHTML」だ。簡単にいえば、メールとアプリケーションとWebを標準化しようということになる。この3つは、OMAの前身である「Open Mobile Architecture Initiative」の創設直後に、Nokiaとドコモが標準化を探ることで合意した分野でもある(2001年11月の記事参照)。

通信キャリアの本音は“デファクトスタンダード競争”?

 OMAが狙う通り、モバイルサービスの標準化がもたらすメリットは大きい。端末メーカーだけでなく、通信キャリアも表向きは標準化に熱心だが、各社の思惑は交錯している。

 現実のサービス展開を考えると、標準化を待っていられない……という考えを示唆したのはドコモの国際ビジネス部長である田島淳氏。OMAが200社以上も参加する大所帯なのを指してか、「参加者が少ない方が早くまとまるのは間違いない」と話す。

 過去の経緯を振りかえれば、ドコモはWAP規格がまとまる前にiモードを、MIDPが定まる前にDoJaをそれぞれスタートさせて、それぞれ国内で大成功させている。結果としては標準規格を待たずにサービス開始を急いだことが吉と出た。

 海外でも、標準化に先駆けて既に独自プラットフォームによる競争が始まっている。世界各国でドコモは独自規格によるiモードサービスを開始しており、Vodafoneの「Vodafone Live!」と真っ向からぶつかる格好だ(10月25日の記事参照)。田島氏はVodafone Live!を評して「いい競争でいい環境を作る。うれしいニュース」というが、この発言にはプラットフォームのデファクトスタンダード競争という意識は見られても、協力して標準化を進めようという意図は感じられない。


各国で始まりつつあるiモードサービスでは、(一応)業界標準のWAP(2.0)ではなく、iモードの記述言語「cHTML」が利用される

 さらには、「M&Aという手法を使って世界中を覆い、デファクトスタンダードを固めようとしている会社もある」と話すなど、穏やかな口調ながら、ライバル企業に向けて痛烈な皮肉も放って見せた。

 GSMでは成功した標準化だが、モバイルインターネットサービスではどうか。旗振り役のNokiaとは異なり、各通信キャリアの本音は少々複雑なようだ。



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[斎藤健二, ITmedia]

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