Mobile:NEWS 2002年11月5日 00:03 AM 更新

勝者なき決着? 「固定→携帯」の答申内容

電気通信事業紛争処理委員会は、平成電電が携帯キャリアとの相互接続を求め裁定申請していた件で、総務省に答申を行った。内容には、平成電電、NTTドコモいずれも不満のようす

 電気通信事業紛争処理委員会は11月5日、平成電電が各携帯キャリアとのインフラ相互接続を求めて裁定を申請していた件に関して(記事参照)、総務省に答申を行った。その内容には、平成電電、NTTドコモ・グループいずれの陣営も不満の意を表明している。

 答申では、平成電電直収の設備からNTTドコモの設備に着信する通話で、平成電電側の料金設定権を伴う相互接続を認めるべきとした。一方で、焦点となる、NTT東西地域会社の設備から発信――平成電電が中継接続――携帯キャリアの設備に着信する、という形態の接続請求は、「裁定申請用件を満たしていない」ということで裁定を行うべきでない、としている。

料金設定権は平成電電側に

 答申書で目を引くのは、やはり「料金設定権」に関する記述だろう。電気通信業界では、ある通信事業者が関連する複数事業者のコストを合算して、利用者料金(一般に『エンド・ツー・エンド料金』と呼ばれる)を設定する場合がある。固定電話発信、携帯電話着信の通話サービスでは、利用者料金設定権は携帯キャリア側にあるのが慣例だった。

 しかし今回の答申では、平成電電側が利用者料金を設定するとともに、自社で提供する電気通信役務の相当分の金額をNTTドコモに支払うならば、NTTドコモはその接続請求に応諾しなければならないと結論づけた。いわば、平成電電側に料金設定権を認めたことになる。

 これには、NTTドコモ側が猛反発。同日、ただちに社としてのコメントを発表し、「極めて遺憾」「到底容認できない」といった強い語調で、反対の姿勢を打ち出している。

 NTTドコモが指摘するのは、法解釈の問題。同社は、前出の電気通信事業法では「法体系の中で“料金設定権の所在は事業者間協議により決定すべき”と明確に定められているはず」として、答申がこれに反すると主張した。同社はまた、相互接続にあたってコスト負担の大きい事業者が料金設定権を持つべきという、従来からの見解を繰り返している。

平成電電側には「実質ゼロ回答」

 一方の平成電電側も、答申内容には失意をあらわにする。担当者は「これでは、実質ゼロ回答だ」と厳しい表情。

 答申の中で、同社が“料金設定権を伴う相互接続”を認められたのは「平成電電直収の設備から、NTTドコモの設備に着信する通話」の場合。こうした接続形態のサービスとしては、たとえば企業向け専用線提供などが想定されるが、同社は現時点でこの種のサービスを提供していない。

 そもそも同社が裁定を申請したのは、同社のマイライン登録会員、約23万人を対象に3分60円の通話サービス(記事参照)を提供しようと試み、その実現が困難だったことがきっかけ。この場合の接続形態は、NTT東西地域会社の設備から発信し、平成電電が中継接続して、携帯キャリアの設備に着信することになる。

 ところが、答申はこの接続形態での相互接続裁定に関して、「裁定申請要件を具備していると認められず、裁定を行うべきでない」と結論づけた。つまり、接続協定の細目を協議するに至っていないため、当事者間で今一度話し合いを尽くすことが必要、との判断だ。平成電電が、「なんの進展もない」と嘆くのももっともだろう。

透明性ある料金設定の整備を

 答申では、本件の背景として、接続通話にかかわる適正な料金設定の仕組みが未整備であると指摘している。

 それによると、現状ではエンド・ツー・エンド料金を設定するにあたり、各事業者の負担額の配分状況が“ブラックボックス化”しやすい。たとえば、NTTドコモがほかの事業者と接続する際の接続料にしても、NTT東西地域会社と接続した場合の“5円/3分”から、ほかの携帯キャリアと接続する際の“約40円/3分”まで開きがあり、その合理性について納得のいく説明がなされていないという。

 今回、紛争処理委員会は答申に付加するかたちで、総務大臣に対して「今後合理的かつ透明性の高い料金設定の仕組みを検討すべき」との勧告を併せて行った。「この点は、総務省で研究会が発足するなどして、なんらかのかたちで協議されることになるだろう」(総務省)。

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関連リンク
▼ 電気通信事業紛争処理委員会の答申

[杉浦正武, ITmedia]

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