Mobile:NEWS 2002年11月7日 03:10 AM 更新

PDAはIP電話端末になるか?

IP電話端末としてPDAをみた場合、最大のネックはそのカタチだろう。汎用OSの上で動くアプリケーションとの連携機能は魅力的だが、「横幅のあるPDAを耳にあてる」形には難があり、またイヤホンを使用しても理想的とはいえない。そこで……?

 「050」着信電話番号を機にIP電話をめぐる動きが活発化するなかで、地味ながら着実に地歩を固めつつあるのがPDAを端末とする電話サービスだ。10月末から11月始めにかけ、NTT-MEがホットスポットを使った実証実験を開始したほか、ソフトフロント、スカイウェイブといったソフトベンダーが相次いでPDA向けSIPソフトウェアをリリース。しかし、電話としてみた場合、PDAには問題が多いのも事実だ。

 PDAをIP電話に利用する場合、各種のソフトウェアと連携できる点が最大のメリットとなる。電話をかけるときは、アドレス帳をスタイラスでタップするだけでOK。音声だけでは伝えきれない情報はテキストチャットなどの手段で送受信することが可能だ。また、Webサーバに共有電話帳を作成すれば、電話番号を知らない相手にも直接電話をかけることができる。携帯電話より大きな画面と汎用OSの上で動くアプリケーションにより、さまざまな応用が可能になるだろう。


スカイウェイブのソフトウェアを搭載したPDA。10月の「CEATEC JAPAN 2002」で撮影

ベンダースカイウェイブソフトフロント
製品名SkyPhone(for PDA)KISARAソフトフォン for PDA
呼制御SIPSIP
音声コーデックG.711G.711(GSM、オプション)
「050」対応
対応OSWindows CEWindows CE
出荷時期出荷中11月中

 しかし一方で、PDAが電話のインタフェースとして適しているか、という根本的な問題は、以前から指摘されてきた。鳴り物入りで登場しながら、ビジネス的には失敗した「VisorPhone」のような例もある。要因はいくつか考えられるが、まず「横幅のあるPDAを耳にあてる」形が支持を得ることができなかったといえるだろう。


VisorPhone。日本人が持つと、さらに大きく見える

 このため、現在ではPDAにイヤホンを付ける形が主流になっている。通話中にも画面を見ることができることもあり、主に業務用途において有望視されている。

 ソフトフロントでは、「KISARAソフトフォン for PDA」のターゲットを「ホットスポットと業務用途の2つ」としたうえで、メインはやはり企業だと話す。「PDAによるIP電話は、アプリケーションとコミュニケーションの連携が最大のメリット。営業や在庫管理など、構内通話の手段として既に導入に向けた交渉が進んでいる」。

 同様に、スカイウェイブもまず企業ユースを狙う。「営業・小売・製造、そして医療などの現場レベルから需要が大きく拡大していくものと見込んでいる」(同社)。

 しかし、コンシューマー市場を視野に入れた途端、状況は違ってくる。工場や倉庫の中であれば問題はないだろうが、道ばたでイヤホン通話をしていると、傍からは“独り言”のようにしか見えない。やはり、電話は電話の形で……というのが一般的な考え方だろう。NTT-MEがNECカスタマックスと組んで提供する「WAKWAKコール・ゴー・ゴー」の「USBフォン」、あるいはアイピートークと三菱電機が発表したIP電話「モバイルIP Talk」のように、キャリアが率先して電話機型の端末を開発する理由もここにある。

 また、PCほど煩雑ではないにせよ、OSやアプリケーションの操作が普及の障壁となる可能性も指摘されている。コンシューマー用途を考えた場合、PDAと電話の相性は決して良いとはいえない。

携帯とPDAの中間?

 実際のところ、PDAを使うメリットと限界を一番理解しているのは、当のPDA関連ベンダーたちだ。ソフトフロント、スカイウェイブともに「050」着信番号の利用を想定しているが、それが可能になったからといって一気にコンシューマーに市場が広がるとは考えていない。

 「コンシューマー需要はホットスポットの拡大がキーになるが、同時にユーザインタフェースも検討もを進めなければならない。これは、ハード&ソフトメーカー共通の課題だ」(ソフトフロントの藤沢竜志取締役)。


ソフトフロント営業担当取締役の藤沢竜志氏

 最近では、富士通の「Pocket LOOX」のように、マイクとスピーカーを電話に近い形に配置したり、日立製作所の「NPD-10JWL」のような無線LAN内蔵型も出ている。いずれもIP電話を想定したものだ。

 これらは基本的なPDAのフォームファクタから離れてはいない。しかし藤沢氏によると、この点の再検討も進んでいる模様だ。「PDAメーカーとの話し合いの中で、携帯電話とPDAの“間”に、普及する形があるという点で意見が一致した。次世代機、あるいは次々世代機として開発が進んでいる」という。

 アプリケーション連携などPDAのメリットを活かしつつ、携帯電話に近い使用感を実現する。そんなIP電話対応PDAが、近い将来登場するのかもしれない。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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