Mobile:NEWS 2002年11月12日 07:28 PM 更新

モバイル機器のバッテリー寿命を4倍に

National SemiconductorとARM Holdingが、モバイル機器の電力効率を理論値で400%にすることが可能な新技術の共同開発を発表した

 National SemiconductorとARM Holdingは米国時間の11月11日、モバイル機器の電力効率を大幅に向上する新技術の共同開発を発表。12日に、日本法人が都内で新技術の説明を行った。

 近年、モバイル機器の小型・軽量化が加速し、一方で長時間駆動も求められている。この相反するニーズを満たすために、部品メーカーは省電力プロセッサや長寿命バッテリーの開発に力を注いでいる。だが、ナショナルセミコンダクタージャパン社長のJuergen Heldt氏は、現在のモバイル機器の進化に、これら省電力技術が追いついていないと語る。

 「セットメーカーはより多くのフューチャーをモバイル機器に搭載し、さらに通信のデータ転送レートを上げるなど、バッテリーの負荷を高めている。しかし、バッテリー技術の進歩はこれらの要求に追いついていない。大きく重いうえにバッテリー寿命が短いという(NTTドコモの)FOMAがいい例。期待の燃料電池も、まだ実用段階ではない。消費電力節減のためには、システムレベルのアプローチが必要になっている」(Heldt氏)。


ナショナルセミコンダクタージャパン社長のJuergen Heldt氏

 両社は今回の戦略的提携で、ARMコアを搭載したシステムオンチップ(SoC)デバイス上で、パフォーマンスと電力消費をダイナミックに調整することでモバイル機器の電力効率を最大限に高める技術を開発していく。「この新技術はバッテリーで電力を供給するすべてのデバイスに効果を発揮する。電力効率の向上は25%アップぐらいから段階的に実施し、最終的には理論値で400%の効率化が可能。音声通話主体の携帯電話などでは(バッテリーを小さくできるため)小型・軽量・薄型化が加速される」(Heldt氏)。

 組み込みシステム内部でパフォーマンスと電力消費をインテリジェントに管理し、システムレベルのアプローチによってバッテリー駆動時間を大幅に高めようという今回の新技術は、従来のようにプロセッサ、バッテリー、電源管理など、個々の部品レベルでの省電力化ではなく、トータルシステムで電力効率を高めていかなければならない。

 モバイル機器向け組込みCPUのトップメーカーであるARMと、アナログ半導体やパワーマネジメント分野で最先端の技術を有するNational Semiconductorとが手を組み、両社の技術を持ち寄ることで、統合的な低消費電力ソリューションが可能になったというわけだ。

 「ARMは携帯電話市場で70パーセント強のシェアを持つなど組込みCPU分野のリーダー的存在で、低消費電力のRISCコア技術を持っている。またNational Semiconductorは、アナログ半導体とパワーマネジメントの分野で業界をリードしている。両社の強みを生かして新たなソリューションを生み出すのが、今回の提携の狙い」(Heldt氏)。

 具体的には、ARM側が低消費電力のRISC CPU技術やインテリジェントOSベースの電源管理技術「Intelligent Energy Manager」を提供し、National Semiconductorが有するパワーコントローラ/高速インタフェース/アナログICなど主要コンポーネントを包括的に省電力化する「PowerWise技術」と融合させ、新たな統合型エネルギーマネジメントシステムを作り出す。


両社の省電力技術を組み合わせた統合型エネルギーマネジメントシステム

 Heldt氏は、PowerWise技術の1つである省電力電源管理技術「Adaptive Power Management(APM)」を紹介した。「従来のon/offのみの電源管理システムでは、要求されているプロセススピードが遅いにもかかわらず、100%のパフォーマンスが出せる高出力な電力が供給されていた。APMでは要求されるプロセススピードに合わせて、リニアに供給電力を変化させることができる。これにより、トータルで消費電力の大幅な低減が図れる」(Heldt氏)。


PowerWise技術の1つである省電力電源管理技術「Adaptive Power Management(APM)」

 このAPMのファンクションの1つとなる「PowerWise Adaptive Voltage Scaling(AVS)」が、両社の共同開発製品第1弾となる。プロセッサが休止状態の時には電力供給を削減するこのシステムによって、デジタルベースバンドの電力効率が25−75%アップするという。

 両社はパートナー企業やサードパーティ開発メーカーと協力して、プログラミングモデルやPowerWiseインタフェースの標準化にあたるほか、OSの互換性確保や設計ツールなどを提供していく。実際の製品は、2003年の第2四半期にサンプル出荷を開始する予定。「量産が開始され、モバイル機器に搭載されてくるのは2004年の初めごろになるだろう。量産時は、既存製品と価格差はわずかになる」(Heldt氏)。

 11月12日からドイツ・ミュンヘンで開催している「Electronica 2002」のNational Semiconductorブースで、AVS実証用のコンセプトモデルとLinux向けIntelligent Energy Managerのデモが行われる予定。「来春のCeBITでは、他のAVSテストチップや開発中のPowerWise製品も紹介できるだろう」(Heldt氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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