Mobile:NEWS 2002年11月25日 06:50 PM 更新

「QVGA液晶」の衝撃〜J-フォン「J-T08」

東芝製の「J-T08」はPDAに迫る解像度のQVGA液晶を搭載。地図もくっきり、PCの画面のように大量の情報を表示できる。情報機器としての携帯電話の進化を感じさせるその画面を見てほしい

 「いつか来るとは思っていたが……」。J-フォンがもうじき投入する新機種に搭載されたQVGA液晶に対して、こう語る関係者は多い。

 サイズの拡大や色数の増加を重ねてきた携帯の液晶ディスプレイだが、最近の進化の方向は“高精細化”に向かっている。120×160ピクセル程度から、最近の主流は144×176。今年の春、NECが「N504i」で162×216ピクセルの液晶を採用し(5月31日の記事参照)、高精細化に先鞭を付けたが、この冬、ついにQVGA(240×320ピクセル)の解像度を持った端末が登場する。J-フォン向け東芝端末「J-T08」だ(10月29日の記事参照)。*12月9日付記 本文中のQVGAの解像度についての数値が誤っておりました。訂正させていただきます

液晶解像度画素数端末の例
120×1601万9200N503iS
132×1762万3232P504i
144×176(QCIF)2万5344
162×2163万4992N504i
176×2203万8720SH251i
240×320(QVGA)7万6800J-T08
288×352(CIF)10万1376

地図もくっきりと表示、もはや小さくない携帯の画面

 まずはJ-T08の試作機の画面を見ていただこう。


左は銀座近辺の地図を表示したところ。中央は地下鉄駅構内の案内図。右は最小のフォントで文字を表示したところ。実際の液晶サイズは2.2型だが、解像度が高いだけにくっきりと見える

 高精細というと単に「表示文字数が多い」ことばかりが語られるが、地図などの描写がきめ細かくなることの効果は絶大。携帯向けの地図サービスは数多いが、紙の地図代わりに使うのは難しかった。解像度が粗すぎて、細かな道や建物名が表示しきれなかったのだ。

 QVGA液晶ならば、ご覧のとおり紙の地図を置き換えられるだけの解像度を持っている。J-T08を見て、最初に思ったのが「これで紙の地図を持ち歩く必要はなくなる」ということだ。

 またカメラ付き端末にとっては、もしかしたらカメラの画素数以上に液晶が重要なポイントになる。11万画素や31万画素のカメラを搭載していても、従来の液晶では画像を間引いて表示するしかなかった。画素数が7万以上あるQVGA液晶ならば、カメラの性能を引き出しやすい。


J-T08ではVGA撮影のデジタルカメラモードが威力を発揮する。写真中央は「ハンディビデオ」の画面。別途取り上げたいポイントだが、J-T08は使い物になる動画が撮影できる初めての端末だろう。ムービー写メールで使っている「Nancy」やNTTドコモやKDDIが採用した「MPEG-4」ではなく、MotionJPEGを動画コーデックとして使う。簡単に言ってしまえば、JPEG画像を秒間5コマ撮影し、それを秒5コマのペースで再生するのがMotionJPEG。MPEGのように動き予測を行わないため、処理も軽く、1枚1枚の画像も美しい。J-T08では8Mバイトの内蔵メモリに最大3分の動画撮影が可能。しかも、動画の一部を切り取ってJPEGとして保存もできる

 液晶の高精細化は避けられない流れだが、以前から指摘されている課題はコンテンツだ。液晶だけが高精細になっても、対応するコンテンツがないと、かえって逆効果。「壁紙をダウンロードしても、中央に小さく表示されてしまう」ことになるわけだ。N504iの時も、コンテンツプロバイダからは「N504i用にコンテンツを全部作り直さなくてはならない……」と恨み節を聞いた。

 カメラ画像のやりとりもそうだ。液晶解像度が高いだけに、120×160ピクセルなどの「写メールモード」では画面の真ん中に小さく写真が表示されることになってしまう。

 もちろん、キャリア側のほうで音頭を取って、「200x年春の端末は全部QVGA」などとしてくれれば問題は少ないのだが、「液晶の発展を阻害する可能性があるため解像度を揃えるつもりはない」というのが各キャリアの返答。結局、端末側でうまく調整するのが現実的な解となる。

 J-T08では、そのあたりも抜かりはない。小さな画像を、画面いっぱいに拡大表示する機能を備えており、受信した写メールも大きなサイズで閲覧できる。またWebページでも、インライン変換はできないが、いったん画面をダウンロードすれば拡大が可能だ。


Webサイトの画像も、このように拡大して表示できる。拡大した状態で保存し、壁紙に設定することもできるという

 高精細化にあたっては、このような配慮が必要だろう(10月29日の記事参照)。N504iやSH251iSはかなり高精細な液晶を搭載しているが、拡大表示機能を搭載していないため(SH251iSは一部可)対応していないコンテンツではかなり苦しい表示になる。J-T08の取り組みは大いに評価できる点だ。

 「来年はQVGA……」とは多くの端末メーカーが語るところ。液晶メーカーは2002年春の段階でQVGA液晶の試作を既に展示しており(4月16日の記事参照)、来年の端末では搭載機が増えてくることが予想される。先駆けとなるJ-T08にどのような評価が下されるかに注目が集まる。


白色LEDを8つも使った、「フラッシュ」が搭載されているのもJ-T08の特徴。野球場のナイター照明のようだった


ボディカラーは3色がラインアップ。最近の端末としてはかなりの厚みを感じたが、QVGA液晶は魅力的だ。明るさや発色も申し分ないレベルだった



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[斎藤健二, ITmedia]

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