Mobile:NEWS 2002年11月29日 01:45 PM 更新

Mobile&Movie 第40回
電話で抱きしめて「たまには回線を切って、休憩したら?」

映画の中の名脇役として登場する“モバイル製品”を紹介する「Mobile&Movie」。今回は、電話に振り回され「もうイヤ!」とキレてしまう女性が主人公の映画「電話で抱きしめて」。たまには携帯電話をオフにする1日もいいかもしれない──と思わせる作品

作品名電話で抱きしめて(Hanging up)
監督ダイアン・キートン
制作年・製作国1999年アメリカ作品


 三人姉妹の次女イヴは、イベント企画会社に勤めるワーキングマザー。夫ジョーと息子ジェシーとロスに住んでいます。姉のジョージアは、女性誌の編集長、妹のマディはメロドラマの女優、姉妹は離れて暮らしていますが、互いの近況は電話でいつも報告し合っているので、知らないことはありません。

 ある日、姉妹のパパが入院することになり、イヴはそれを知らせますが、ジョージアには「雑誌の5周年記念号作成で時間が取れない」、マディには「休暇中で見舞いに行けない」と言われてしまいます。仕事を持つ身で時間がないのは一緒のはず。それでもイブは愛するパパのため、できるだけのことをしようと思うのです。

 ジョージアとマディがパパに会いに来ない本当の理由は、パパが離婚して以来アルコールに溺れ、口を開けば皮肉ばかりになってしまったせいでした。そんなパパの憎まれ口をあしらいながら、イヴは看病を続けていました。入院したあとも、パパは自分のパンツも間違えるほどなのに、イヴの電話番号だけは忘れずにいて、イヴの携帯に、ひっきりなしに電話をかけてくるのです。秘書からは仕事の確認の電話、マディからは犬の世話を頼まれ……。

 いくら面倒見のよいイヴでもガマンの限界、イライラのピークで車に乗り込み、携帯電話で話している最中に医師オマーのベンツに車をぶつけてしまいます。

 さしせまった仕事、パパの入院、さらに交通事故まで起こしてしまい、パニック状態のイヴ。ジョージアからは、入院費を払うために「パパに小切手帳へサインさせておいて」と指示されます。イヴは言われたとおり、神妙に頼みますが

「小切手にサインなどしない!」

とパパは頑なに拒みます。どうにも収拾のつかない事態に、イヴはとうとう泣き出してしまいます。そんなイヴを慰めてくれたのは、ちょうど修理代の件で病院に来ていたオマーの母親でした。イヴの話を静かに聞き、そっとその肩を抱きしめます。イヴが求めていたのは、電話のベルじゃなく、このぬくもり。

「オマー、……留守電だわ」

 おもむろに携帯電話を取り出し、電話をかけたオマーの母親。

「母さんよ。イヴは今大変だから修理代はもらわないわ。手術で稼いで新車を買いなさい」

「あの事故は私の過失なのに」

 イヴは、伝言の内容に驚きます。

「過失なんていいの。あなたは温かい人よ」

「私はどうすればいいの?」

 1人で問題を抱え込むイヴは、穏やかなこの母親に救いを求めます。

「たまには回線を切って、休憩したら?」

 電話に追い立てられて続けたイヴは、さっそく携帯電話の電源を切り、家の電話回線もすべて抜いて、やっと久しぶりの静寂を味わったのでした。そして、パパのこと、家族のこと、本当に愛しているものを見つめ直す時間ができたのです。

 電話線だけでつながっていた家族の絆よりも、触れ合って感じる腕の暖かさがイヴには大切でした。電話ごしのどんな優しい言葉より、一瞬のハグで癒されることがあるのです。

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[本田亜友子, ITmedia]

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