Mobile:NEWS 2002年12月4日 11:21 PM 更新

ケータイサイト、「とりあえず参加の時代は終わった」

メディアとしての携帯電話の役割が見えなかったケータイWebの黎明期、各社は競ってケータイサイトを「とりあえず」立ち上げた。だが今、問われるのは「どんな目的でどのように使うか」だ

 携帯電話向けWebサービスの黎明期、その目的や効果はさておき、「とりあえず参入」したコンテンツプロバイダも多い。当時は通信キャリアもコンテンツの充実を図るため、PCのWebサイトのように企業のイメージアップにつながる情報提供が可能であることをアピールしていた。

 しかし現在、携帯電話のコンテンツ配信はさまざまな役割を担うようになってきた。コンテンツ販売、広告、販促、企業アピールなど目的は多岐に渡ると共に“限界”も見え始めてきた。

 こうした状況の変化を受けて、「コンテンツ配信は、目的や内容を見つめ直す時期に来ている」と話すのは、日本広告主協会のWeb研究会でモバイル委員会委員長を務める棗田眞次郎氏。同氏は味の素広報部のWeb担当部長として、同社がiモード向け公式コンテンツとして無料配信している「味の素簡単レシピ」にも関わっている。


日本広告主協会のWeb研究会でモバイル委員会委員長を務める棗田眞次郎氏

使い方を誤るとムダな投資に

 情報配信側から見た携帯の活用は大きく「マーケティング」と「コミュニケーション」に分かれると棗田氏。マーケティングの中には「広告」「販促」「有償の情報提供」が含まれ、コミュニケーションには、パブリシティも兼ねた「情報の無償提供」が入る。

 味の素がiモードの公式サイトで配信するレシピは「コミュニケーション」にあたる部分だ。同社の製品を使ったレシピを掲載することで、製品の利用を促すほか、ブランドイメージを確立する役割を担っている。

 同様のサイトはほかにもいくつかある。iモードサイトの「暮らしの情報」内にある「レシピ」カテゴリーのアクセストップはネスレジャパングループが運営する「ネスレ早技クッキング」だ。

 ところが、アクセス数が多くても、求める効果を得られているとは限らない。

 棗田氏がネスレの担当者に人気の理由を聞くと、「継続してプレゼントキャンペーンを行っていることも大きい」という回答を得たそうだ。こうしたキャンペーンは、アクセスを増やすための策としては有効だが、本当にレシピを見に来てくれているのか、製品に魅力を感じてサイトに来てくれているのかは未知数だと担当者も考えている。

 無料で情報を配信しているとはいえ、自社製品のプロモーションにつながっているのかどうかが分からないのでは、「本来の(レシピという)使い方以外のキャンペーン競争」に陥ってしまうおそれがあると棗田氏は危惧する。「(ケータイコンテンツを)展開していることが本来の目的につながるのかどうかを見直す時期にきている」(棗田氏)。

 同じことは広告や販促といった、マーケティングツールとしての携帯電話の利用でもいえることだ。

 広告の成功例でよく紹介されるキリンビバレッジの缶コーヒー「FIRE」キャンペーンも、ケータイからの応募が可能になったことで、応募数が増えたことは有名だ。しかし担当者レベルでは、「製品がユーザーに定着したかどうかまでは計れない」とも感じているようだ。

 思ったほどの効果が現れなかったため、「モバイルによるプロモーションは有効ではない」と判断した自動車会社もある一方で、モバイルユーザーに対して確実なアプローチを図ろうという化粧品メーカーもあると棗田氏。試行錯誤の結果から学び、自社サービスの中で「ケータイがどんな役割を果たせるのか」を見極めた展開が大事だと話す。

製品サンプリングや囲い込みには効果が

 棗田氏が携帯電話による効果が見込めると考えるのは、製品開発に向けたサンプリング用途や、顧客の囲い込み。特に後者は顧客データベースになるため、客層や購買行動の分析に役立つ上、エリアマーケティングに活かせるなどの利点があるという。

 また、携帯電話がメディアとして成り立つ上で「テレビ業界でいう視聴率や、出版業界の出版部数のような」指標作りが必要だと指摘。業界標準の指標のようなものがあれば、携帯電話によって何らかのメディア効果があったときに、「信頼性のあるデータとして残せる」。

 メディアとしての可能性が見えてきた今、信頼されるメディアとして成立させるための土台作りや、汎用性のあるビジネスモデル構築が重要だというのが棗田氏の考えだ。



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▼ 「第1回モバイル広告大賞」を「ネットでFIRE」など受賞

関連リンク
▼ 日本経営協会
▼ Web広告研究会

[後藤祥子, ITmedia]

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