Mobile:NEWS 2002年12月20日 01:07 AM 更新

携帯に向けて低消費電力化を図る“Manitoba”

アナログ、ロジック、フラッシュを統合した携帯電話向けチップが、来年Intelから登場する。コードネーム“Manitoba”、ことWireless Internet on a Chipは、Pentium4などとは異なるデザインルールを用い、低消費電力を追求した

 Intelが2003年に投入を予定している携帯向け統合チップ「Manitoba」の詳細がしだいに見えてきた。XScaleコア(2月12日の記事参照)のロジック部、Micro Signal Architecture(MSA、2000年12月の記事参照)を使ったベースバンド部、そしてフラッシュメモリを1つのダイに混載。高性能かつ低消費電力の携帯電話を実現するというものだ。


 12月20日、米Intelの技術・製造本部副社長兼、カリフォルニア技術・製造部門ディレクタのStefan K.Lai博士が来日し、初のWireless Internet on a Chip“Manitoba”についてプレス向けに説明を行った。

コストはダイ面積に依存。90平方ミリ以下なら統合チップが有利

 Lai氏は「ロジック、アナログ、すべてを組み合わせることが経済的になってきた」と話す。携帯電話では、アナログのベースバンドチップ、アプリケーション用のCPU、フラッシュメモリ、SRAMなどを現在個別に搭載しているが、これらを1つのダイに統合し「System On a Chip」とすることでコスト面、消費電力などでメリットが出てくる。

 今回のManitobaは0.13μmプロセスで製造される。プロセスルール微細化によりダイサイズが減少することで、コスト面で「1つの分岐点を超えた」(Lai氏)。統合すれば必ずコストが安くなるわけではなく、減少するコストはダイ面積によるからだ。Intelの試算では、「(合計ダイ面積が)90平方ミリ以下ならば、シングルチップのほうがコストが安い」(Lai氏)計算になっている。


フラッシュメモリ容量の増加やロジック回路の複雑化によってダイサイズが増大すると、シングルチップに統合するよりも、複数のチップを利用したほうが安くなる場合もある。Manitobaが当初想定しているのは95平方ミリ程度のダイ面積。フラッシュメモリが32Mビットの場合、SRAMは最大で1024Kバイト程度の搭載ならば統合のコストメリットが出てくる。今後、90ナノメートルプロセスに移行すれば、概算で2倍のトランジスタが同じダイ面積に積めるようになる

 0.13μmプロセスといっても、Manitobaは低消費電力に最適化されたデザインルールを使った。「Pentium4では電力消費には目を向けず、高い性能に注力している。モバイルでは、スピードよりも消費電力が重要だ」(Lai氏)。パフォーマンスよりもコストを重視し、配線は銅ではなくアルミを使っている。

 統合化によって外部バスを排除できるのも消費電力を抑える上でのメリットとなる。CPUなどから外部メモリにアクセスする場合、1.8Vから1.5VのI/O電圧が必要になるが、メモリを統合することで1V以下のI/O電圧で済む。

 さらにメモリを統合した場合「レイテンシーを下げることができる」(Lai氏)ため、速度の向上も見込まれる。メモリ速度の向上は、CPUのキャッシュヒットレートにも影響するため、MIPS値自体も2倍近くに向上するという。


Intelが行ったXScaleコアのMIPS値(シミュレーション)。外付けメモリを内蔵メモリに変えることでパフォーマンスまで向上する

 なお、最初のManitobaはGSM/GPRSのベースバンドを内蔵する(10月24日の記事参照)。ベースバンドに使うMSAは「統合型チップのみに導入できる契約になっている」(Lai氏)ため、単体のベースバンドチップは予定されていないようだ。IntelではW-CDMA方式のベースバンドを持っていないが、W-CDMA方式を統合した場合でも「技術上の課題はない」(Lai氏)という。

 Manitobaに搭載するXScaleコアは、0.18μmプロセスで製造される「PXA210」「PXA250」(2月12日の記事参照)に比べてプロセスルールが微細化されているため、その分パフォーマンスが向上するという。ただし「統合化によって、XScale部以外の部分でパフォーマンスへの制約があるかもしれない」(Lai氏)。機能面ではPXAチップと同等になるもようだ。




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[斎藤健二, ITmedia]

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