新世代FOMA、待ち受け時間向上の秘密新しい3つのFOMAでは、待ち受け時間が170-180時間と、従来の3倍にまで伸びた。しかし電池容量はほとんど変わっていない。いったいどのようにして待ち受け時間を伸ばしたのだろうか?
NTTドコモの第2世代のFOMAは、従来機種に比べて約3倍の連続待ち受け時間を達成した(2002年12月の記事参照)。FOMAの弱点として常に上げられてきた“バッテリーの持ち”が、やっと改善されたわけだ(2002年8月の記事参照)。
PDC並……とまではいかなくても、KDDIのCDMA2000 1xに近い値まで、新しいFOMAは駆動時間を伸ばしていることが分かる。注目したいのは連続待ち受け時間の伸び。逆に、連続通話時間はそれほど劇的には増えていない しかし単に“バッテリー容量を増やした”から動作時間が伸びたわけではない。例えば新しい「FOMA F2051」のバッテリー容量は3.7V・780mAh。旧型の「P2101V」が690mAh、「N2002」が740mAhであり、たった10%程度の容量アップだ。 では、どんな工夫によって駆動時間を伸ばしたのか。NTTドコモの移動機開発部IMT-2000移動機担当の東明洋担当部長に聞いた。
「簡単に言うと、いかに受信をさぼるか、が重要なファクター」と東氏。連続通話時間は世代が新しくなっても大きな違いは出ないが、待ち受け時間はチューニングによる改善の余地が大きいと言う。 携帯電話は待受時も忙しく動いている。基本的には、「自分への着信を見る」「セルの信号レベルを見る」「周辺セルの信号レベルを見る」の3点が主な仕事だ。こうした信号に専用の周波数が割り当てられていた従来のPDC方式と違い、FOMAの場合「信号もCDMA方式で通信する」(東氏)ため電力を消費する。 よく知られるように、CDMA方式では広い周波数帯域に信号が拡散されて飛んでくる。電波を受け取った端末は、その信号の中から“どれが自分宛の信号なのか”を逆拡散という複雑な演算を行って調べなければならない。数秒ごとに、「逆拡散しないと信号レベルが分からない」(東氏)のだから大変だ。 FOMAのベースバンドチップは、この逆拡散処理をひたすらやっている。東氏は「待ち受け時間は、ほとんどがLSI(ベースバンドチップ)で決まる」と話す。 最初の頃のFOMA端末では、「どれだけさぼれるか分からなかった。余裕を見て受信を行っていた」と東氏。サービスを提供していく中で、どの程度さぼっても大丈夫かが見えてきた。 例えば、新しいFOMAでは移動時と静止時で異なった待ち受け時間が表記されている。移動時はハンドオーバーのために周辺セルの信号チェックをする必要があるが、静止時のように「自分のセルの信号レベルがあまり変化しない場合、周辺セルの信号レベルを探すのを、ある程度さぼることができる」(東氏)からだ。
さらに、ベースバンドチップのLSI自体の改良も進んだ。1つはプロセスルールの進化だ。0.18μから0.13μへ、さらに90ナノへ……という進化はCPUなどではお馴染みだが、携帯向けLSIでも微細化が進む。LSIの消費電力は電圧の2乗×動作クロックで決まるため、微細化が進み低電圧で動作すれば消費電力は下がる。 またチップを機能ごとにブロックに分け、ブロックごとに電源のオン・オフもできるようになっているという。 数々の工夫によって待ち受け時間は伸びたが、「PDCに追いつくには、まだいろいろな“さぼり方”を探さなくてはならない」と東氏。「本当にFOMAをPDCと同じように使ってもらうには、300時間という待ち受け時間が妥当」だと言う(2002年12月の記事参照)。 当初の悪評が拭い切れていないFOMAだが、待ち受け時間も伸び、エリアも拡大した。「使っていただいて、新しいFOMAの良さを知っていただきたい」と東氏は話していた。
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