Mobile:NEWS 2003年2月26日 06:28 PM 更新

2003年、海外で携帯のデータ通信は普及するのか

日本の携帯電話市場が飽和に向かう中、コンテンツプロバイダが狙うのは海外市場。iモードライクサービスがなかなか定着しない欧州、13億という巨大市場の中国──これらの市場の見通しについてハドソンに聞いた

 人口、普及率、ARPUともある程度限界が見え始めている携帯電話の日本市場。そんな中、日本で培ったノウハウを市場の大きい海外で展開したいと考えるコンテンツプロバイダも多い。

 日本でゲームを中心に携帯電話コンテンツを供給するハドソンは、欧州(2001年12月28日の記事参照)や台湾(2002年6月13日の記事参照)のiモードサービス向けにコンテンツを配信。韓国のSK Telecom(2002年7月23日の記事参照)や、欧州のVodafone Live!(2002年10月25日の記事参照)向けにもコンテンツをライセンスするなど、早い時期から海外市場に参入している。2月には中国市場への参入も発表した(1月31日の記事参照)。

 海外進出の陣頭指揮を執るハドソン モバイル事業本部執行役員本部長の香月薫児氏に、2003年の海外携帯市場の見通しを聞いた。

欧州で携帯電話の非音声サービスがブレイクしなかった理由

 欧州初の本格的なデータ通信サービスとして提供されたのがiモードだ。2002年3月にドイツ、その後オランダ、ベルギー、フランスでサービスが開始されたが、iモードライセンシーであるKPN Mobileが2002年8月14日に発表したオランダとドイツにおけるiモード契約数は10万(2002年8月20日の記事参照)。スタートダッシュがうまくいったとは言い難い状況だった。

 しかしここに来て、欧州でも非音声のサービスが一般ユーザーに認知され始めてきていると香月氏はその印象を語る。iモードも対応端末が3機種に増え、「契約数も(欧州の提供国の合計で)40万−50万になったと聞いている」。端末価格も最も安いもので69ユーロ、最新の「N22i」が129ユーロ(フランス)など、買いやすい価格設定に落ち着いてきた。


フランスのiモード対応端末は3機種。東芝製「TS21i」が69ユーロ、NEC製「n21i」が99ユーロ、NEC製「n22i」が129ユーロ。カメラやJavaは搭載されておらず、「日本の端末でいえば501i、502iシリーズレベル」(香月氏)。着メロや待ち受け画像、テキストベースのWebゲームなどのサービスが提供されている


Vodafone Live!対応端末は現在3機種。2月24日の時点では特別価格で安く販売されている。左からNOKIA製「7650」(特別価格99.99ユーロ、価格199.99ユーロ)、Panasonic製「GD87」(特別価格149.99ユーロ、価格229.99ユーロ)、シャープ製「GX-10」(特別価格149.99ユーロ、価格199.99ユーロ)で、すべてカメラ内蔵

 欧州で携帯電話のデータ通信利用が進まなかった理由の1つとして香月氏が挙げるのが、通信キャリアと端末メーカーとの関係。ヨーロッパでは、通信キャリアより端末メーカーの力が強く、「端末メーカーがサービスの規格統一を始めている」。通信キャリアは各端末メーカーが決めた規格に合わせて配信や課金のシステムを整備するという方向だ。

 こうした仕組みの中で通信キャリアは、ハンドセットメーカーごと、端末ごとに異なるさまざまなサービスに対応するインフラを作らなければならない。これまでは「キャリアの縦の線、ハンドセットメーカーの横の線がうまく交わっていなかった。通信キャリアもデータ通信分野に対して当該部署以外は本気ではなかった節がある」。

 英Vodafoneが2002年10月25日に提供を開始、2カ月という短期間で38万人の利用者を獲得した「Vodafone Live!」(用語参照)の影響も大きいと香月氏は分析する。ヨーロッパのメジャーキャリアも、「2番手3番手のキャリアが提供しているデータ通信サービスに脅威を感じ始めたようだ」。

 MMSの可能性に着目しはじめた端末メーカーが、Javaやカメラを搭載した端末をリリースし、NOKIAが「CLUB NOKIA」というサービスを提供するなど、端末メーカーがデータ通信サービスの具体化を進めている。そしてドイツテレコムやフランステレコムなどのメジャーキャリアも動き始めるなど、非音声サービスへの移行への兆しが見え始めていると香月氏。「端末メーカー各社が出してくるMMS端末を、キャリアがどう有効利用できるのか。キャリアがどれだけ(データ通信サービスに)気合いを入れるのか」。それが2003年欧州の携帯電話市場を左右するキーワードになりそうだ。

日本と欧州のシステムをうまく融合させた中国

 欧州以上に注目の市場である、中国は少々状況が違うようだ。

 香月氏によれば、端末メーカーと通信キャリアの関係から見れば、中国はとてもやりやすいという。中国では通信キャリアの力が強く、システムやサービスの構築はキャリアが主導し、それに対応した既存の端末をキャリアが確認して提供するという仕組みだ。「欧州と日本のやりかたのいいところを取った方法だ」。

 現在、中国の携帯電話で多く使われているのはSMSと通話で、着メロもブレイク寸前だと香月氏。端末は、NOKIAとMotorolaの端末がロレックスやブルガリのような「ブランドもの」の位置付けで、高価であるにもかかわらず売れ行きが好調なのだという。「MotorolaのV70向けには、プラチナ地にダイヤモンドが付いたリングのアクセサリーもある」。


中国で売れている端末。左からMotorola製「V70」、Motorola製「T720」、NOKIA製「7650」

 また中国では、Javaのサービスが始まっていなのに、「対応端末であるNOKIA製「7650」(中国で約8万円)、Motorola製「T720」(中国で約4万円)が売れまくっている」。新サービスが始まったらいち早く体験したいという「新しもの好きな気質が日本に似ている」ことからデータ通信サービスは期待できそうだと香月氏は話す。一方で、安価な端末も人気を集めるなど、ニーズは2分化しているようだ。「中国では中途半端な端末は売れない」。

 中国では、約13億の人口のうち1割が「富裕層」といわれており、高価な端末を購入するのもこの層だという。もちろん、その1割だけでも日本の人口に匹敵する人数であり、どれだけ魅力的な市場なのかが伺える。

 ハドソンは中国の現地法人である北京天本科貿有限責任公司と提携し、中国でのコンテンツ有料課金サービスを開始。2月から北京で3カ月の接続実験を行い、その後全土にサービスを展開する予定だ。

 海外進出は「やる気」だと香月氏。「日本は言語も人口も通信方式も少数派で上限が見えている。(儲けようと思ったら)大きいところにコンテンツを提供していくのが筋」。中国と米国の2大市場でコンテンツ配信を軌道に乗せることが当面の目標だという。



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[後藤祥子, ITmedia]

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