RFIDの携帯組み込みはなるか?〜六本木ヒルズ非接触ICカードとRFIDを使い、その場所とユーザー属性に応じた情報を携帯電話に配信する。六本木ヒルズでそんな取り組みが行われている
六本木ヒルズで、非接触ICカードやRFIDと携帯を組み合わせた情報サービスが提供される(3月4日の記事参照)。4月25日のオープンに向けて、記者向けのデモが行われた。 トム・クルーズ主演の映画「マイノリティ・リポート」では、街を歩くとセンサーが人々の虹彩を認識し、その人に合った情報が提供されるシーンが描かれる。今回のITショーケースは、こういった世界を実現させようというものだ。
54階建ての六本木ヒルズ森タワーを中心とした六本木ヒルズの全容
六本木ヒルズの中で情報を受け取るのに必要なアイテムは、携帯電話と「タウンカード」と呼ばれる接触・非接触ICカード、「タウンクリック」というRFIDタグの3つ。
デモで使われたのは発売予定のFOMA「P2102V」。カードは接触と非接触のハイブリッドICカード、RFIDタグはボタンが付いた独特のものだ タウンカードは六本木ヒルズの会員証とでもいうもので、書籍の貸し出しなどに使えるほか、エリア内216店舗でポイントを貯められるポイントカードとして利用できる。 面白いのはRFIDタグ「タウンクリック」だ。RFIDタグはタグ型をした非接触ICの1種で、基本的には内部に記録されたIDを読み取り機に伝える機能を持っている。RFIDと携帯を使った従来の実験では、読み取り機にタグをかざすと情報がメールでやってくる──というものが多かった(2002年9月の記事参照)。 「タウンクリック」では、タグにボタンを追加。エリア内に13カ所設置された「インフォメーションスポット」と呼ばれる読み取り機が置かれたエリアで、ボタンを押すと携帯にメールが届く。「ボタンを押さずに勝手にメールが来たら、それは迷惑メールだ」(森ビルMII事業室の中江川潤課長)という配慮からだ。 「アカデミーヒルズ」と呼ばれる図書館でも、RFIDが活用されている。1万2000冊用意されるという蔵書のすべてにRFIDタグが取り付けられ、検索用のPCから本の位置を検索できる。「常に本の位置情報を管理している」(森ビル)。
RFIDタグのボタンを押すと携帯に情報がメール送信されるデモ。PDPディスプレイに広告などが表示され、気になったらボタンを押す。すると概要がメールで送信される
アカデミーヒルズの図書は、本に貼り付けられたRFIDタグで位置を管理する。棚には読み取り機のアンテナが張り巡らされ、Webから書名を検索すると、本がどの棚の何段目にあるかまで表示される
森ビルでは、最初は「タウンカード」の配布から始める予定だ。「最初は(タウンヒルズにある)学校の学生証として配布する。1万人くらいを予定している」(中江川氏)。続いて、利用が多いユーザーなどを中心に「タウンクリック」も配布していく。「今年の秋くらいにはフルラインアップの実験をする」(中江川氏)。 実際に利用すると、このサービスはかなり便利だ。広告を見たときに「ちょっとメモしたい」「もっと情報がほしい」、そう思ったらボタンをクリック。すると、ユーザー属性に合わせて、情報がメールで届く。 しかし、こうした技術が一般化するには課題も多い。 1つは、RFIDの読み取り機などがどこまで普及するかだ。中江川氏は「広告掲載の話も既に来ている」と注目度の高さをアピールするが、この仕組みにはRFIDのID番号と携帯のメールアドレスをひも付するサーバが必要になる。現在は各社がバラバラにひも付を行っており、統一された仕様がないのが現状だ。中江川氏は、サーバを利用したい申し出があれば外部にも提供すると言うが、通信キャリアが一括してやってほしいというのが本音。現在、地域ごとにバラバラな展開されることが多い携帯とRFIDの組み合わせだが、統一が望まれる。 もう1つは必要なデバイスの多さにある。今回の情報提供サービスには、携帯のほかにICカードとRFIDのデバイスが必要。情報を受けるためだけにこんなにたくさんのデバイスを持ち歩かなくてはならないのはつらい。中江川氏が「将来的には、これらは携帯電話の中に入ってしまえばいい」と言うとおり、携帯に内蔵されれば「インフォメーションスポット」で携帯のボタンを押せば、その場所の情報がメールで送られてくる世界が実現する。 では内蔵化について通信キャリアの考えはどうかというと、それほど積極的でもないようだ。今回の取り組みには、NTTドコモがアプリケーションソフトの開発で協力している。会場にいたドコモの担当者によると、「内蔵については、こうしたインフラの普及状況を見ながら」と、キャリア側で普及を牽引する意志はあまり感じられない。 もっとも、昨今実験が進められている「携帯を電車の切符代わりにする」などに比べると、RFIDの内蔵は容易だ。内部で電子マネーを管理するのと違い、RFIDはユニークなIDを送信するだけ。RFID内蔵の“電池パックのフタ”が出てきてもおかしくないほど。 その場所に応じた情報をモバイルデバイスへ提供する──というアイデアは、Bluetoothが実現しようとした仕組みの1つでもある。それが最近ではRFIDや非接触ICの盛り上がりに伴い、通信方式を変えて試みられている。 しかし、問題になるのは通信方式ではないだろう。携帯電話に内蔵されるのはどれか? それがすべてを握っている。
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