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2003年3月11日　06:03 PM 更新

新メディア世代は携帯カメラをどう使う？

生まれたときから携帯電話に接している子供たちはどのように携帯電話を使うのか、コミュニケーションの方法は変わるのか──。武蔵工業大学の武山政直助教授が調査している

　30代の人々が生まれたときからテレビに接してきたのと同様、今の子供たちは小さいときから携帯電話に接してきている。携帯電話の存在が、子供たちの感性やコミュニケーションにどのような影響を与えるのか──。こんなテーマに取り組んでいるのが武蔵工業大学の武山政直助教授だ。

、「モバイルインターネットと子ども」に関する国際ワークショップで講演する武蔵工業大学 環境情報学部助教授の武山政直氏

　30代から40代の世代は、主にテレビや書物、新聞とともに育ち、インターネットに接し始めたのは早くても20代になってから。一方これからの新しい世代は、既にインターネットやモバイルが普及したところに生まれてくる。そうした新メディア世代のコミュニケーションスタイルを武山氏は調査している。

　こうした調査を行う際に注意しているのは、「何も言わずに渡し、どう使うかを見て子供と一緒に使い方を考える」こと。大人が考える使い方を子供に押しつけるのではなく、あくまで「子供がどう使うのか」を見て、考えようという方針だ。

　武山氏の発表の中でも興味深いのが、子供にカメラ付き携帯電話を持たせて、どんなやりとりをしているかを調査したものだ。

　写真の撮り方として特徴的なのは、ライブでメッセージを送れることからか、「今、送ることに意味がある写真」や「送る相手を考えて撮る写真」が多いことだと武山氏。自分が今見ているものや食べているもの、生活でのハプニングなど、ライブ感が高い画像が多いのが特徴だ。

　それは、寿司をつまもうとする手が写っている食事中の写真や、雪の日の足跡を自分の目線から撮った写真、渋滞中の様子を車の窓から撮った写真など。添えられるメッセージも「そこ」「ここ」「あれ」など、同空間表現が使われているのが面白い点だ。

　また武山氏は、子供はエゴセントリックなもので、他者を受け入れる体験をしながら成長していくという、フランスの心理学者ジャン・ピアジェの説を引用。携帯カメラの普及が、他人のパースペクティブを早期に体験することにつながり、「それが良い影響を与えるのではないか」。どんな視点で見たものに他人が関心を持つかを早いうちから体験すると、互いのコミュニケーションの中に相手を気遣う部分が芽生えるなど、ポジティブな側面もあるという考えだ。

　最近増えてきた動画撮影機能付きの携帯電話でも同様の調査を行い、これが文化やアートを育てるものになるのではと武山氏は注目している。

　子供たちは、動画撮影ではそれほど自分を撮影しなかったそう。静止画と違って体の動きとカメラとの連動に興味を示し、上を向いて撮る、走りながら撮る、回りながら撮る、公園の遊具に乗りながら撮るなど、それぞれの撮影によって映像がどのように変わるのかをおもしろがったという。「子供たちは、自然に映画的な表現をするようになる」。こうした手法に小さいときから馴染んだ世代が新しい表現を生み出すのではないかと期待を寄せる。

　携帯電話やモバイル機器によるコミュニケーションは、生徒同士の遠隔地でのライブコラボレーションなど、教育に役立つ側面もあると武山氏。学校での携帯電話利用をどう考えるか、プライバシーの問題をどうするかなど問題は多いとしながらも、携帯電話が持つ文化的側面も無視できないという考えを示した。

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