Mobile:NEWS 2003年3月25日 11:21 PM 更新

“パケット無料”がiモードにやってきた

iモードのオープン化を受け、NTTコムのMOBILEWINGが始まった。コンテンツプロバイダが通信料金を負担することで、ユーザーは“パケット代無料”でコンテンツにアクセスできる。同社は、通信料無料をアピールすることで、顧客満足度の高いサイトが構築できると言うが……

 「絞ったのは、パケット料金を安くする点だ」。

 iモードのゲートウェイ(GW)のオープン化施策を使った、NTTコミュニケーションズの「MOBILEWING」が始まった。モバイル・コンテンツ・フォーラム主催のセミナーで講演に立ったIPサービス部の大越祐司担当部長は、コンセプトを上記のように話す。

 氏が「フリーダイヤルの携帯版」と言うように、これまでユーザーが負担していた通信料(パケット料)を、コンテンツプロバイダ側が負担する「パケットフリーサービス」が最大の特徴だ。ユーザーはiモードからMOBILEWINGに切り替えることで、パケット料を気にすることなくサイトを閲覧できるようになる。


MOBILEWINGを使うと、iボタンを押すとiモードではなくOCNにつながるようになる

iモードに対する最大の不満は“パケット料”

 同社の調査によると、「一番多いiモードに対する不満は“パケット料が高い”。次がメールアドレスをPCと一本化したい。この2つで過半数を占める」(大越氏)。第1段階として、同社はパケット料の削減に目を付けた。

 同社の論法はこうだ。「パケット代の高さがもたらす悪循環があるのではないか?」。

 最近、iモードユーザーはパケット代がかさむことを怖れてサイトへのアクセスを控える傾向にある。コンテンツプロバイダ側も、画像などを多く使ったコンテンツが、“パケット代がかさむサイト”として敬遠されることを知っている。その結果、「どのサイトも見ると同じようになってくる。コンテンツの差違化ができない。売れ筋コンテンツの寡占状態になってしまう」(大越氏)。

 この流れを断ち切れるのが、携帯のサイトアクセスにおけるフリーダイヤルだと同氏は見る。「ユーザーのパケット代を気にしないで作れるとなれば、画像もふんだんに利用できる」。


iモードへの最大の不満はパケット料

オープン化に乗りにくいISPの事情

 2年前、あれだけ騒がれた“iモードのオープン化”も(2001年7月の記事参照)、いざ実際に始まるにはかなりの時間がかかった。「実際に開放されたのは昨年の12月」と大越氏が話すように、システム面の課題もあったようだが、ISPが乗りにくい根本的な事情もある。

 ドコモのiモードGWの開放は、かなり大胆な施策で、ISPはかなり自由度が高い。しかしその代わりにビジネスとしては難度が高い。

 ドコモのiモード事業は、ある意味シンプルだ。iモードの利用によって同社にはパケット通信による収益が入り、さらに課金代行の手数料収入も見込める。

 しかしほかのISPがドコモのパケット網を使ってビジネスを行っても、収益の確保は難しい。ユーザーが使ったパケット料はISPが管理し、別途ドコモに支払う。大越氏によると、ISPがドコモに支払うのは通常と同じ0.3円/パケット。ユーザーがいくらサービスを利用しても、ISPには通信料による収入はない。

 大越氏は「有料サイトに対する課金代行サービスも次のステップとして当然考えている」と話すが、コンテンツプロバイダ側にとっては厳しい選択だ。iモードの課金代行手数料が9%なのに対し、クレジットカード決済が中心のISPでは、10数パーセントが下限だからだ。

 そんな中、MOBILEWINGのパケットフリーサービスは、料金無料というiモードにはない利便をユーザーに提供すると共に、自社の収益も確保できるという一石二鳥の方法だ。ユーザーが使った0.3円/パケットの通信料に、NTTコムの手数料0.1円/パケットを上乗せして、コンテンツプロバイダに請求するからだ。


パケットフリーサービスでは、エンドユーザーが使ったパケット代をNTTコムが集計し、手数料を載せた上でコンテンツプロバイダから徴収。ドコモに支払うという流れになる

“無料”ながら、当初は特殊用途に

 斬新なMOBILEWINGだが、爆発的な普及には数々の課題がありそうだ。

 1つは0.4円/パケットという通信料を負担するコンテンツプロバイダ側の考え方だ。パケット料金を無料にすることで「抜群の囲い込み効果があるのではないか」と大越氏は話すが、コンテンツプロバイダ側の負担はそれだけ増す。

 有料コンテンツの配信を行うにしても、着信メロディが1曲15円程度で提供されているのに対し、1曲のダウンロードにかかるパケット代は約24円(10Kバイト・0.3円/パケット換算)。コンテンツプロバイダ側が通信料を負担したらとてもペイする額ではない。

 通信料無料を武器に販促用途に使うのも、今度はアクセスの難しさが課題となる。MOBILEWINGにアクセスするには「接続先を変えるという手作業が必要になる。機種によっても操作が違い一概に説明できない」(大越氏)からだ。NTTコムではそのため簡単に接続先を切り替えられる「モードスイッチャー」という機器を用意しているが、ユーザーにあまねく行き渡らせるのは難しい。

 実際のところ、iモードのオープン化を成功させるにはドコモのより積極的な対応が必須だ。「接続先が切り替わるというのはどういうことかというと、iモードが使えなくなる。iモードのメールも届かなくなる」と大越氏。現行のiモード端末は接続先を1つしか設定できず、ユーザーはいちいち切り替えなくてはならない。

 結局のところ、一般的なコンテンツではなく、特殊なコンテンツが当初の対象だ。同社では中古車販売や宝飾品、不動産など高額な商品を扱うサイトを想定業種の1つとしている。また企業内イントラネットへのアクセスを行う場合も、パケットフリーを使えば分計が簡単だ。

 大越氏は「フリーダイヤルを使っている企業の目的は、顧客重視の姿勢を出すこと。パケットフリーで同じ効果が期待できる」と話す。フリーダイヤルの市場は既に数十億円とも言われる。パケットフリーが携帯電話界におけるフリーダイヤルになれるかどうかに注目したい。



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[斎藤健二, ITmedia]

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