Mobile:NEWS 2003年3月25日 07:30 PM 更新

開発者インタビュー:「特徴が打ち出しにくい端末だから、多くのことにこだわってるんです」〜P-in Free 1S

ドコモが4月1日から開始する定額制PHSデータ通信サービス「@FreeD」には、専用のカード端末が必要だ。その最初の対応端末として登場するのがシャープ製の「P-in Free 1S」。単に定額制に対応しただけではなく細かな部分まで作り込んだ、こだわりの端末だ。 本来、カード端末は用途や利用スタイルが限定され、特徴が打ち出しにくいものだが、このような状況において「P-in Free 1S」は何を目指して開発されたのか──企画・技術担当者にお話を伺った

初代P-inからの「血」を受け継ぎつつ、時代の潮流にマッチした端末を

 シャープといえばNTTドコモのPHSユーザーには馴染み深いメーカーだ。PCカードスロットやCFスロットでそのまま利用できる音声端末を登場させたのも、最初の一体型PCカード端末である「P-in」を登場させたのもシャープ。いつも新しい潮流を生み出してきた。それでは「P-in Free 1S」とはいったいどんな端末なのか、まずはそれを尋ねてみた。

 「我々はノートPCユーザーに便利なPCカードタイプの『P-in』、当社のザウルスといったPDAでも使えるCFカードタイプの『P-in m@ster』と、時代に合わせて端末を投入してきました。大雑把に言ってしまえば定額制という潮流に合わせたのが『P-in Free 1S』です」

 確かに、AirH"がモバイルでも定額データ通信という潮流を作り、従来からNTTドコモ向けの端末を製造していたシャープがNTTドコモの定額制データ通信サービスである「@FreeD」対応の端末を作った、それは自然な流れなのだろう。

 「もちろんP-in以来の血も受け継いでいます。携帯電話と接続すればより広いエリア、高速移動中でも回線交換やパケットでのデータ通信が行えます。VOICEアダプタとイヤホンマイクを接続すればPHSでの音声通話もできる。機能は何1つ削っていません」

 P-inやP-in m@sterの特徴であった携帯電話と組み合わせての通信機能、PHS音声通話機能は、確かにいざという時に使える安心感があります。しかしメリットこそあれデメリットのない機能は削れなかった、それこそがシャープのこだわりなのだろうし、P-inやP-in m@sterから買い換えたユーザーを裏切らないということでもある。

見える部分はアンテナだけ、だからこだわった

 「カード型端末を実際に使うときに見える部分はこのアンテナの部分だけです。アンテナは安定した通信のために重要な部分であると同時に、端末のデザインそのものでもあるんです。だからP-in Free 1Sではここに徹底してこだわっています」

 一見単にシルバーメッキしただけように見えるアンテナ。今時のPDAやPCはシルバーベースの製品も多く、確かにデザイン面でのマッチングはよさそうだ。

 実はこのアンテナはアルミ製だ。一般によく使われているエレメントをゴムやプラスチックでカバーした物と異なり、全体がアンテナとして機能する。唯一残念なことは1グラムだけ重量がP-in m@sterより増加してしまったことだそうだ。

 もちろんデザイン面でのこだわりも強烈だ。アンテナ部のシルバーメッキは一般的な装飾メッキの2倍程の厚みを持つ純然たる金属メッキで、耐久性が極めて高い。見掛けだけではなく、定額制データ通信サービス対応製品なのだからこれまで以上にヘビーに利用されるであろうことを見越しての採用だという。

 実際に触れてみないと分からないのだが、このアンテナはP-in m@ster同様、2軸で本体と接続され自在に動く。しかし本体に対して決して水平、垂直な位置では固定できず最低15度オフセットされた位置で固定されるようになっている。これはアンテナに無理な力が掛かっても本体やアンテナとの接続部が破損しないための配慮だ。

 たかがアンテナ、されどアンテナ。一体型通信カードでここまでアンテナにこだわった製品は過去に例がないだろう。

可能な限りスマートに、ミリ以下の攻防

 カード型端末で気になるのがエクステンド部──いわゆるスロットからはみ出る部分だ。P-in m@sterもエクステンド部の小さな製品ではあったが、「P-in Free 1S」はこの部分にさらにこだわった。

 「基盤で0.9ミリ、アンテナを含めた外装部で0.5ミリ、合計で1.4ミリ長さを縮めています。アンテナを完全に内蔵しているタイプの端末に比べても出っ張りは小さいはずです」

 いわゆる出っ張り部分を小さくするために1ミリ以下の世界で小型化にこだわったという。1.4ミリはカード全体から見れば小さなものだが、実際にスロットに装着してみると大きな違いだ。通信カードをカードスロットに差しっぱなしで利用している人はその意味がよく理解できるだろう。

 「インジケータも縦2段から横2列に変更しています。PCで利用する場合PCカードスロットの位置次第では内側のインジケータが見えにくいという問題があったからです」。デザインだけではなく、もちろん使い勝手の向上も忘れていないのだ。

定額制対応端末だからこそ必要だった──完全な新設計と更なる低消費電力化

 NTTドコモがサービスを開始する「@FreeD」はAirH"のようなパケット方式ではなく、回線交換のまま無通信時に通信を停止する(クライアント側からは通信は継続しているように見える)ことで電波利用効率を高めるドーマント方式を採用している。この点では従来端末を大幅に改良せずに対応することも可能なように思える。

 「P-in Free 1Sは完全に新設計です。これはドーマント方式に対応することもありますが、定額制のサービスに対応すれば当然ユーザーの利用時間が伸びますから、従来よりさらに低消費電力が望まれるからです。待ち受け時、ドーマンド時とも消費電力は6ミリワットに抑えられています。安心してモバイルでも長時間インターネット接続が楽しめるようになっています」

 待ち受け時とドーマント時の消費電力が同じということは、ノートPCやPDAのバッテリー消費を抑えるため、まめにインターネット接続を切断する必要もないということだ。この点はパケット方式にはないドーマント方式ならではの魅力とも言えるだろう。

 「当初はドーマント方式での通信はミドルウェア、つまりPC上のドライバで実現する予定でした。しかしこれではPDAなどでも専用ドライバが必要になり、利用が制限される点が問題になりました。結局通信カード側で対応することになりました。一番大変だったのはこの点を含めて開発期間が大変短かったことかもしれません。しかしPCでもPDAでも利用できるようになりましたから、結果としてはこれで良かったと思っています」

 シャープならではのさまざまなこだわりを持って生まれた「P-in Free 1S」。NTTドコモの定額制データ通信サービスの利用を検討している人はぜひ店頭でそのこだわりを確認してみてほしい。そのサイズやアンテナ部の構造、たとえモックアップでもそのこだわりは十分伝わるだろう。

 最新ならカード端末はどれでも一緒……決してそんなことはないのだ。

[ITmedia]

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