Mobile:NEWS 2003年4月10日 00:17 AM 更新

量産まで秒読み――本格普及が見えてきた「有機ELディスプレイ」

三洋電機とEastman Kodakが商用出荷を開始するなど、本格的な普及段階にきた「有機EL」。EDEX2003 電子ディスプレイ展でも、量産まで秒読みに入った有機ELディスプレイを各社が紹介していた

 次世代ディスプレイとして期待される有機EL(OLED)。三洋電機とEastman Kodakからアクティブマトリックス型フルカラー有機ELの商用出荷が始まるなど、いよいよ本格普及という段階にきている。EDEX2003 電子ディスプレイ展でも、量産段階まで秒読みに入った有機ELディスプレイを各社が紹介していた(EDEX2003 電子ディスプレイ展についてはこちらの記事を参照)。


Kodakや三洋電機のブースでは、量産が始まった2.16型の有機ELディスプレイが展示されていた


三洋電機のブースでは、昨年のCEATECでも話題となった15型有機ELディスプレイを展示

 日立製作所のディスプレイ事業が分社化して昨年10月1日に設立した日立ディスプレイズのブースでは、開発中の3.5型QVGA(320×240ピクセル)の低分子系アクティブマトリックス型有機ELディスプレイを参考出品していた。

 これまで同社は液晶ディスプレイを中心に展開していただけに、今回の“意外”な出展に「おやっ?」と立ち止まる来場者も目立った。「一般向けには今回が初披露。有機ELでは後発になるが、かなり本腰を入れて取り組んでいる」(同社)。


日立ディスプレイズが参考出品していた有機ELディスプレイ

 同社のアピールポイントは「動画特性の向上」。従来の有機ELは、1フレーム内を複数の発光期間に分けて発光させていたため、擬似輪郭と呼ばれる動画ノイズが発生した。だが、同社の開発した有機ELは、発光期間を1フレームより短い時間で制御できる独自の「発光期間アナログ変調駆動方式」によって、“ボケ”のない動画再生を可能にした。


“ボケ”のない動画再生が可能な「発光期間アナログ変調駆動方式」

 「量産に向けての課題は寿命。現在、輝度半減レベルが5000時間だが、これをもっと伸ばしたい。製品化の目標は1年以内。当初はPDAやDVカメラ向けの小型タイプから生産を行うが、最終的にはTV向けの大型を狙っており、低分子系だけでなく高分子系の研究も並行して行っている」(同社)。

 水分や高エネルギー粒子に弱いという特性からシャドーマスクによる蒸着方式でしか作れないなど、製造プロセスでの制約がある低分子系に対して、インクジェットなど印刷法で製造でき、高精細で大画面の有機ELディスプレイを作れるのが高分子系の魅力だ。

 高分子系での製品化に積極的なのがセイコーエプソン。同社ブースでは「有機ELでは世界最高レベルの解像度」(同社)という130ppiの2.1型高分子系有機ELを参考出展している。


セイコーエプソンの高分子系有機ELは世界最高レベルの解像度

 同社がこの高分子系有機ELをお披露目したのが2001年のCEATECでのこと。その後、さまざまな電子ディスプレイ関連の展示会で展示されているが、なかなか製品化にこぎつけていない。

 だが、その性能は着実に進化しているようだ。それを象徴するかのように、今回のデモでは女性がヴァイオリンを弾いている動画が紹介されていた。

 初期の有機ELでは、花火の映像を表示するメーカーが多かった。自発光の有機ELで見ると一見キレイだが、表示性能をうまく“ごまかす”のにも好都合だからだ。


 「動画で人間の肌の質感などを表現するのはこれまで難しかった。当社の動画デモも、前回まではCGだった。色ムラが改善された今回の新パネルでは、中間調がキレイに表現できるようになり、人肌や髪の毛などがキチンと出ている」(同社)。

 インクジェット法による成膜技術もほぼ実用レベルにまできているという同社の高分子系有機ELだが、量産に向けての最大の課題がやはり有機材料の寿命。特に青色の寿命が数千時間と、1万時間を超えている他の色と比べて一ケタ少ないのがネックになっているという。

 「各色の寿命が均一でないと、経年によって色合いが変化してしまう。だが、寿命さえなんとかしてくれれば、すぐにでも欲しいというセットメーカーも多い。“2004年度には量産”という当初目標に向け、開発を急いでいる」(同社)。

 EDEX2003では、台湾Chi Mei Optelectronics(CMO)のブースも出展していた。このCMOと日本IBMとの共同出資で設立したインターナショナル・ディスプレイ・テクノロジー(IDTech)は、世界最大となる20型のフルカラー有機ELディスプレイを開発したと先日発表して話題となったばかり。だが、残念ながら、CMOブースでは注目の20型有機ELは展示されていなかった。


先日話題となった世界最大の20型有機ELはお披露目されなかった

 「今年5月に米国で開かれる『SID(情報ディスプレイ学会)2003』で実機デモを予定しているので、今回は展示を控えた。有機ELは従来、ポリシリコンTFT基板上に有機層を形成していたが、新開発の20型有機ELは低コスト化に有利なアモルファスシリコンTFTを使用している。SID2003以降の展示会では、お見せできるだろう」(同社)。


昨年のEDEX2002では高分子系の17型ワイド有機ELディスプレイを展示して話題をさらった東芝松下ディスプレイテクノロジーは、今年は量産化に近い低分子系の2−3.5型タイプを展示



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[西坂真人, ITmedia]

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