キャリアの安易なアクセス制限に批判「出会い系サイト」対策を大義名分として、一般サイトすべてへのアクセスを制限するのは行き過ぎ──。コンテンツ事業者などから、こうした批判の声が上がっている。選択肢の少ないアクセス制限は、将来のビジネスの芽を潰してしまう可能性もある
「出会い系サイト」対策を、“Webサイトへのアクセス制限”という形で進める携帯キャリア各社(4月15日の記事参照)。しかしコンテンツ事業者からは、「出会い系サイト対策という大義名分があったとしても、ユーザーおよびコンテンツ事業者に大変な悪影響を与える」と批判の声が上がっている。
モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)と社団法人デジタルメディア協会(AMD)が総務省に提出した陳述書には、一般サイトへのアクセスを制限した場合に生じる、数々の問題が記されている。 MCFの岸原孝昌事務局長は「キャリアが(一般サイトへのアクセスを)バッサリ切ってしまうと、多方面に影響を及ぼす可能性がある。また、キャリアの公式サイト上でしかビジネスができなくなる」と、今後の情勢を懸念する。 まず問題になるのは、出会い系サイトと関係ない非公式サイトへのアクセスが大幅に阻害されることだ。
さらに、携帯メールを使ったコミュニケーションへの悪影響が考えられる。個人間の情報交換でも、企業からのメールマガジンでも、メールに最低限の情報とURLを記載しておき、詳細情報はURL先にアクセスするという方法は主流となりつつある。一般サイトへのアクセスが制限されると、こうしたメールとWebをリンクさせたコミュニケーションが利用できなくなる。 これから立ち上がる新規ビジネスの芽を摘む可能性も高い。ホームセキュリティやネットワーク家電のコントローラとして利用したり、RFIDや二次元バーコードを利用して簡単にWebページに誘導する仕組みも運用が難しくなってしまう。「大きなビジネスになろうとしている健全なサイトを潰しかねない」(岸原氏)。 アクセス制限後も、こうしたサイトを運用する最も簡単な方法は、公式サイト化することだ。しかし、公式サイトに入るのは容易ではないし、審査には時間もかかる。そしてオープン化を進めているEZwebでは、公式サイトもアクセス制限の対象としてしまっている。
注目すべきは、独自の検索エンジンを使って、一般サイトへのアクセスも限定的に認める方向で検討しているJ-フォンだ。「基本的にオープンサイトを切り捨てない。健全で優良なコンテンツもある」(J-フォン)。
基本的に、今回のアクセス制限は、一部の悪影響をおよぼすサイトを未成年が利用することを避けるためのもの。やり方としては、アクセスしてもいいサイトを集める“ホワイトリスト”を作るやり方と、アクセスしてはいけないサイトを集める“ブラックリスト”を作るやり方がある。 現在、各キャリアが想定しているのは、ホワイトリストの作成だ。「ブラックリスト方式では、悪質なサイトすべてに対応できない」(ドコモ)。しかしホワイトリスト方式は、「実効性はあるが、利便性が損なわれる」(岸原氏)。 ホワイトリストの作成をキャリアが行うのも問題だし、ホワイトリストが1つしかないのも懸念材料だ。 岸原氏は「NPOなどが作る、もう1つのホワイトリストがあってもいい」と話す。キャリアは、アクセス制限をかけるかどうかはユーザーの任意、と説明するが、「ユーザーが(レベルを)選択できることが重要。(ホワイトリストが)1つしかなければ、選んだことにならない」と岸原氏は反論する。
実際のところ、あまり制限が厳しければ、制限サービスを利用しない可能性もある。友達からメールで面白いサイトのURLが送られてきたとき、見られないとしたらどうするだろう? 岸原氏は、単に一般サイトへのアクセスを制限するだけでなくバランスを取った対策が重要だと話す。「ユーザーが自分たちで責任を持って、(携帯サイトについて)ある程度のリテラシーを持っていくべき。それを説明するいい時期ではないか」。
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