Mobile:NEWS 2003年4月18日 10:36 PM 更新

迷惑メールは入り口で止められるのか?

いくらキャリアが対策を打っても迷惑メールが止まらないのなら、入り口であるISPで遮断できないものか。携帯向け迷惑メール対策としてできることと、その限界を大手ISPであるSo-netに聞いた

 携帯電話へ届く迷惑メールを遮断するには、いくつかの方法がある。

 1つは、受信側である端末で防ぐ方法だ。先にメールの題名をチェックして、迷惑メールを受信しない「選択受信機能」(FOMAや505iで搭載)がその1つ。

 2つ目は、途中のメールサーバで遮断するやり方。ドメイン指定受信や宛先不明メールのブロック(2001年11月の記事参照)、「未承諾広告※」メールのフィルタリング(2002年7月の記事参照)など、これまで通信キャリアが取ってきた施策のほとんどが、これに当たる。

 3つ目が、迷惑メール業者が送信時に使うISPのところでブロックする方法。入り口で止める、やり方だ。

 大手ISPの1つ、So-netに、迷惑メール対策とその限界について話を聞いた。

「情報をいただかなくては何もできない」

 「迷惑メール送信はダメ。規約で禁止をうたっている」と話してくれたのは、ソニーコミュニケーションネットワーク業務ディビジョンの和田芳文ゼネラルマネージャーだ。

 実際の迷惑メール対策の流れはこうなる。まず迷惑メールを受け取ったユーザーがISPに連絡する。苦情を受けたISPは送信元ユーザーを調べて対応を取る。和田氏によると、苦情を受けてから「長くても1日」で処理が終わるという。

 「その一方、通信ですので、どんな制限ができるかというと難しいところもある」と和田氏。通信事業者には“通信の秘密”を守る義務があり、怪しいメールが大量に送信されていてもメールの内容を見ることはできない。受信したユーザーがヘッダ情報などを通知して、初めて対応することができる。「情報をいただかなくては何もできません。どの会員さんが(迷惑メールを)出されたか分かりませんので」(和田氏)。

 PCへの迷惑メールではユーザーのリテラシーもある程度あるし、メールのヘッダ情報を見るのも容易だ。ところが、携帯電話宛の迷惑メールの場合、ことは簡単ではない。「携帯向けの場合は、連絡が遅れるケースもある。2−3日遅れの迷惑メールの苦情をいただく場合もある」(和田氏)。

 例えば、ドコモでは希望するユーザーに送料のみでメールのヘッダ情報を提供するサービスを行っているが(2002年9月の記事参照)、これはフロッピーディスクが郵送で送られてくる。とてもではないが、迅速な対応が行えるものではない。

対応策はどんなところに?

 例えば、ドコモがISPに直接ヘッダ情報を提供したり、ISPがドコモにヘッダ情報を請求したりするのはどうだろう? ここにも通信の秘密があり、ユーザーが間に入らないとこうした情報交換は行えない。ドコモはISPに「そちらから迷惑メールがたくさん来るので何とかしてよ」とは言えても、ISPが実際に対応するための情報は提供できないわけだ。

 さらに、ユーザーからの苦情を受けたISPが送信業者を特定して対応しても、送信業者が退会して別のISPに移ってしまえば元の黙阿弥だ。So-netによると、例え“迷惑メール送信を行った”ということで退会させても、ほかのISPへの入会は行えてしまう。クレジットカードのように、利用者の情報を業界内で共同管理する仕組みがないからだ。

 ドコモが行っている、「宛先不明メールの受信ブロック」のように、宛先不明を含む大量のメールアドレスに一斉送信することをブロックするやり方はどうか。和田氏は「一定の基準を持って体制を作っている」と話すが、「量が多ければ迷惑メールかといえば、そうとも言い切れない」とも。

 最大の問題となるのは、“迷惑メールとは何か”の定義づけの部分だ。ある人にとって迷惑なメールでも、人によっては有用なメールになるかもしれない。法律では、受信者に承諾を得ない広告メールには「未承諾広告※」表示が義務付けられているが、現在のいわゆる“迷惑メール”で義務を守っているのはほとんどない。

 メールをチェックすることもできず、もしもチェックができたとしてもISPには判断がつかない。「苦情をもらわないと分からない」(和田氏)のが実情である。

文化も世界も異なる、インターネットとケータイ

 発端を思い起こしてみれば、迷惑メール騒動はインターネットとケータイという異なるプラットフォームが接続されたことによる歪みだとも言えるかもしれない。

 今回の取材で何度も出てきたのが、「インターネットはオープンなもの」という言葉だ。通信の秘密うんぬんよりも、内容を規制することは発展を阻害しかねない、という考え方がISPには浸透している。

 これに対して、キャリアがさまざまな安全を保証することを求められる、ケータイプラットフォームはクローズドな世界だ。迷惑メール対策にしても、基本的には規制で対応しようとする。

 インターネットの世界にいるISPにとっては、メールフィルタなど利便性のあるサービスは提供するが、あくまで自己責任での利用を求める。「(迷惑メールに対しても)啓蒙が最初のスタンス」というSo-netの言葉に、よく表れている。



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[斎藤健二, ITmedia]

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