「ケータイ先進国日本」は復活するのか?
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最近、各種の料金プランの組み合わせによる割安感を訴えたり、幾分かの値下げプランで、従来の契約者の囲い込みや、他キャリアからの乗り換えを促すCMが目につく。今回は、インセンティブモデルに関する考察を総括し、ユーザの立場からケータイの現状を見直し、このインセンティブモデルがまたも威力を発揮するかもしれない今後の新規サービスの考察へと移りたい。
第1回、第2回では、インセンティブモデルの概説と、それがなくなった場合の想定を行い、携帯時業者間の駆け引きの結果、このモデルが継続されているのではという説明を行った。今回は、想定シナリオを考察してみよう。
ゲーム理論を元に、インセンティブモデルを巡る携帯事業者間の駆け引きが「囚人のジレンマ」のような状況に陥っているのでは、という仮説を示した(第3回参照)。ここでいう「ジレンマ」とは、一方の事業者がインセンティブを廃止し、他方が継続した場合には、継続していた事業者の利得がより大きいことを指す。つまり「動いた事業者」が多くの漁夫の利を与えてしまうのだ。
この状況は当然ながら消費者の乗換え率の大きさに依存する。前回は15%と仮定し試算を行ったが、この値はあくまでも仮定でしかない。もし、通常の解約率と同程度の3%であったら、与える漁夫の利は0.15兆円程度と少なくなる。つまりインセンティブを廃止した場合、相手がどのような出方をしても廃止によって相手事業者より大きな利得を得ることになる。
この数値によっては、ジレンマから脱却できることになる。
では、あなたが事業者ならどのように考えるだろうか? 当然、現在不明であるインセンティブモデルを廃止した場合の解約率をより高い精度で見積もろうとするだろう。契約者に対するアンケートなり、試験的な実施も考えられる。その結果、乗換え率がある一定の値より低い場合には、インセンティブの廃止に踏み切るだろう。
次に、確実に現在の顧客を囲いこむために、今までインセンティブに利用していた金額を、通信費値下げに回す可能性が高い。例えば、NTTドコモでの年間約1兆円のインセンティブ費用の半分、つまり5000億円を値下げ原資に回したとしよう。
その場合、現在の加入者数約4000万人から単純計算すると年間1加入者あたり約1万2000円、つまり月額にして1000円程度通信費を引き下げることができる。現在約8000円のARPU(用語)が7000円程度まで下落することになる。
つまり事業者は、インセンティブを廃止する場合には、通信費値下げを組み合わせることにより、短期的な乗換えを防ぐ最大限の行動を取るという予測がつく。
ポイントは、各消費者は、もともと毎月約8000円の通信費を払って来たというところである。請求書の8000円という数値には見慣れており、この値に違和感を持っているわけではない。
事業者が魅力的なサービスを実施しさえすれば、消費者はこの1000円分を新規サービスに支払うことを厭わないだろう。つまり、いったん通信費が1000円減少したとしても、事業者が魅力的なサービスをタイムリーに実施すれば、以前の値まで元に戻る可能性はある。
インセンティブに関して引き金を引くのはあくまでも携帯事業者である。その携帯事業者の想定シナリオは、廃止した場合の乗換え率の調査、その値によっては、通信費引き下げと組み合わせたインセンティブの廃止という方向に走ると考える。また、その引き下げられた通信費に相当する金額を取り戻すための新規サービスを開始できるかが鍵となる。
ところが皮肉なことに、多くの場合、新規サービスの実施には、インセンティブが“魔法の杖”となっているのが現実である。迅速に新規サービスに対応した端末を配布することができるからである。
昨年初めの日刊工業新聞によると、J-フォンは携帯電話機の新機種投入を半分に絞り込む方針を打ち出していたと言われている。サービスの顧客層や端末へのニーズを明確化し、1機種当たりの量産効果を引き出すとともに、仕入れ単価を圧縮し、不人気端末発生に伴うインセンティブ拡大を抑える目的で、年間10数機種程度の、よりヒットする端末の開発・投入を進め、インセンティブの適正化や“1円端末”の絶滅を目指す、という内容だと伝えられている。
最近発表されたドコモの「505iシリーズ」は、これ以上の高機能の携帯は考えられないという段階まで来ている端末だといわれている(特集参照)。しかし、実際にこうした機能を最大限に活かす新規サービスとはどんなものが考えられるだろうか。
次回からは「どんなサービスがあったら1000円増加した請求書でもOKか」という観点で「ケータイ先進国日本」を考えてみたい。
また前回より読者の方よりご意見を頂けるようにしたところ、多くの叱咤激励を頂いた。特に携帯電話代理店の方々よりメールを頂き、このインセンティブモデルに対して、大変高い関心があることを痛感した。ここで改めて御礼を申し上げたい。
我々としても、このコラムで結論が出せる課題ではないことは認識している。ぜひ今後も継続して本コラムに関してご意見をいただければ幸いである。
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[ザイオン 福本靖, ITmedia]
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