Mobile:NEWS 2003年4月28日 10:39 PM 更新

連文節から予測変換へ〜携帯入力の次は?

今のケータイコミュニケーションは、もしかしたら通話よりもメールが主体。文字入力方式の違いは、音質以上に使い勝手を左右する。搭載される機能が急速に進化するなか、携帯文字入力の基礎研究も進んでいる

 携帯の文字入力方法には、現在大きく4つの方法がある。未だ、これに決まり、というものはなく、各端末が複数の方式を搭載して、ユーザーが使い分けているのが現状だ。

方式概要商品名
マルチタップ「お」を出すのに、1キーを5回押す
ポケベル方式最初に行を選び、続いて音を選ぶ。2ボタンで入力が可能
シングルタップ音の選択を省いて行を入力すると辞書を検索して候補を呈示してくれるT9
前方一致検索マルチタップ方式などで1文字入力すると、文脈や履歴から予測して候補を表示してくれるPOBox

「マルチタップ」あるいは「5タッチ」と呼ばれる入力法が現在の主流だが、「T9」などの「シングルタップ」を搭載した端末も増えている。また「POBoX」を筆頭に「前方一致検索」(予測変換)方式も急速に普及し始めている。「ポケベル方式」もパナソニック製端末「P251iS」の特徴としてアピールされるなど(1月22日の記事参照)復活の可能性も出てきた

 大阪大学で開催されたシンポジウム「ケータイ・カーナビの利用性と人間工学」では、国内の多くの研究者が「ケータイの文字入力」について発表を行った。

 広島国際大学人間環境学部の丁井雅美氏は、マルチタップ方式時の入力速度を計測。複数のキーを移動して押す場合と同じキーを連打する場合などで、どのように速度が異なるかを検証した。

 丁井氏によると「移動はほぼ一定のリズム。ただし連打は違ってリズムが一定でない」という結果だった。被験者は、連続タッチ数が多い「お」を入力するときは、エラーを起こさないように少し慎重になってしまうという。

 また、マルチタップ方式では、連打の際に押しすぎてしまっても戻るボタン(逆トグル)を備えている機種が増えてきた。しかし、丁井氏はこの機能の存在を知らない人がまだまだ多いことを指摘する。「メーカーによっては“こんなところに戻るがあっていいの?”というところにある」(丁井氏)。


前方一致検索の欠点を補うには

 有名な「モバイルWnn」を開発しているオムロン ソフトウェアの田中成人氏は、文字の入力だけでなく日本語変換機能まで含めて、各方式のボタンのストローク数の違いを計測した。

方式ストローク数
連文節変換6752回
シングルタップ2551回
前方一致検索3286回
メール100文章のキーストローク調査

 田中氏によると、マルチタップを使った連文節変換は「ぞっとする入力数。ただし入力後は変換操作のみ」。マルチタップが1文字入力するのに平均して3回キーを押す必要があるのに対して、シングルタップは1回のキー入力で文字を入力できる。日本語の自立語に含まれるひらがなの割合にはばらつきがあるため、実際は2.6倍の効率化となるが、「(現在のシングルタップは)ひらがなを中間言語として使っているため、直感的ではない」(同氏)。

 特徴的なキーストローク数の調査では、興味深い数字が出てきた。

方式変換矢印確定モード
連文節変換49363342691
シングルタップ40214871006179
前方一致検索17885112450

 連文節変換では、目的の1文章を一括で確定できるため変換操作が少ない。シングルタップや前方一致検索では、確定回数に2倍以上かかる。前方一致検索では、候補選択のための矢印キー操作が極めて多いのも特徴だ。「選ぶ操作は連文節の13倍。ボタンが壊れないのか」(田中氏)。

 さらに、前方一致検索の問題点として「100文章入力して、まれに突然変換できない文字が出てきてしまう。ほとんど行わない操作のため、変換の仕方が分からない」(同氏)。

 いくつかの課題はあるものの、文字入力方式の進化の方向の1つは前方一致検索にあると同氏は見る。連文節変換方式の進化は極限に達したともいえる。「100文字の変換エンジンを作ったが、市場では全く反応がなかった」(同氏)。

 田中氏は前方一致検索を中心に、連文節変換機能もシームレスに利用できる日本語入力システムを、新しい方式として提案する。ポイントの1つは、前方一致候補の表示数は1画面に抑えること。「1画面中に求める候補がなければ、もう1文字打ったほうがいいことが分かる」。

 課題は、速度がその1つだ。マルチタップでは連打時に0.2秒で1回キーを入力する。「0.2秒で各種候補を出そうとするとついていけない」。また、変換エンジンだけでなく画面表示も重要な点になる。「長いひらがなを入れた場合、候補がなくなってしまう」。辞書の精度も、単に語彙数を増やすだけでなく、いかに絞り込むかが重要になる。




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[斎藤健二, ITmedia]

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