回転型端末〜液晶が回らなくてはいけなかった理由ドコモの「SO505i」、KDDIの「A5305K」。いずれも液晶が横に回転する“回転型”の端末だ。デザインの奇抜さばかりが目立つが、“回転”の背景には、回らなくてはいけなかった必然性がある
NTTドコモの「SO505i」に続き(4月8日の記事参照)、KDDIも「A5305K」を発表した(4月22日の記事参照)。いずれも、液晶が横に回転してダイヤルキーが現れる、“回転型”だ。
この一見奇をてらったかに見えるスタイルは、いずれも必然性があってのものだ。特にA5305Kを開発した京セラは、「もともと携帯はこう。必然的な進化だ」と言い切る。
携帯電話のデザインのこれまでの流れを概観してみよう。ショルダーホンの時代はさておき、買い切りが始まって一般に普及した頃の携帯電話は、ほとんどがストレート型だった。ダイヤルキーのみにカバーがかかるフリップ型や、折りたたみ型も存在していたが、主流はストレート型。容積と重さをいかに小さくするかの競争が熾烈だった時代だ。 1999年にiモードが始まって以来、デザインは急激に折りたたみ型にシフトしていく。発表会でiモードを率いた榎啓一氏が「NECはiモードのために、折りたたみ型を取っておいてくれた」と話したのは有名な話だ。 榎氏の予言通り、折りたたみ型は急速にスタンダードの座へと駆け上がる。iモードスタート当時、折りたたみ型はNECの「N501i」1機種だけだったが、2001年春から登場した503iSシリーズでは、ムーバ5メーカーすべてが折りたたみ型をリリース。当時の記事を見ると「携帯はすべて折りたたみになるのか?」といった言葉が並んでいる(2001年8月の記事参照)。 もう1つ、忘れてはいけないのが背面ディスプレイの搭載だ。パナソニック(当時は松下通信工業)が投入した「P209iS」がその先駆けといえるだろう。2000年8月の登場したこの機種は、背面に液晶を搭載。当時はまだ「背面液晶」という言葉も一般的ではなかった。
しかし、折りたたみ+背面液晶がスタンダードになるにつれて、各メーカーからは「背面に搭載しなくてはいけない機能が多くてデザインに苦労した」という声が出てくるようになる(2002年9月の記事参照)。さらにカメラまで搭載が必須になっていく中、遠からずデザインが破綻することは明らかだった。 これをどう解決するか。その答えの1つが、回転型だ。 背面液晶が必要になった背景には、閉じている状態でも時間やメールの有無を確認したいという強いニーズがあった。しかも昨今では、背面液晶も大画面カラーが当たり前。ならば、大画面+大きなダイヤルキーという折りたたみ型のメリットを残したまま、背面にメインディスプレイを持ってきてはどうか。 京セラは「大きな画面が表に出ることがトレンド」だと言い切る。回転型は、現代に復活したストレート型。違う言い方をすれば、背面液晶が大きくなって、メイン液晶が消えた形──。単に珍しい形なのではなく、現在の携帯のデザインが抱える問題点を解決しようとした結果、必然的にたどり着いたデザインがこれだった。
「背面液晶を大きくしてほしい」という圧力は、そこかしこにある。カメラの自分撮りニーズは、その最たるものだ。SO505iのように、背面に大きな液晶を搭載すれば、端末を開けることなく撮影が可能だ。 KDDIが押し進めるムービーでも、大きな背面液晶は役に立つ。最新端末は、電話着信時にムービーが再生される「着ムービー」に対応してきているが、これは背面液晶が大きいほど効果が高い。 他方、部品メーカー側でもこの流れを歓迎する面がある。「メインディスプレイの大画面化が進むにつれて、消費電力やコストが問題になってきた。サブディスプレイがなくなる可能性もある」(EDEXに出展したある液晶デバイスメーカー)。 そして、もう1つ。端末メーカーの本音も忘れてはいけない。各社はっきりとは言わないが、折りたたみ型にはNECの特許が多数絡んでおり、できるならば独自のスタイルを確立したいのだ。
回転型はメイン液晶をファインダーに使ったまま、デジタルカメラスタイルで撮影が可能。カメラとの相性がいい
明確な目的を持って誕生した回転型だが、機構的にもこなれていないだけに、課題と考えられる点も数多い。
これらの課題は、当然各メーカーも認識済み。しかし、ユーザーの不安をなくすためには丁寧に説明することが必要だろう。新しいスタイルが根付くかどうかは、ある意味、この2社の端末の出来にかかっているともいえる。
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