携帯電話の形はどこへ向かうのか制約の多い携帯電話のデザインだが、回転型、スライド型、液晶横回転型など新しい形状が現れ始めている。もう1つ、“横向き”形状も今後のデザインを占う上で見逃せない
折りたたみ型一辺倒だった、日本の携帯電話デザインに、回転型という新しい風が吹き始めた(4月28日の記事参照)。 今後、端末デザインのバリエーションはどうなっていくのだろうか。予想される形態は、回転型だけではない。
まず、携帯電話が携帯電話と呼ばれるゆえんはどこにあるのだろうか。「外で電話ができること」というのが、よくありそうな定義だが、カード型PHSとイヤホンの組み合わせや、Pocket PCやPalmデバイスに電話機能を組み込んだものは、あまりケータイとは呼ばない。 機能的に携帯電話とPDAの境目が分かりにくくなっている今、フォームファクター──形状で区別するのが、最も分かりやすいだろう。 片手で持つことができ、一方の先端にスピーカー、もう一方にマイクが付いていて顔に当てられる。これが携帯電話の基本的なデザインといえる。 耳と口の位置から、だいたいの長さが決まり、横幅は片手で持てるサイズ──最大で50ミリ程度に制限される。例えば、横幅がPocket PC並の80ミリに増えただけで、もう携帯電話とは見なされなくなるから不思議だ。そして、どんな多くの機能が入っていても、この形状を守れないと携帯電話としてはヒットしない。 こうした制限の中で、液晶の大型化、大きく押しやすいダイヤルボタン、大容量のバッテリーが求められる。さらに、カメラやメモリカードスロットなどがスペースを必要とする。こうした条件をうまく満たせたデザインが、折りたたみ型だけだった……というのが、これまでの流れだ。
現時点では、背面液晶が必須になるという折りたたみ型の問題点を解決できるデザインが求められている。回転型やスライド型、折りたたみ型だが液晶が左右に回転するタイプ(3月18日の記事参照)が、新しいスタンダードの候補となっている。 しかし、課題となっているのは液晶だけではない。文字入力環境やホールド感の向上も今後、デザイン上の課題になってくる可能性がある。 各種、携帯電話の利用用途の調査では、メールの利用頻度が音声通話をしのぐという結果が出てきているからだ。だが、現在の端末形状は文字入力やキー操作に最適なものとは言い難い。 1つの回答となるのは、Nokia端末のラインアップだろう。「Nokia 3300」や「N-gage」「Nokia 6800」は、通話は従来通りの持ち方だが、キー操作については端末を両手で持って使うことを想定している。
携帯がゲーム機の機能も取り込みつつある点も、この形状の追い風になるかもしれない。両手で持って、左右の親指で操作するインタフェースは、コンシューマゲーム機やポータブルゲーム機では標準的なものだ。 携帯を親指で操作する場合、可動方向は上下よりも左右のほうが大きいと言われる。しかし、前述のような理由により、50ミリ以下に幅が制限されているため、横にはボタンを3つ並べるのが限界だ。端末自体を横向きにしてしまえば、指の上下移動を減らし、スムーズな親指の移動が可能になる。
また片手入力を重視した場合でも、改善の余地はまだある。重量バランスやキー配置などで、キーの打ちやすさが大きく変わってくることは、多くのユーザーが実感していることだろう。これは片手で端末をホールドするのが難しいのが原因の1つだ。 早稲田大学大学院でメディアデザインを研究する南部泰堂氏は、片手で携帯電話をうまくホールドするためのデザインモックを制作した。このデザインでは、親指の付け根で端末をしっかりとホールドでき、親指自体は完全に自由に動かせる。 右利き、左利きで異なる形状にしなくてはならないなどの課題もあるが、多くの携帯電話が薄型・高機能を目指した結果“ボタンが押しにくく”なるなかで、貴重な視点と言えるだろう。
黄色い部分を親指の付け根で押さえる。親指を伸ばしたままで、十字キーからダイヤルボタンまで操作できる。持ち替えの必要や不自然に指を曲げる必要はない いったんデファクトスタンダードになってしまったものは、より優れたものが登場しても変わりにくい──。これはQWERTY配列のキーボードの例を挙げるまでもなく、一面の真理だ。しかし携帯電話のデザインは、まだ固まりきっていない。今後の形状の変化に注目だ。
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