Mobile:NEWS 2003年5月28日 00:03 AM 更新

アプリCPU「Katana」で携帯を狙う

MediaQが発表した、PDA/携帯電話向けのアプリケーションプロセッサ「Katana」は、ハードウェアの2Dグラフィックスアクセラレータ内蔵。高精細化が進む携帯電話市場を狙う

 携帯電話の機能が飛躍的に向上するのに伴って、アプリケーションプロセッサのニーズが急速に高まってきた。日立やテキサス・インスツルメンツ(TI)のCPUを採用する端末が増加する中、新しい方向性で作られたアプリケーションプロセッサが登場する。

 MediaQが発表した「MQ9000」──コードネーム「Katana」は、初めてハードウェアで2Dグラフィックスアクセラレータを内蔵したアプリケーションプロセッサだ。

 ポイントは「パフォーマンスと低消費電力を両立させること」だと、同社日本法人であるメディアキューの花崎勝彦社長は話す。

「いかにARMコアに仕事をさせないか」

 圧倒的なCPUパフォーマンスをウリとするIntelの「XScale」や、高速なDSPを特徴とするTIの「OMAP」とは異なり、「Katana」はハードウェア回路でのアクセラレーションを基本とする。

 KatanaのCPUコアは最大148MHzで動作する「ARM922」コア。しかし、これはハードウェア回路を補完するのが役目だ。ハードウェアのJavaアクセラレーション、64ビットの2Dグラフィックスエンジン、そしてYUV−RGB変換を行うビデオのポストプロセッサ。そういった回路が、Katanaのメインとなる。

 特に2Dのグラフィックスエンジンは同社のお家芸だ。MediaQは、元々PDAなどに向けたグラフィックスアクセラレータが本業。CPUを積まない「Tenerife」は、ソニーの「CLIE」や「iPAQ Pocket PC」に採用されるなど、2Dアクセラレータとして評価が高い。携帯電話でもディスプレイがQVGA化していく中で、2Dアクセラレータの需要が高まると花崎氏は見ている。

 花崎氏は充実したハードウェアアクセラレーション回路があるため、「CPUのマスタークロックはそれほど上げる必要がない。いかにARMコアに仕事をさせないかだ」と説明する。


Katanaシリーズの第1弾となる「MQ-9000」のブロック図。320KバイトのSRAMを、各種のハードウェアアクセラレーション回路が取り巻いている。Katanaでは“低消費電力とパフォーマンス”がセールスポイントだが、消費電力の具体的な値は示されなかった。パフォーマンスは、整数演算や浮動小数点演算についてはクロック相応の値。ハードウェアアクセラレーションの効果についても具体的な数値は現在公開していない

 ブロック図の中央にある、320KバイトというPCのCPUにも匹敵する大容量の内蔵SRAMが、同社製品の特徴でもある。「バッファリング用に処理をするときに、ある程度のメモリ空間が必要だ。パフォーマンスと低消費電力を同時に実現する」(花崎氏)。

 また「DynamiQ」と呼ぶクロック管理システムを使い、動作していない回路のクロックを止め消費電力を削減する。「クロックツリーが複雑になるため作るのは大変だが、本当に必要なところしか動かないチップにできる」(花崎氏)。

3D、MPEG-4……さらなるハードウェアアクセラレーションを追加

 7月に量産を開始する、最初の「MQ-9000」に続き、Katanaシリーズは、続々機能を向上させていく。

 9月に投入予定の「MQ-9100」では内蔵SRAMを480Kバイトに増量。内部にJPEGのエンコーダ回路を搭載し、サブ液晶のコントローラも追加する。

 10月には、従来VGAサイズまでの対応だったカメラインタフェースをメガピクセル対応とした「MQ-9150」をラインアップする予定だ。

 さらに2004年に予定している「Katana2」では、ハードウェアの3Dアクセラレータ、MPEG-4のデコーダ/エンコーダ回路を組み込む構想となっている。

 OSサポートは、現在のところPalm OSとPocket PC。SymbianとLinuxもほぼ準備が終わっている。国産の携帯電話が多用するμiTROMについては、「仕様がメーカーごとに大きく異なるため、OSとは呼びがたい部分も。サードパーティの協力が必要だ」と花崎氏は説明する。

 Katanaがターゲットとする機器は、PDAと携帯電話だ。IntelのXScaleコア「PXAチップ」が強力な地位を占めるPDA市場では、価格と消費電力の少なさをアピールしていく。「(Katanaならば)CPUとグラフィックスアクセラレータが分離しておらず、1つのチップ内でコミュニケーションが取れる。価格も2チップ構成より下げられる」(花崎氏)。

 ただし、市場規模の面からも真に期待できるのは携帯電話への搭載になりそうだ。液晶パネルとのインタフェースの違い(国内の携帯向け液晶パネルはメモリを自前で持っている場合が多いという)から、同社製品を搭載した携帯電話は今のところ海外に限られるが、携帯電話に必要とされる機能を盛り込むことで採用を目指す。

 「液晶の高解像度化や動画対応で、表示パフォーマンスへの要求度合いが上がっているが、他社のアプリケーションプロセッサは表示機能が弱い。Katanaでは、表示については自信を持っている」(花崎氏)。



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[斎藤健二, ITmedia]

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