Mobile:KEYWORD 2003年6月9日 05:50 PM 更新

燃料電池【ねんりょうでんち】

自動車向けとしてより、ノートPCや携帯電話向けの“夢の電池”として開発が急速に進む燃料電池。今回は燃料電池の現状について解説する

 燃料電池は、乾電池などの一次電池や、充電可能な二次電池とは異なる性質を持った、いわば発電装置とでもいうべき電池。「水素」と「酸素」を用いると「水」ができるという「水の電気分解の逆反応」を利用して発電を行う。

 燃料電池が登場したのは意外に古く、1801年(※1802年という説もある)にイギリスの化学者デービーがその原理を発表、1839年には同じイギリスのグローブが初の実験に成功した。1960年代に入ってから、宇宙船の発電装置として本格的な研究が始まり、アポロなどで実用化された後、施設の発電などに転用され現在に至る。

 燃料電池の最大の特徴は、充電を必要としないこと。放電して使えなくなったら、燃料を補給すればいい。つまり、近くに電源コンセントのない海や森林などのアウトドアでも充電するための環境を気にする必要はないし、交換するための予備バッテリも不要になる。充電するための時間がいらないなど、そのメリットは多い。

 燃料電池には、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)、アルカリ型(AFC)などの種類があるが、モバイル製品への搭載が見込まれているのは、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)である。

 従来の固体高分子型燃料電池では、メタノールなどの燃料から、まず改質器で水素を取り出して、その水素を利用していたが、ダイレクトメタノール型燃料電池では直接水素を取り出すため、改質器が不要となり電池本体の小型化が可能になる。

 すでにモバイル機器への利用を前提にした研究も進んでおり、2003年3月東芝がノートPC用の燃料電池を発表している(3月14日の記事参照)。また、ドコモでは「来年か再来年には第1号機が誕生する」と立川社長が記者会見で語っており、デジタル放送の受信機能を搭載した携帯電話での実用化が見込まれている。

 燃料電池は、他の電池に比べるとエネルギー密度が高く、外部には水と二酸化炭素しか出さず、環境にもやさしいという。開発も地球温暖化防止を目的として、太陽発電や風力発電に通じるクリーンなイメージがある。だが、実用化に問題がないわけではない。

 本体の小型化や低価格化、高性能化に時間がかかるのは仕方がないとしても、補充用の燃料はどうやって持ち歩くのか。飛行機や列車の中に持ち込めるのか。どこで販売され、どこで補充できるのか。こぼれたときに危険性や環境への影響はないのか。安全なパッケージにした結果、維持コストが高くなってしまうのではないか。最新技術に対する利用者の不安はつきない。


(図:燃料電池の種類と特徴:http://unit.aist.go.jp/mcfc/FCKind.gifより)

関連リンク
▼ 東芝 ノートパソコン用小型メタノール燃料電池の開発について
▼ 日本ガス協会 天然ガスで発電する燃料電池

[江戸川, ITmedia]

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