Mobile:NEWS 2003年6月20日 09:06 AM 更新

CeBIT Americaレポート
PalmSource、「Sahara」発表

PalmSourceCEOのデビッド・ネーゲル氏は、CeBIT Americaの基調講演で、次期PalmOSを企業向けシステムで生かしていくためのプラットフォーム「Sahara」を発表した。

 PalmSource社長兼CEOのデビッド・ネーゲル氏は、ニューヨークで開催中の「CeBIT America」で基調講演を行い、Palm OSを「企業ネットワークシステムの完全なツール」とするための計画を発表した。

 このPalm OS 5後継のプラットフォームは、「Sahara」と名付けられている。Saharaは各種のビジネスアプリに対応できるフレームワークを内包しており、プラグイン形式のモジュールを追加すれば、多様なアプリケーションに接続することができる。

 基調講演の中で行われたPalm OSのライセンシー各社のデモでは、Palmデバイスを実際にビジネスシステムの中で活用する手法、事例なども紹介された。その中にはこれまでコンシューマー向けに特化して事業戦略を進めてきたソニーの「CLIE」も含まれている。


基調講演を行ったPalmSourceのデビッド・ネーゲル氏

企業ユーザーの声に応える次世代Palm OS

 Palm OSは現バージョンのPalm OS 5で、68000系のDragonballからARMアーキテクチャーへとプロセッサを変更。128Mバイトまでのメモリやマルチタスク、通信機能やセキュリティ機能の強化を、互換性を維持しつつ実現していた。

 ホットシンクによる情報同期や、扱いやすいユーザーインタフェースをベースに、Palm OSは、PDAだけではなくさまざまなデバイスに浸透。日本以外のほとんどの地域では、Palm OSベースのスマートフォンを入手できる。

 こうした中、Palmは企業顧客の声に応えるため、携帯デバイスでビジネスアプリケーションを活用するための「ビルディングブロック」(システムの構成要素)を用意する。ネーゲル氏は2002年、米国においてPalm OSベースの製品が企業向け携帯デバイスの59%を占めたという(2002年、IDC発表のデータ)。

 では、企業が携帯デバイスに求める機能とは何だろうか? ネーゲル氏によれば、ユーザー調査の結果、サポートとメンテナンスの簡素化、マイクロソフトOfficeとの互換性、セキュリティ、企業内のレガシーな情報システムとの接続、クライアントで利用しているOutlookとの互換性、ワイヤレスアクセス機能などの声が上がったという。

 同社はこれらに対して、個別にソリューションを提供するのではなく、プラットフォームとして企業ユーザーに必要とされるOSへと、Palm OSを進化させる計画だ。多種のバックエンドサーバが混在し、多様なアプリケーションサーバが網の目のように絡み合う現代のITシステムに対応するには、対処療法的にアプリケーションへの対応を行うことは不可能だからだ。

 そこでユーザーニーズを満たすために、新しい標準APIを定義してサードパーティーや企業内開発者のアプリケーション開発を促す。

 次世代PalmプラットフォームのSaharaでは、新しく開発するSaharaカーネルの上に、セキュリティ、メッセージング、インフォメーション、マネージメントの各分野に対応する開発フレームワークを定義。アプリケーションはフレームワークに対応したプログラミングを行うことで、各種ビジネスアプリケーション、あるいは管理ツールと接続可能となる。


次世代Palm OSのSahara

 これらフレームワークはプラグインモジュールで拡張可能で、新しいプロトコルに対応して接続性やセキュリティを高めることができる。またAPI自身を拡張することも可能なアーキテクチャーになっているという。

 例えば、セキュリティフレームワークでは、ユーザーが利用する環境に合わせてモジュールを追加することで、新しい暗号化形式や認証方式、あるいは新しい暗号化データベースなどに対応する。またメッセージングフレームワークでは、バックエンドへ接続するためのモジュールや、各種電子メール、インターネットメッセージング、システム管理プロトコルへの対応モジュールが追加可能だ。例えば、Notes/Dominoアプリケーションにアクセスするためのモジュールや、ノベルのGroupWiseにアクセスするモジュールなどが、実際に計画されているという。


プラグイン形式で新しいプロトコルに対応可能なアーキテクチャー

ホットシンクとワイヤレスのシームレスな統合

 これまでのPalmは、企業システムと接続されたPCと情報同期を行い、企業内の情報資産を「切り取って」持ち運ぶという利用スタイルだった。しかし、Saharaではそれとともに、インターネットや無線LANを通じた同期にもプラットフォームとして対応する。

 従来からインターネット経由の情報同期が可能なアプリケーションも存在したが、それらはアプリケーション自身が個別にネットワーク経由での通信手順を実装していた。Saharaでは無線LAN、VPN、携帯電話ネットワークなどに対応し、フレームワークとして標準APIを提供する。このため、開発負担が減り、ユーザーはネットワーク接続環境の違いを意識せず、シームレスに企業内の情報へとアクセスが可能となる。


OSレベルでさまざまな経路の接続性を提供。APIを通じてネットワークの違いを吸収する

 例えばプッシュ型の電子メールアクセスソリューションを提供するVISTOのクライアントソフトウェアが、Saharaのメッセージングフレームワークに対応する。VISTOのMessageXpressは、ネットワーク接続キャリアやネットワークの種類、企業内のメッセージングサーバに依存しない接続性を持つ。

 一方、インフォメーションフレームワークではIBMとの協業が発表された。

 インフォメーションフレームワークは、HTML、HTTP、XHTML、CSS、DOM、cHTML、JavaScript、DHTMLなどの標準に対応するドキュメントサービスで、Palm OS上で動作するアプリケーションにWebサービスへのアクセス機能を実装させることが可能となる。IBMとPalmSourceは共同でWeb Service Toolkitを提供し、PalmからWebベースのアプリケーションに直接アクセスするための環境を提供する。デモではWebサービスに対して無線LANでアクセスするのと全く同じ手順で、携帯電話ネットワークからWebサービスを利用する手順が示されていた。



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[本田雅一, ITmedia]

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