Mobile:NEWS 2003年6月24日 12:56 PM 更新

NTTドコモの対米戦略を待ち受ける「茨の道」(2/2)


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 電波利用効率の向上に伴うコスト低減を、FOMA普及の軸としている同社だが、将来的には当初計画していたような、データトラフィックを増加させるアプリケーションが増加し、携帯電話会社の収入を支えるという。

 2001年、NTTドコモの通信トラフィックの80%が音声通話だったが、これが2005年には50%となり「2010年にはデータ通信トラフィックが全体の70〜80%を占めるようになる」と、小野氏は話す。

 カメラ付き携帯電話や動画送受信のアプリケーション開発が進み、多様な用途で写真や動画が携帯電話を発信源として活用されるようになると予想されるから。それに伴い、携帯電話端末に様々な機能が集まり、そして携帯電話を起点にしてさまざまなデバイスとつながる。音声通話の収入は上げ止まりとなるが、データ通信トラフィックの伸びが携帯電話会社の成長を支えるというわけだ。

 小野氏は興味深いデータも示した。2010年の携帯電話サービスのビジネス環境を予測した数字だ。2010年、日本の人口は1億2000万人、自動車1億台、バイクが6000万台、ビデオカメラとデジタルカメラが5000万台、モバイルパソコンが5000万台など。そのほか、テレビのセットトップボックス、冷蔵庫、自動販売機などへの組み込みなどを合計し、5億7000万台分もの潜在的な市場が存在するという。あらゆるものが携帯電話のネットワークに接続され、そこには携帯電話会社のビジネスチャンスが眠っているというわけだ。

 もっとも、携帯電話ネットワークの守備範囲を広げることも、成長を続けるために必要な事ではあるが、同時に国際競争の中での生き残りももう一つの命題として存在する。ネットワーク利用契約数を増やす方法は、適応範囲を広げることだけではない。サービスを提供する地域や、サービス提供におけるパートナーを増やすことで市場スケールを拡大する方法もある。

 しかし、米国ではNTTドコモの採用しているW-CDMAはサービスされていない。現在、開始されている3GサービスはQualcommのcdma2000(1x)のみ。来年からはNTTドコモが出資するAT&T WirelessがW-CDMAサービスを開始するが、南北アメリカ大陸の採用率でcdma2000が圧倒している背景を考えると、米国内のローミングも含めてどこまでW-CDMAが受け入れられるかは不透明だ(ただし、cdma2000導入で最も積極的な米VerizonがW-CDMA陣営の英Vodafonに買収されたことで、今後勢力図が塗り替えらられる可能性もある)。

 NTTドコモはAT&T Wirelessと共同で、マンハッタンにFOMAのショールームを開設。日本で既に発売されているFOMAのハンドセットを展示、デモンストレーションするという。

 ただし日本と同様の戦略を敷くNTTドコモの手法には疑問も感じる。パーソナルツールとしての色が濃い日本の携帯電話だが、米国ではビジネスツールとしての認識が主だ。欧州はその中間といったところだろう。CeBIT America会場におけるNTTドコモブースは、新型端末を中心にもっとも人気の高いブースだったが、シンプルな端末が多い米国の来場者が物珍しく見ているという雰囲気だ。


好評を博していたドコモブースだが……

 NTTドコモは同様の展示をこれまでにも行ってきたが、来場者個人の関心は引くものの、ビジネスツールとしてNTTドコモの製品群を見るものはいない。CeBITに来場していた関係者は「われわれは日本以外でサービスを行っていないため、海外戦略について具体的な展開を行えない。これが日本と同じ内容・製品しか提示できない理由」と話す。

 世界戦略を進めるi-modeにしても、多くの業界関係者はi-modeをテクノロジーではなく、利用法とビジネスモデルのケーススタディとして捉えている。技術的に先進性があるわけではないi-modeをライセンスするぐらいならば、それぞれの地域で自分たちに利益のあるインフラを作った方がいいというわけだ。

 i-modeの爆発的な普及で、海外の携帯電話会社から畏敬の念を抱かれていたNTTドコモだが、海外投資の失敗を契機に、その「神通力」は確実に弱まっている。その中でどのようなビジネスを、彼らが行っていくのか。国内でのFOMA普及には一応のめどをつけたNTTドコモだが、海外での“これから”にはまだまだ茨の道が残っていそうだ。



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[本田雅一, ITmedia]

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