三洋、地上デジタルTV対応携帯電話を開発 三洋電機は2.2インチ有機ELディスプレイを使った、地上デジタルテレビ放送対応の携帯電話を試作した。新開発のチップを使い90分のテレビ視聴が行えるほか、内部に30分の録画が可能。本体はCDMA2000 1xに対応している。
三洋電機は8月8日、地上デジタルテレビ放送受信機能を搭載した携帯電話の試作機を開発した。ダイバーシティ受信方式とダイレクトコンバージョン方式を採用した「1セグメント受信モジュール」を新開発し、約90分のテレビ視聴が可能。また、128Mバイトのフラッシュメモリを内蔵することで、約30分のテレビ映像の録画・再生を行える。
同社常務取締役の前田哲宏氏は、「モバイル放送の開始を2005年と想定して開発していく」と話す。製造コストについては「5000〜6000円アップに抑えたい」とした。 受信できるのは、地上デジタルテレビの1セグメント放送。動画はMEPG-4のシンプルプロファイル、音声はMEPG-2 AACに対応した。放送サイズはQVGA(240×320)だが、ディスプレイの解像度は176×220ピクセル。表示画面を縦/横切り替えて、広く画面を使うこともできる。 本体はCDMA2000 1xに対応した2.2インチ有機ELディスプレイ搭載のスライド型で、重さは150グラム。11万画素CCDカメラを2個備えている。
今回の試作機の技術的な特徴は、ダイバーシティ受信とダイレクトコンバージョン方式の採用にある。 ダイバーシティ受信は、複数のアンテナを備えて受信した複数の信号を合成する技術。同社技術開発本部の松平盛夫部長は「据え置きテレビと違い、モバイル機器では電波の状況が変化する。ダイバーシティにすることで受信感度が悪いときでも表示できるようになる」と意義を説明する。 試作機には2本のアンテナが付いているが、1本は携帯電話用、もう1本がデジタルTV用。ダイバーシティ受信を行うときにはイヤホンマイク型のアンテナを接続する。 ダイレクトコンバージョン方式は、UHF帯の無線周波数(RF)信号から、ベースバンド信号へ周波数変換する方式のひとつ。中間周波数(IF)信号を介さないで直接周波数変換する。部品点数が減りチップの小型化が可能となる。 試作機では、開発工程の関係でデジタルTV部分と携帯電話部分は切り分けられて搭載された。現状でもTV閲覧中に電話着信があった場合、割り込みが可能だが、将来的には部品レベルでの共用化も進める。 「携帯の高性能化により、TVに使われる部品を共用化できる」と前田氏。具体的には、現在別々に搭載しているアプリケーションプロセッサやフラッシュメモリなどの共用を図る。 なお、試作機はCDMA2000 1xの端末にTV受像器を組み込んだが、携帯電話の通信方式には全く依存しない。前田氏は「将来は全部の携帯電話がTV付きになってほしい」と期待する。
試作機のブロック図とモジュールの概要。OFDM復調部はシンセシスと共同開発した
NECに続き、三洋も試作機を公開するなど、技術的には実現の目処がたってきた。 課題は大きく三つある。ひとつはモバイル向け放送の規格が固まりきっていないこと。試作機ではMPEG-4へ対応したが、特許関係の支払いを巡って(2002年2月の記事参照)放送業界からはH.264を推す声もある(2002年10月の記事参照)。端末メーカー側からすれば「H.264はMPEG-4に比べて回路規模が大きく消費電力や熱の面で不利」である。 二つ目は、端末の供給元である通信キャリアの出方だ。キャリアからすれば携帯でTVを見られることを通信にも結びつけられるならメリットは大きい。しかし地上デジタル放送の双方向データ通信に使うブラウザは、現在携帯電話が搭載しているHTMLベースのブラウザと互換性がなく、放送と通信の融合には解決しなくてはいけない点が多い。 三つ目は消費電力の問題だ。試作機では、960mAhという大容量のバッテリーを搭載することで(通常の携帯は700mAh程度)、TVの閲覧時間を伸ばした。しかしそれでもまだ足りない。 「課題の1番は消費電力。妥当な値に近づいているが、携帯なので1日10分以上の通話と、自宅に帰るまでの待受時間と、さらに60分以上のTV視聴を可能にしたい。さらなる消費電力低減が必要」だと前田氏は話す。 現在のところ大幅に低消費電力化を狙える部品はなく、バッテリー寿命の大幅な増加も期待できない。各部で少しずつ低消費電力化を図るしかない。 前田氏は「(NECの試作機に比べて)消費電力的には有利だと思っている」とコメント。2005年と予想されるモバイル向け地上デジタル放送の開始に向けて、端末メーカー側の技術競争も始まった。
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