Mobile&Movie 第81回
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作品名 | シモーヌ(SIMONE) |
監督 | アンドリュー・ニコル |
制作年・製作国 | 2002年アメリカ作品 |
かつてはアートフィルムの名手として敬われた、映画監督ヴィクター・タランスキー。しかし自身の美意識にこだわるあまり、一般受けしない作品ばかりを撮り続け、映画会社からは厄介者として扱われている今日この頃。
やっとの思いで製作にこぎつけた作品も、主演女優ニコラの降板により頓挫。人気のあるニコラの出演が条件だったため、ニコラのどんなわがままにも付き合って、ニコラの望みはすべて叶えたはずなのに。俳優に振り回されるのは、もうたくさんだとタランスキーは啖呵を切りますが、映画会社の出した答えはタランスキーの解雇。元妻でありプロデューサーでもあるエレインは冷たく言い放ちます。
「映画はビジネスなのよ」
重い足取りで事務所から荷物を運び出すタランスキーの元に、一人の男が訪ねてきます。彼はタランスキーの大ファンで、タランスキーのために作ったコンピュータ・グラフィック・ソフトが完成したと熱く語ります。天才エンジニア、ハンクの風変わりな容貌に、タランスキーはストーカーと勘違い。話半分に聞き流して、追い払ってしまいます。
それから一週間後、タランスキーの元に、ハンクが作成したコンピュータがやってきます。ハンクの残した言葉を頼りに、おそるおそる起動してみると、スクリーンに現われたのは絶世の美女。とてもCGとは思えない完成度にタランスキーは呆然。“TEARS”ボタンを押せば涙を流し、タランスキーの望むように動き、演技するのです。このCGこそ、タランスキーが求めていた理想の女優。タランスキーは、このCGソフトを駆使し、ニコラの代わりにシモーヌを主演女優にして映画「Sunset Sunrise」を完成させます。
CG女優シモーヌは、その完璧な美貌と素晴らしい演技で、初主演映画が公開されるや否や一躍人気者に。マスコミは彼女のプライバシーを知りたがり、取材合戦はヒートアップ。さらに「Sunset Sunrise」で共演した男優は昨日シモーヌに会ったと言い出す始末。タランスキーは、実体のないシモーヌを何とかごまかそうとします。そこで、自分の携帯電話のボタンをポケットの中で押して、呼び出しのベルを鳴らし
「ハロー、シモーヌ」
とひとり芝居をしてみせます。受話器を抑え
「シモーヌからの電話だ」
と周囲に目配せ。
「今、誰と一緒だと思う?」
シモーヌと電話中に見せかけ、周りにはシモーヌのメッセージだけを伝えたのです。その電話も、実はマスコミに盗聴されていて
「相手の声が聞こえない!」
と疑われたのですが、高度な盗聴防止装置を使っているに違いないと勘違いされ、万事休す。タランスキーの迫真の演技に、皆騙されたのでした。
映画の予想以上の成功に気をよくしたタランスキーは、シモーヌ主演の第二作に取りかかります。元妻エレインは次回作を全面的にバックアップするから、シモーヌに会わせてと詰め寄ってきました。エレインは、シモーヌとタランスキーの仲も疑っている様子。CG相手に恋愛関係が生まれるはずもないのに……。その疑いを晴らすべく、タランスキーが考えた作戦は、またしても携帯電話を使い、シモーヌになりすますというもの。エレインの携帯に電話して、仕事だけの関係であることを証明したのでした。
こうして、シモーヌの秘密を守るために、タランスキーはどんどんドツボにハマっていきます。神秘的なイメージとの相乗効果でシモーヌの人気はうなぎ登り、マスコミの追跡は激化するばかり。タランスキーはマスコミ、そして観客を、いつまで騙し続けることができるのでしょうか!?
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