Mobile:NEWS 2003年10月23日 08:51 PM 更新

ARMの最新セキュリティと省電力技術に迫る

インテルのXscaleにソニーのHandheld Engineと、最近注目の携帯向けプロセッサには、必ずといっていいほどコアが組み込まれている「ARM」。その影響力は、ひょっとするとインテルよりも大きいかも。そんなARMの最新技術を紹介するブリーフィングが日本で行われた。

 前回行われたARMの最新技術ブリーフィングでは、2002年に発表されたARM11のアーキテクチャがメインテーマになっていたが、今年は、そのARM11ファミリーモデルの上位モデルで先日のMicroprocessor Forumで紹介されたARM1176JZシリーズと、組み込み特化型モデルのARM1156シリーズがメインテーマとして取り上げられた。


ARM1176JZ-Sのブロック図。0.13マイクロプロセスに最高動作クロック550MHzは、これまでのARM1136系と同じ

 昨年行われたブリーフィングでは、ARM11コアに実装される8ステップのパイプライン構成やSIMD命令をサポートしたARM v6命令セット、オプションで用意される浮動小数点コプロセッサなどの新しいアーキテクチャが紹介されていたが、今年のブリーフィングの冒頭では、ARM11ファミリーのARM1136J-SやARM1136系がすでに9社とライセンス契約を提携し、順調に立ち上がっていることをアピールしていた。

 今年のブリーフィングはARM11コアの構成や機能、パフォーマンスから、先日発表されたARM1176系、ARM1156系に実装された新機能の解説に焦点を移して進められた。

 ARM1176JZシリーズは、従来のARM1136系プロセッサコアに、セキュリティ機能の「TrustZone」や省電力制御機能「Intelligent Energy Manger」(IEM)が新たに実装されている。また、高速データ転送を行うAMBAは、これまでのAHBやAPBに加えて新しいプロトコル「Advanced extensible Interface」(AXI)がサポートされた。

 TrustZoneは、Windows CE.NETやLinuxといったOpenOS向けプロセッサラインアップであるARM1176系で、セキュリティを強固にするための機能だ。

 多機能高性能の方向に進化していくOpenOSは、OS自体が複雑になるにしたがってセキュリティ問題が深刻になってきている。TrustZoneでは、OSを内部の重要なデータやコードから切り離すことで、複雑なOSが持っているセキュリティ問題に影響されることなく、システムの安全性を高めるようにした。

 TrustZoneでは、ソフト側にセキュリティ権限のチェックコードをコーディングさせ、コアに対して発行するシグナルコールに含まれるチェックコードを判別して、ハードウェアによって、OSがアクセスできる領域を切り替えるようになっている。


TrustZoneの機能によって、セキュリティ権限とアクセス可能ユニットの切り分けが行われる

 ARMの説明によると、ARM1176シリーズに実装されているのは、チェックコードからアクセスできる領域を切り替える仕組みを持ったハードウェアの部分。TrustZoneを有効にするには、ソフト側でチェックコードを組み込む必要があるわけだが、その部分は、ARMではなくシステムデペロッパーでどのように切り替えていくのか判断してコードを実装する。

 AMBA 3.0から新たにサポートすることになったAXIプロトコルは、浮動小数点コプロセッサを搭載したARM1176JZF-Sなどの高速処理を求められる高速なコアとキャッシュ間のバスで使われるもの。ABMA 3.0ではAHBとAXI、APBとAXIのブリッジ機能もサポートされている。この場合、AHB、APBを利用するよりも高速なデータ転送が可能になるとARMは説明している。

 省電力管理機能については、前回のブリーフィングでもPrimeXsysプラットフォームに組み込まれたIntelligent Energy Controller(IEC)とSystem Controllerの組み合わせが解説されているが、今回ARM1176系で実装されたIEMは、よりハードウェアに近い部分に制御用の「クランプ」を組み込み、駆動電圧や動作クロックを動的にコントロールするもの。


IEMが制御するARM11コア内部のユニット。RAMやコア、SOCごとに「Clamp」が挟み込まれ、電力とクロックを個別に制御する

 ソフトが要求する処理負荷にあわせて、電圧やクロックを可変させるのはIECと同じだが、IEMではARM1176系コアの各ユニットごとに異なる電圧とクロックを供給できるようにしている。ARMは、IEMによってCPUのパフォーマンスは25%まで抑えることができ、システムトータルのバッテリー駆動時間は25%延ばすことが可能になった、と説明している。

 「処理負荷にあわせて必要になるパフォーマンス」は、OSに実装されているパフォーマンス監視機能で収集された、タスクと処理能力関係を蓄積したテーブルを利用して将来予測を行う。過去の実績からタスクで必要になるパフォーマンスを判断するアルゴリズムが実装されており、新しいタスクが立ち上がってからマイクロ秒単位で新しいパフォーマンスに対応できる電圧、もしくはクロックに切り替える。

 ARM1156系は組み込み用に特化したプロセッサで、ARM1156T2-Sと浮動小数点コプロセッサを組み込んだARM1156T2F-Sの2モデルが用意されている。


ARM1156T2F-Sのブロック図

 ほかのARM11ファミリーと同じく、0.13マイクロプロセスを採用し動作クロックの最大は550MHz、高速のAXIをサポートするARM1156系だが、パイプラインはARM1136系やARM1176系よりも1ステージ多い9ステージが実装されている。

 微細なプロセスで製造され、かつ高速で動作する最近の組み込み型プロセッサでは、演算処理中にスタックされたデータが壊される現象が問題になっている。これははコア内部に飛び込むアルファ線が、インストラクションキャッシュデータを破壊するのが原因であるが、ARM1156系では、キャッシュメモリの核になる部分を分離し独立させた「メモリ保護ユニット」を採用し、このエラー発生を削減している。

 また、キャッシュ用コアメモリチップの小型化のために「Thumb-2」命令セットを新たに採用した。

 これは、16ビット命令と32ビット命令を組み合わせる技術。同じ処理を行う命令コードが短くなるおかげで、多くのキャッシュ命令の収納が可能になった。

 ARMは、Thumb-2のおかげで既存の16ビット命令と比べると処理速度は25%アップし、ARMのコアサイズは26%削減できるとしている。


ARMがThumb-2によるパフォーマンス向上をベンチマークで検証したデータ。Thumb-2と比べても25%程度の改善が見られた

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[長浜和也, ITmedia]

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