Mobile:NEWS 2003年10月27日 08:57 PM 更新

FeliCa搭載で携帯はこうなる

「携帯にSuicaやEdyが内蔵」──。簡単にいうとモバイルFeliCa携帯内蔵の意味はこうだ。しかし、FeliCaチップが複数のアプリケーションを独立して利用できることを考えると、これはiモードに続く、新しいサービスプラットフォームの誕生ともいえる。

 ドコモとソニーが新会社を設立し、携帯電話に非接触ICチップ──モバイルFeliCaを搭載していく計画を明らかにした(10月27日の記事参照)。携帯電話にFeliCaが搭載されることで、何が可能になるのだろうか。

電車の改札、買い物、会員証……

 FeliCaを搭載した携帯電話を、駅の改札口に近づけると切符代わりにゲートを抜けられる。すると、駅周辺のお勧め情報が画面に表示。

 案内されたカフェで食事をし、会計も携帯電話でOK。Edy対応のレジに携帯電話を近づければ、これだけで支払いも終わる。

 続いて映画館だ。携帯のFeliCa内に保存された映画のチケットを、1枚、携帯同士を近づけるだけで友人の携帯電話に転送。駅と同じようにゲートを抜けたら、席までの案内図が画面に表示される……。

 これはドコモとソニーが示した将来像だ。携帯電話にFeliCaが内蔵される2004年の夏以降、こんな世界が実現するという。

 FeliCaはソニーが開発した非接触ICチップのひとつ。JR東日本の「Suica」やビットワレットの「Edy」に使われていることで有名だ。簡単にいえば、携帯電話がSuicaやEdyの代わりに使えるようになる。


モバイルFeliCaを利用するiアプリのサンプル。ドコモ作成のサンプルのため、電子チケットや電子財布がひとつのアプリケーションにまとまっているが、実際にはサービスの各提供会社が個別のiアプリを用意する。モバイルFeliCaの利用自体にはiアプリはいらず、携帯をリーダーにかざすだけで利用できる


モバイルFeliCaの未来像としては「電子チケットのやりとり」が紹介されたが、試験端末など当初の端末ではモバイルFeliCa同士の通信は行えない。FeliCaはリーダー/ライターと呼ばれる専用の機器とのみ通信可能で、単体同士の通信は基本的に想定していないからだ。ただし、リーダー/ライターはカードへの搭載は難しいが、携帯電話には搭載できる可能性が高い。今後の展開に期待したい部分だ

アプリケーション次第で、用途が変容〜iモードに続くサービスプラットフォーム

 FeliCaの特徴は、ひとつで複数の用途に利用できることだ。例えば、電子マネーであるEdy機能と社員証などを一つのFeliCaチップに入れて使うことができる。これらのアプリケーションのデータはFeliCaチップの中で独立して管理されており、各社が独自のアプリケーションを開発して入れ込むことができる。


Suicaなどに使われているFeliCaカードの内部。モバイルFeliCaでも、携帯電話の中にFeliCaチップとアンテナが入っているという

 今回ドコモとソニーの発表では「モバイルFeliCa」によって何ができるのか、具体的なことには触れなかった。これは、ドコモやソニーはFeliCaプラットフォームを携帯に搭載するだけで、FeliCaアプリケーションを用意するのはサービスプロバイダとなるからだ。

 「ドコモがサービスを選ぶわけではなく、プラットフォームを提供する。その結果、来年夏、多くのサービスが出てくればいいと思っている」(iモード事業部本部長の榎啓一氏)

 つまり、JR東日本がSuicaアプリケーションをモバイルFeliCa向けに用意すれば“携帯がSuicaに”なるし、ビットワレットがEdyアプリケーションを用意すれば“携帯がEdy”になるわけだ。同じように、ある会社が「社員証アプリケーション」を用意すれば、“携帯が社員証”代わりに使えるようになる。

 FeliCa搭載で何ができるかは、サービスプロバイダがどんな機能を用意するかにかかっている。ちょうど、iモードがプラットフォームを用意しただけで、壁紙ダウンロードやゲームダウンロードなどのサービスはコンテンツプロバイダーが用意するのに似ている。

どんなサービスプロバイダがモバイルFeliCaにアプリケーションを提供するかは明らかでないが、ソニーは「ビットワレットはサービス事業主体のひとつ。ただしサービス開始時には、当然のようにEdyのようなサービスは入れていきたい」と話している

 では、FeliCaチップにどうやってアプリケーションをインストールするのか。そのカギは、50xシリーズやFOMAが備えるセキュアな環境──iアプリにある。FeliCaチップには、iアプリからのみアクセスできるようになっており、iアプリを通じて新しいアプリケーションを追加したり、アプリケーションのデータを閲覧したり(Edyに電子マネーがどのくらい残っているのか携帯画面でチェックするなど)、できるという。

 「非接触ICを携帯電話に載せることによって、何を買ったかを画面で確認したり、ネットワークからバリューをダウンロードしたりできるようになる。単にカードを携帯に貼り付けるのではない」(ドコモiモード企画部長の夏野剛氏)


 なおモバイルFeliCaチップのメモリ容量は確定しておらず、「複数のカード(アプリケーション)が載る、容量にする」(ドコモ)と言うに留めている。しかし、少なくともEdyとSuicaを入れて、さらに電子チケットや社員証として使える容量にはなるだろう。

赤外線とも併用〜ただし、FeliCaなら“かざすだけ”

 iアプリからデータを送受信して、決済などを行う……これだけ言うと、504iシリーズから搭載している赤外線でも可能だ。では、赤外線とFeliCaの違いは何なのか。

 ドコモの夏野氏は「かざすだけか、起動するか。赤外線では、チケットを使いたいとか銀行カードを使いたいとか選ばなくてはいけないが、非接触ICではかざすだけでいい」と説明する。

 赤外線の場合、ユーザーがまず対応するiアプリを起動して「赤外線送信」ボタンを押す必要があった。モバイルFeliCaでは、携帯をFeliCaのリーダーにかざすだけで処理が完了する。iアプリがその都度起動するわけではなく、リーダーとのやり取りはFeliCa内のアプリケーションが高速に行うためだ。

 極端な話、携帯電話の電池が切れてもモバイルFeliCaは利用できる。FeliCaチップは外部からアンテナを介して電力を受け動作するからだ。

 逆に、携帯電話を落とした場合、モバイルFeliCaの内容はどうなるのか。チャージされている電子マネーなどはもちろん使えてしまう。ただし、電話回線を止めれば“新たにチャージ”することはできなくなる。夏野氏は、回線を止めたらFeliCaも使えなくなる仕組みも将来的には考えていきたいとしている。

「iモード人生の締めくくり」と夏野氏

 モバイルFeliCa搭載は、iモード立ち上げ当初から携わってきた夏野剛氏にとっても「iモード人生の締めくくり」と呼べるものだと言う。

 1997年に夏野氏がiモードの構想を打ち立てた中で、その最後に位置するのが“リアルとの連動”。赤外線や2次元コード、PalyStationとの連携など、さまざまなリアルとの連動を進めてきたiモードだが、その総決算がモバイルFeliCaだともいえるのかもしれない。




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[斎藤健二, ITmedia]

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