Mobile:NEWS 2003年11月14日 01:19 AM 更新

“ナノテク”で携帯電話の液晶を「鮮明」かつ「省電力」に

モバイル液晶ディスプレイに求められる「鮮明さ」と「省電力」。この相反する課題をクリアする技術をオムロンが開発した。省電力のフロントライト方式で、バックライト並みの明るさや高コントラスト性を確保するという新しいフロントライト作製技術とは?

 バックライト並みの明るさや高コントラスト性を持つフロントライト方式ができれば、「鮮明さ」と「省電力」という従来のモバイル液晶ディスプレイの“二律背反”を克服できる――。この課題に挑戦したのが、オムロンがこのほど開発表明した新しいフロントライト作製技術だ。

 携帯電話やPDAなど小型モバイル機器の液晶ディスプレイには、バックライトを使った半透過型液晶(用語参照)や透過型液晶(用語参照)が使われるケースが多い。特に携帯電話は、カメラ付きや動画機能搭載モデルの普及で、従来以上に明るくクリアな液晶画面のニーズが高まっていることから、屋内ではバックライトからの強い光で鮮明な画像が得られ、屋外でもマジックミラーで外光を利用できる半透過型液晶が主流となっている。

 省電力性や明るい屋外での視認性の高さから、もともとモバイル機器向けの液晶として期待されていたのが外光を使った反射型液晶(用語参照)だ。外光を十分に取り入れられない屋内や暗所でも、外光代わりにフロントライトを装備することで対応できる。

 だが、フロントライト方式は低コントラストで不鮮明な画像となってしまったり、光が均等にならず液晶がムラになって見えたりと、視認性の面で透過/半透過型に大きく劣ることから採用する携帯電話はこれまで少なかった。

ナノテクノロジーを活用して高鮮明&省電力に

 オムロン技術本部先端デバイス研究所で新たに開発した液晶フロントライト作製技術は、バックライト方式で定評のある導光板技術を応用したマイクロプリズムアレーと、ナノレベルの超微細なプリズムアレーとを組み合わせて、フロントライト用のアクリル導光板に使う「ハイブリッド集積技術」を採用。これにより、従来のフロントライトに比べてコントラスト比が3倍に向上し、明るさもバックライト方式並みの輝度(100カンデラ/平方メートル)を達成した。

新開発フロントライト他社フロントライト(従来方式)他社バックライト
消費電流20mA30mA60mA
コントラスト比55:115:150:1
表示輝度100cd/u30cd/u100cd/u

 「同じコントラスト比と輝度のバックライト方式と比べた場合、消費電力は1/3で済む。バックライト並みの消費電力を使えば、より高輝度な製品も作ることができる」(同社)


新開発フロントライト(左が省電力タイプ、中央が高輝度タイプ)と、従来方式のフロントライト(右)。右の従来方式と左の省電力タイプはほぼ同じ消費電流(20〜30mA)ながら、左の方が表示が鮮明になっている。中央の高輝度タイプはバックライト方式並みの消費電流を使った仕様で、200カンデラ/平方メートル以上の高輝度が得られているという

 この劇的な性能アップを、たった1枚のパネルだけで可能にしている。その仕組みとはこうだ。

 同社では、バックライトに設置した光源(LED)からの光を効率よく制御する独自の「ベクター放射結合理論」で、液晶画面をより明るく表示する技術をすでに開発しており、同理論を生かした高効率タイプの導光板が、多くのバックライト方式携帯電話に採用されている。

 「この導光板技術をフロントライトに生かしたのがマイクロプリズムアレーなのだが、このままだとLED光や外部光(太陽や照明)などフロントライトに入り込む光が、フロントライトの上面や下面で一部反射してノイズ光となる。液晶画面からの本来の光(反射光)とこのノイズ光とが干渉し合うため、画質(コントラスト)が落ちる現象を招いていた」(同社)


同社導光板技術を使った反射型液晶用フロントライトの仕組み

 ノイズ光は、屈折率が違う2つの物質の界面で発生する。逆に考えれば、光の波長の半分以下という非常に微細なプリズムアレーを表面に形成できれば、ノイズ光を低減できるという理論は以前から知られていた。

 同社はこの理論を応用して、フロントライト表面に200ナノメートルという超微細のナノプリズムアレーを形成。これは携帯電話サイズ(2インチ前後)のパネル上で換算すると約5000億個の凹凸があることになる。光の三原色の中でもっとも短波長の青色光が波長400ナノメートルなので、ナノプリズムアレーのサイズはちょうど半分になるわけだ。


大きさ3マイクロメートルのマイクロプリズムアレー(左)と、200ナノメートルのナノプリズムアレー(右)

 この表面加工によって、フロントライトの界面で発生するノイズ光を抑制し、高コントラストでクリアな画像表示が可能になった。このようなサイズの大きく異なる2つプリズムアレーを同一パネル上に一体形成する技術は、同社が有する金型を使った複製技術によって可能にしている。

 「パネル上に5000億個もの凹凸がある超微細形状も、複製技術を使うことにより高精度かつローコストで量産できる」(同社)


ナノプリズムアレーを形成したパネル(左)と、従来方式のパネル(右)。上部からの強い照明光で、従来パネルは表面が反射してしまっているが、ナノプリズムアレーの方は下の文字がハッキリ読み取れる


 新しいフロントライト作製技術を使ったモジュールは、2004年後半から量産される予定。「液晶ディスプレイメーカーとのビジネスになるので、量産スケジュールは多少前後するかもしれない。技術的にはほぼ確立しているので、ニーズが高まればスケジュールが前倒しになる可能性もあるだろう」(同社)

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[西坂真人, ITmedia]

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