Mobile:NEWS 2003年11月19日 07:03 PM 更新
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無線ICタグ、普及の準備は整った?

Wal-Martや米国政府の主導でサプライヤー各社はRFIDシステム導入に着手し、コストなどの問題への取り組みも進んでいる。だが広範な採用に至るには、依然克服すべき問題がある。

 RFID(無線ICタグ)は突然、ハイテクバブル後の時代に最も話題にされるトレンドの1つとなった。大手小売企業や米連邦政府が関心を寄せ、推進しているからだ。

 RFIDはもともと、第二次世界大戦中に対空砲射撃手が敵味方を識別するのを支援するために開発された。この技術は現在、製造業者や小売業者が工場から店舗の棚まで製品を追跡する用途に採用されつつある。

 RFIDシステムは2つのコンポーネントから成る。1つは紙のように薄い1インチ(2.5センチ)程度の無線タグで、荷運び台やケースに取り付けられ、いずれは個々の商品にも付けられるようになる。もう1つは、ピザの箱程度の大きさのパネル型の読み取り機だ。これはタグから送られた信号を受信して変換し、そのデータをネットワークに送る。

 小売業者はRFIDはバーコードに取って代わるものであり、サプライチェーンの効率を大幅に改善し、商品の万引きや紛失を減らすと信じている。さらにほかの業界では、タグと読み取り機をさまざまな作業に使うことを考えている。

 病院では、RFIDを薬剤の管理や機器の追跡の手段と考えている。消防局は、指揮官が消防隊員の位置情報を瞬時に把握できるシステムを思い描いている。

 つい最近まで、ほとんどのIT部門はRFIDのポテンシャルを認識しつつも、この技術の普及を3〜5年遅らせると思われる問題もいくつか目にしていた。だが今、技術者は信号の干渉や標準の不在、タグのコストが高くつくといった問題に対処するべく、懸命の取り組みを進めている。

Wal-Martの挑戦

 RFIDラッシュを引き起こしたのはいったいどこの企業なのだろうか? その答えを聞いたら意外に思うかもしれない。この企業の本拠地は世界のハイテク首都であるカリフォルニアでも、ワシントンでも、ニューヨークでもない。

 その企業とは、アーカンソーに本社を置く大手小売業者Wal-Martだ。Wal-Martの店頭では青いベストを着た店員が笑顔で買い物客を迎えているが、その裏側の倉庫や配送センターではRFIDを使って在庫管理を自動化している。同社は、サプライヤーやITベンダーもこの動きにならうと強く主張している。

 Wal-Martは向こう数年で、自社の追跡システムをRFIDに移行するために最大で30億ドルを費やす可能性がある(11月8日の記事参照)。だが、かねてから一部のアナリストは、Wal-Martはこれにより最高で年間80億ドルを節約できるかもしれないと見積もり、投資するだけの価値はあると主張している。

 Wal-Martは最近サプライヤー上位100社に対し、2005年までに同社に納入する商品のケースと荷運び台すべてにRFIDタグを取り付けるよう指示した(ただし小規模なサプライヤーにはもう1年の準備期間が与えられる)。それができなければ数千の店舗から締め出されるため、サプライヤーは急いでこの指示への対応を進めている。

 「3〜4カ月前にRFIDシステムの準備はできているかと聞かれていたら、かなり慎重に答えていただろう」とカミソリメーカー大手Gilletteで20人のRFIDチームを率いるジャムシェド・ドゥバッシュ氏は語る。「しかし、このWal-Martの挑戦により、同社がRFIDに向けて動いており、当社もその恩恵にあずかるために取り組んでいかなくてはならないということが非常に明白になった」

 ドゥバッシュ氏によると、GilletteはWal-Martの期限に合わせてRFIDを導入するという。同社は現在、マサチューセッツ州デベンスにある40万平方フィート(約4万平方メートル)の北東流通センターでRFIDシステムを試験導入している。

 同社はRFIDの導入により、不完全な注文、商品の配置ミス、万引きなどの問題を避けられると考えている。万引きの問題は、業界全体に最高で年間推定400億ドルもの損失をもたらしている。さらに個々の商品まで追跡できるようになれば、その情報はサプライヤーが店頭ディスプレイや在庫レベルをより的確に判断する役に立つ。

 Proctor & Gamble(P&G)はRFIDのことを学ぶために、Gilletteの倉庫を視察した。ライバルである両社にとっては「前代未聞の」出来事だ。だがインターネットと同様に、RFIDを採用するサプライヤーと小売業者が増えるほど、採用コストは低くなる。

 例えば、RFIDタグの単価は数ドルから10セント程度に下落している。業界観測筋は、タグが1個1セント程度にまで値下がりしなければ、採算が取れるレベルになるにはならないと指摘する。現在、Philips Semiconductor、Intermec、Tycoの一部門など複数の企業がRFIDタグを手がけている。

 小売業界以外では、米連邦政府もRFIDを費用削減の手段と考えている。政府機関もサプライヤーに対し、RFIDシステムを用意するよう指示している(10月25日の記事参照)。

チャンスを狙うIT企業

 Wal-MartのRFID対応令により、少なくとも100社の大手企業(主に消費者向け商品メーカー)がRFIDシステムを購入し、導入することが保証されている。大手IT企業は仮説の領域を脱して、これらの利益になりそうなプロジェクトに加わる方法を模索している。

 IBMはコンサルティング部門で、Kimberly Clarkなどの顧客向けに、RFIDの必要性を評価し、ベンダーの選定やシステムの導入を支援するサービスを設けている(9月16日の記事参照)。

 「Wal-Martに商品を供給している顧客から、何をどう使えばいいのかという質問が来ている」とIBMの広報担当ジャン・ウォルブリッジ氏。

IBMはPricewaterhouseCoopers(PwC)の買収により、RFIDコンサルティングでは好位置に付けているとウォルブリッジ氏は語る。RFIDコンサルティングチームには、この分野の経験を持つメンバーも複数いる。

 IBMのほかには、Sun Microsystemsが来月、ダラスに試験センターを開設する。この試験センターはWal-Martと同じ技術がベースになるため、サプライヤーはRFIDシステムをテストして、Wal-Martの仕様に確実に合わせることができる。Sunによれば、顧客は同社のJava Enterprise Softwareと併せてRFID技術をテストすることもできるという。

 Acsisも、自社のRFID研究所を拡張して、サプライヤーがWal-Mart仕様に準拠できるよう支援している。同社はSAPのERP(エンタープライズリソースプランニング)ソフトを使って、企業のサプライチェーンとビジネスプロセスを自動化している。

 半導体メーカーのIntelは、研究開発企業ThingMagicと協力してRFID読み取り機の製造に当たっている。

 タグと読み取り機、テストと導入に加えて、RFIDが大規模に採用されれば新たに大量のデータが発生し、これらのデータを取得、格納、分析する必要が出てくる。これはハードメーカー、ソフトベンダー、ストレージ企業にとってビジネスチャンスとなる。

解決すべき問題

 それでも、RFIDには問題がないわけではない。Wal-Martの大規模プロジェクト以外でもこの技術の採用が広まるには、そうした問題を克服する必要がある。

 ThingMagicのベルント・シェーナー氏は、通信範囲と干渉の2つが問題だとする。現行のRFIDタグは読み取り機から6〜8フィート(1.8〜2.4メートル)離れると通信できない。また、金属や包装で信号が遮断されたり損なわれることもあると同氏は説明する。

 新しい技術の常として、ベンダーに依存せずに、どの会社のタグでも顧客の読み取り機に対応できるよう標準を確立する必要もある。シェーナー氏は、国外に商品を出荷する企業が互換性問題を避けられるよう、各国の周波数帯の問題にも対処しなくてはならないだろうと指摘する。

 Gilletteのドゥバッシュ氏は次のように語っている。「RFIDの採用は順調に進んでいる。まだこの分野に関わっていない人は、慌てて飛び込んでくるだろう。これらの問題を解決する企業を立ち上げる大きなチャンスがあるからだ」

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