Mobile:NEWS 2003年12月3日 02:59 AM 更新

野田幾子のFOMA日記
コンテンツプロバイダさん、お願い!

連日のように目にする「FOMAでテレビ電話」のCM。その甲斐あってか、FOMAも11月には契約数が150万を突破した。しかしその勢いほどにはiモードコンテンツの対応が進んでいないのも事実。対応が遅れる原因はどこにあるのだろう。

 電車の中や道行く人にFOMAユーザーをよく見かけるようになってきた。特に私の使っている「N2102V」(7月31日の記事参照)が目につく(ひいき目かしら)。そんな中、FOMAの契約数が150万契約を突破したというニュースが飛び込んできた(11月21日の記事参照)。「よくぞここまで……」と感慨深く聞いたのだが、ひとつ気になることがあった。それは、あいかわらずFOMAに対応していないiモードコンテンツが多いことだ。

 NTTドコモにFOMA非対応コンテンツの数を聞いてみると、10月末時点で約500サイト、ほぼ全ジャンルにFOMAへ対応していないコンテンツが存在するという。504iで動いているiモードコンテンツが、どうして同じ504iベースで作られているはずのFOMAになかなか対応しないのか。これはコンテンツプロバイダに直接聞いてみるしかない!

FOMAでは熱帯魚を飼えないなんて……

 訪ねてみたのは、「ロードランナー」「Superボンバーマン」といったミニゲームを配信する「着信☆あぷり♪」などでおなじみのゲーム会社ハドソン。SuperボンバーマンがFOMAに対応していないのも残念なのだが、何よりケータイ画面の中を熱帯魚が泳ぐ「i・アクアゾーン」(2002年5月21日の記事参照)がFOMAで楽しめないのが悲しかったのだ。


ケータイで熱帯魚を飼育できるi・アクアゾーン。PC版でも熱烈なファンだったため、いつFOMAに対応するかとワクワクしていたのだが、現行FOMAには対応予定がないそうだ。ガッカリ。次期FOMAには「対応するかも」(ハドソン)

 「FOMAで熱帯魚を飼いたいし、エサをあげてみたい! どうしてFOMAユーザーを邪険にするんですか!?」などという傍若無人な質問に丁寧に答えてくれたのが、ハドソン モバイル事業本部の寺田幸司氏と橘吉貴氏だ。


モバイル事業本部 事業推進部 事業推進課マネージャーの寺田幸司氏(左)と、同販売促進課の橘 吉貴氏。現在はドコモ中心だが、今後は他キャリア向けコンテンツ配信にも本腰を入れる。海外展開にも積極的で、香港、韓国、ヨーロッパなどへの進出も果たしている

 「新機種が発売されたときに、まずは『どのシリーズに対応させるか』というのを考えます。基本的には全シリーズ、全機種に対応させたいけれども、例えば『505i/iS』『FOMA』のどちらが台数が出るか、また実際出ているかを考えると505i/iSに軍配が上がる。どうしてもそちらが優先になるんですね」

 むむ、やはり巷の圧倒的な人気には勝てないのね……。ちなみに待ち受けアプリのi・アクアゾーンは、「505i/iSシリーズに先に対応させていこう」という方針は決まったものの、画面サイズがQVGAになったため、これまでの4倍の大きさに描画する必要がある。しかもi・アクアゾーンは2Dで描画されているので、魚が泳いでいる様子や水中の泡などをアニメーションとして成立させるために、パラパラ漫画の要領で一枚ずつ絵を描き直す作業が発生するのだ。なんでもこの作業に半年近くかかったらしい。

 さらにFOMAには、別の点でもクリアしなければならない問題があった。FOMAとPDCはネットワークが異なるため、公式サイトのIDを再度取得し直し、移植しなければならないのだ。


左がFOMA、右がムーバのiモードゲームカテゴリー。一見同じように見えるムーバとFOMAのiモードメニュー画面だが、PDC版の公式サイトIDはそのまま使えないということで、FOMA対応に二の足を踏むコンテンツプロバイダもあるのかもしれない。

「ミラクルくえすと」をやるためにFOMAを買う人、続出?

 「iモードコンテンツが現行FOMAに、すぐにでも対応できる状況か」ということについてはグレイな雰囲気が漂っているが、ハドソンには「このゲームがやりたくてFOMAに乗り換えた人が多数存在する」という、(失礼ながら)珍しいコンテンツが存在する。それはロールプレイングゲームの「ミラクルくえすと」だ。


ユニークなのは、自分がネットワーク上にいなくても勝手にパーティを作って勝手にお金を稼いだりアイテムを取ってきてくれるところ。人見知りが激しく勝手気ままに動き回りたい私は、リアルタイムで会話したり時間を合わせてパーティを組まなくてもいいという点がとても気に入った。私自身も取材のためちょっと試してみるつもりが、ハマってしまったクチ。心底、パケット代が心配

 日本各地をモデルとするフィールドを動き回り、冒険に出かけては経験値を上げアイテムをゲットする──という、ロールプレイングの王道ともいえるゲーム。全機種に対応する「ミラクルくえすと」と、FOMAや505iシリーズをはじめとする上位機種に対応した「ミラクルくえすと2」の2バージョンが配信されている。ミラクルくえすと2では、キャラクター同士が出会って酒場へ伝言を残し合うことで友達になり、パーティを組んで出かけられる。親密度が上がれば結婚したり、子供を産んだりするイベントも発生するのだ。

 なぜムーバからFOMAへと移行する人が多いのか──それはゲームにハマってパケット代に1カ月2−3万円(人によっては2ケタになるという噂も……)も費やすユーザーが出てきたからだ。そうしたユーザーにとって、ダウンロード速度も速く、パケットパックも提供されているFOMAは魅力的に映り、乗り換えユーザーが続出したという。その結果、ミラクルくえすと登録ユーザーのうち、なんと「7パーセントがFOMAユーザー」というから驚きだ。

 FOMAユーザーが多いことはハドソンも認識しており、iモーションに対応したフルCGムービーをミラクルくえすと2に盛り込むなどの工夫をこらしている。「FOMAユーザーだけのためにフルCG」とは、かなり気合いが入っている。

コンテンツ制作の苦労はFOMAもPDCも同じ

 FOMA対応を待ち望んでいたコンテンツの一つに「SQUARE ENIX MELODY」という着メロサイトがあった。こちらは、2002年11月からFOMAに対応、マイFOMAを手に入れた私が嬉々として目当ての着メロをダウンロードしたのは言うまでもない。

 スクウェア・エニックスの宣伝部、吉川ルミ氏によると、着メロサイトユーザーに「特にFOMAユーザーだからといった偏りは見られない」とのこと。また着メロの場合、「FOMAだからといって技術的に難しい点があるわけではない」といい、高品質を維持しながら新機種に対応する大変さは、PDCもFOMAも変わりないと話す。


スクウェア・エニックスは、FOMAの次期モデル対応の大容量iアプリとして、ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」の完全移植版を開発している(9月25日の記事参照)

 現段階でのiモードサイトのFOMA対応は「505iシリーズに対応後、余力があれば……」という流れな印象を受けた。また「ムーバを超える」といわれる次期FOMA(11月17日の記事参照)に照準を合わせるコンテンツプロバイダも多いのかもしれない。

「霊に憑依されながらがんばってます」〜コンテンツ開発秘話

 今回の取材ではコンテンツプロバイダの方々がどうやってコンテンツを作っているのかが伺えて興味深かった。例えばハドソンには「心霊恐怖通信」というコンテンツがあるのだが、携帯コンテンツに携わるスタッフが(今回対応してくれた寺田氏や橘氏なども)毎年霊媒師と共に心霊スポットへ出かけ、恐怖を実際に体験してくるのだとか。寺田氏に至っては、自分自身が憑依されてしまったこともあるらしい。ううむ、最新機種への対応というデジタルな技術面だけでなく、アナログな面でも苦労が多いようで……。iモードコンテンツを見る目がちょっと変わりそう。



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関連リンク
▼ ハドソン
▼ スクウェア・エニックス

[野田幾子, ITmedia]

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