Mobile:NEWS 2003年12月15日 09:05 PM 更新

携帯ショッピングの現状と可能性(最終回)
普及のポイントは何か?

決済機能やサービス環境が向上し、ユーザーの利便性が高まっている携帯ショッピング。今後はサイト構築サービスやマッチングサービスが普及のポイントとなりそうだ。

 携帯で本当にものが売れるのか――。そんな観点から、携帯電話による物販の可能性を探る取材を進めてきた。最終回では、電話やFAXに次ぐ手段としての携帯電話利用に取り組む通販業界の事例を見ていくと共に、今後の携帯ショッピング普及のポイントなどを探ってみた。

カタログ通販と携帯ショッピングの連携で相乗効果も期待

 通販業界にとっての携帯ショッピングは、これまでの電話、FAX、インターネット同様“購入手続きを行う一手段”に過ぎない。ユーザーとの間のチャネルを増やすことで、通販メディアに接触する頻度を引き上げたいというのが狙いだ。

 「カタログ通販は、カタログが一方的に送られてきて、ユーザーが暇な時に眺めて好きなものを選ぶ“PUSH型”スタイル。一方のインターネット通販は、目的商品の検索買いの多い“PULL型”という定義づけ」と話すのは、千趣会の岡田麻子マーケティングプランナー。「カタログ通販では、購入頻度は少ないが複数の商品を購入してもらうことが多いため1回あたりの購入価格が高い。インターネット通販は、購入頻度は高いが1回あたりの購入価格が安いのが特徴。そして、携帯電話とカタログを併用するスタイルによって、購入頻度および購入価格とも高くなる傾向にある」(岡田氏)。紙媒体と連携のとりやすい携帯ショッピングならではの相乗効果といえそうだ。

 「『カタログとネット』という相乗効果(PULL&PUSH)は、3年前の立ち上げ段階に企図したものです。それから3年間の運営を通じてこの図式は確信となりました」(岡田氏)。

2次元バーコード「QRコード」の可能性

 今後紙媒体と携帯ショッピングの連携をサポートする機能として期待されるのが、「QRコード」(2002年9月3日の記事参照)に代表される2次元バーコードだ。簡易な情報入力手段として注目されるこの仕組みは、ボーダフォンが「QRコード」対応機種を他社に先駆けてリリース。NTTドコモも「505iSシリーズ以降の端末で標準搭載することを決めている(11月17日の記事6月11日の記事参照)。

 既にこの「QRコード」の可能性に着目し、これに標準対応する携帯ショッピング構築ASPサービスもある。その一例が、トッパン・フォームズが販売を手がける「ゆびコマ」(開発元イー・キャッシュ)(5月26日の記事参照)だ。トッパン・フォームズの池内秀行本部長は、「QRコード対応端末の普及が進めば、携帯ショッピングと紙媒体とのメディアミックスをより促進させることだろう」と予測している。

 またQRコードは仕様がオープンになっており、誰もが簡単に利用しやすいという便利さがある半面、改ざんなどの心配もある。この対策としてセキュリティ機能を付加強化したQRコードなども開発されており、安心して情報のやり取りを行える環境が整いつつある。

サイト構築サービスやマッチングサービスが普及のポイント

 サービス面では今後、携帯ショッピング構築サービス事業者や、売り手と買い手とを上手くマッチングさせる“仲介者”の存在が携帯ショッピング市場を拡大させる鍵になっていくと見られる。

 なぜなら携帯ショッピングのサイト構築やメンテナンス、運営、販促プロモーションなどの技術は、かなりの経験則を必要とするからだ。各キャリア、各端末の仕様に合わせた最適なサイト、コンテンツを用意していくことだけ考えても至難のわざ。会員向けメールマガジンの発行一つ取っても、複雑化するキャリアのスパムメール対策でシャットアウトされてしまうケースも少なくない。

 女性向け携帯ショッピングサイトを運営するゼイヴェルは、アパレル業界と提携し、携帯ショッピングサイトの運営代行なども手がける。また「ちびギャザ」を運営するネットプライスは全国各地の有名グルメショップと提携し、ネットプライスが選んだショップの商品販売を携帯ショッピングサイト上で行っている。これらは、携帯ショッピングで培ってきたノウハウを他事業者に向けてサービス化する動きだ。

 ネットプライスの伊藤直社長室長は、「メーカーさんや問屋さんからご提供いただいた商品は、自社のネットワークとノウハウを駆使して徹底的に販売促進を行なうとともに、販売後のマーケティングデータを提供元へフィードバックします。このマーケティングデータは、新規の商品企画などに重宝されています」と相互連携の効果を説明する。

PCショッピング以上に普及するという見方も

 これまでは携帯電話の乏しい表現力を補うため、携帯ショッピングでは雑誌やカタログなどとのメディアミックスが必須だという声もあったが、パケット通信の定額制サービス(10月22日の記事参照)や、3Gによる動画配信などの環境が向上すれば、「携帯完結型」の携帯ショッピングサイトでも利便性の高い、リッチなサービスが登場してくることも十分考えられる。

 「社内では、携帯ショッピングの売り上げがPCサイトを超えるのではないかという見方もある」(楽天広報)といわれるなど期待の高さが伺われる携帯ショッピング。事業者のさまざまな挑戦によりユーザーも増え、ますますの市場拡大と今後の発展に期待したい。

“便利な会員サービス”を徹底する「千趣会」

 通販業大手の千趣会では、カタログ通販会員650万人に対し、PC・携帯共通のインターネット会員数が210万人、うち携帯電話をメインに利用するユーザーは45万人。毎月の新規登録者は1−2万人程度ずつ増加している。インターネット通販の売り上げが通販全体の総売上高に占める割合は年々増加傾向にあり、携帯ショッピングが占める割合は既にネット売上高の4分の1程度だという。

 携帯ショッピングサイトでは、電話やハガキ、FAXで商品の注文を行った場合でも、サイト上で商品の発送予定、荷物の宅配状況、商品代金の支払い、商品代金支払い後の千趣会入金状況などが確認できる。便利さを追求した会員サービスが、支持される理由の一つといえそうだ。



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関連リンク
▼ 千趣会
▼ 楽天市場
▼ イーキャッシュ
▼ ゼイヴェル
▼ ネットプライス

[中村実里, ITmedia]

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