QuickTime 6.5がKDDIをサポートする意図6.3で、ドコモが採用する3GPP形式をサポートしたQuickTimeが、今度はKDDIの3GPP2とAMCをサポートした。米Appleのフランク・カサノバにその意図をインタビューした。
アップルコンピュータがQuickTime 6.5をリリースした(12月19日の記事参照)。同社はすでに6.3で3GPP形式をサポートしていたが(6月10日の記事参照)、今回のリリースによって、新しい標準フォーマットである3GPP2、さらにAMCと、いずれもKDDIにゆかりの深いフォーマットがサポートされたことになる。今回のアップデートについて、米Apple本社のQuickTimeプロダクトマーケティングディレクター、フランク・カサノバにビデオ・インタビューした。
まず技術的に考えて、「QuickTimeでサポートされるフォーマットが追加された」というのは何も不思議なことではない。QuickTimeは常にサポートするフォーマットを増やしていくことで、映像を扱う側の味方となってくれる技術である。今回のサポートについても、「QuickTimeのExport機能をサポートしているソフトであれば、どんなソフトであってもAMC、3GPP2といったファイルを作成できることになる」(カサノバ氏)。 QuickTime Playerはもちろん、アップルのFinal Cut、iMovie、Adobe Premiereといったソフトで、iモーションメールやEZムービーを作り出したり、逆に送られたムービーを再生して楽しむことができるようになるわけだ(QuickTimeというのは、基本的にアプリケーションの名称ではない。アプリケーションとOSをつなぐミドルウェアの名称である。念のため)。 カサノバ氏は、「GSMで扱われている3GPPと、CDMA2000で扱われている3PGG2に対応した」と話した。単に3GPPと3GPP2だけであれば、「ああ、アップルは常に標準をサポートするんだな」ということになる。 が、前回の3GPPサポートの際にはNTTドコモとの協力関係が強調され(6月10日の記事参照)、今回の3GPP2サポートでは、KDDIとの協力関係が強調されている。3GPP2だけでなく、AMCもサポートされており、インタフェース上でも、それらには「EZムービー」と記されている。何か意図があるのだろうか? KDDIとアップルのどちらが先に持ちかけた話なのか。 「我々がドコモのサポートに向けて動いてた頃、他の携帯電話に関しての可能性を調べていた。KDDIとも話をしたところ、彼らも標準フォーマットに移行しようとしているようだったが、すでにAMCという独自フォーマットを使ったビジネスが存在していた。そこで、このAMCに関してもサポートしようという話となったというわけ。KDDIとは密接に作業してきたよ」 補足すると、QuickTimeには元々、「あらゆる標準フォーマットをサポートしていく」という線が基本にあり、その延長線上に現れたのがAMC、と捉えてもいいかもしれない。さらにいえば、3GPP、3GPP2、AMCというのは、どれもMPEG-4ファイルフォーマットを元にしたものであり、サポートするのにそれほど手間がかかるものではないのだ。 そのため、今後もアップルは有力なフォーマットが登場して、それが「標準」であれば、それをサポートしていく方向に動いていくであろう。
今回のQuickTime 6.5では、「ムービーフラグメント」なるものがサポートされている。これについて質問したところ、 「これはストリーミングに近い形でダウンロードを行う技術だ。プログレッシブ・ダウンロード(HTTPストリーミング)に近いが、RTSPプロトコロルも使われている」 ということらしい。ダウンロードしながらストレスなく再生するための技術の名前と考えていいだろう。 さて、アップルはこの携帯という分野にそれほど大きな可能性を感じているのか。もちろん、それがなければサポートなどしないだろうが、イメージとしては、アップルは米国を最優先しそうだ。そこで米国の事情について質問すると、 「日本や香港、北京、シンガポールといったところと比べるとまだまだ。静止画のピクチャフォンが登場してきた、というところだよ」とのことである。そんな状況であるにもかかわらず、NTTドコモ、KDDIと共同作業をして携帯に力を入れてくれているというのは、日本人としては喜ぶべきことだろう。昔は逆に日本人がおいてけぼりにされることも少なくなかったのだ。
QuickTimeのサポートによるメリットを享受できるのは、やはりいろいろなサイトの運営者とコンテンツ制作者だろう。元となる映像素材、音素材を持っていれば、簡単に携帯向けのコンテンツを作成することができる。高度な編集ソフトを使ってもいいが、QuickTime Playerという扱いやすい「編集ツール」で簡単に携帯電話向けコンテンツを制作できるのだ。PCで再生できるというのもメリットだが、メインは制作と考えるべきだろう。 ただしアップルがこの分野だけにのめり込んでいるというわけではない。 「忘れてはならないのは、QuickTimeは、携帯電話サポートだけでなく、HDなどのハイエンドの分野まで、広範囲にサポートしたものであるということ。今回のリリースでもDVコーデックが向上しているのだ」(カサノバ氏)ということである。QuickTimeは、「携帯電話において“も”有力な技術である」ということでしかない。あとは使う側、作る側、運用する側が、その技術をいかにコミュニケーションの分野に活用していくか、ということだろう。キャリア、サイト運営者、コンテンツ制作者が本当にQuickTimeの素晴らしさに気づいたら、まだまだ携帯ムービーは面白くなっていくだろう。
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