2004年が3G決戦の年なら、2005年は3.5Gの導入が目玉になりそうだ。
3.5Gとは、KDDIの「CDMA2000 1x EV-DO」(サービス名CDMA1X WIN)、ドコモやボーダフォンなどW-CDMA陣営では「HSDPA」という通信方式を指す。EV-DOが“Evolution Data Only”、HSDPAが“High Speed Downlink Packet Access”の略であるのを見ても分かるように、いずれもインターネット的なパケットデータ通信専用の通信方式だ。
KDDIは既にEV-DOを使って、800MHz帯(1X WIN)、2GHz帯(専用端末)で既にサービスを開始している(2003年10月の記事参照)。ドコモは2005年前半にはHSDPAネットワークを整備し、端末を投入してくる予定だ。ボーダフォンは「グループとして研究はしている」と答えるに留まっている。
速度は、EV-DOでは最大2.4Mbps(平均600Kbps)、HSDPAは最大14Mbps(平均2〜3Mbps)に達する。ただしドコモが公開した資料によると、サービス開始時、ネットワーク自体は14Mbps対応だが端末は3.6Mbpsまでに速度を制限する形になる。
世代 | 通信方式 | 下り最大速度 | 採用キャリア |
---|---|---|---|
2G | PDC | 28.8Kbps | ドコモ、ボーダフォン |
3G | W-CDMA | 386Kbps | ドコモ、ボーダフォン |
3G | CDMA2000 1x | 144Kbps | KDDI |
3.5G | CDMA2000 1x EV-DO | 2.4Mbps | KDDI |
3.5G | HSDPA | 14Mbps | ドコモ予定 |
※PDCのパケット通信は2.5Gと呼ばれる場合もある
3Gが普及の途について間もないのに、早くも3.5Gがささやかれるのにはいくつかの理由がある。
一つは、「装置ビットコストが従来の約10分の1」(ドコモ)と安いこと。テレビ電話などを当初想定していたW-CDMAと異なり、インターネット型のパケット通信に特化させることで、低コストかつ高速通信が可能となる。
二つ目は、定額制の可能性が拓けることだ。3G──特にW-CDMAは音声とデータを同様のネットワークで伝えるため、電波の状態にかかわらずデータ通信速度がある程度保証される。ところが3.5Gでは電波の状態やユーザーの混み具合によってスピードがかなり変化する、ピーク速度重視の通信方式だという特徴を持つ。ユーザー数が多い場合も速度が低下するだけで済む。あくまでベストエフォートという形で定額制を導入しやすい通信方式だ(2003年1月の記事参照)。
ドコモにとっては、定額制で先行したKDDIに対抗できる技術を早期に投入したいという考えがあるだろう。W-CDMA方式も、下り速度を現行の386Kbpsから2Mbpsに高速化する、上り速度を現行の音声端末の64Kbpsから386Kbpsに上げるというステップがある。これをスキップしてもHSDPAに進むのは、対KDDI戦略という見方もできる。
HSDPAが始まれば、EV-DOは最大通信速度で負けることになる。ただし、EV-DO自体のEnhanced版も予定されている(2003年7月の記事参照)。CDMA2000 2x EV-DOは、1x EV-DOのチャンネルを2本束ねて使うものだ。1チャンネル当たり5MHz幅のW-CDMAと異なり、EV-DOは1.25MHz。2チャンネル束ねても必要な周波数幅はW-CDMAよりも少ない。
一方、3Gの普及に目星がつかないボーダフォンは、「3.5Gとか4Gとか言う前に、まずは3Gを固めて」というスタンス。英国の親会社との関係も見ながら進めなくてはならないだけに、難しいところだ。
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