NEC、カード型カメラ付き携帯を開発

» 2004年02月03日 11時22分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 NECは2月3日、カード型のカメラ付き携帯電話端末を実用化したと発表した。1.8インチTFTカラー液晶と30万画素のCMOSカメラを搭載しながら、厚み8.6ミリ、重さ70グラム。GSM/GPRS方式に対応しており、待受時間は85時間。2月から中国市場に投入する。

 「モバイル技術の優位性、小型薄型化技術の象徴。NECのモバイルブランドのイメージを確立したい」とNECモバイルターミナル事業部長の田村義晴氏は話す。

 “フラグシップ”端末ということで価格も高め。市場価格で7000元(日本円換算約10万円)を想定している。数量は年間10万台と、あくまで中国市場のブランディングが目的だ。

 今回の端末は、超薄型の部品開発や機能を階層ごとに切り分けるレイヤー構造の採用などによって、従来比50%となる39ccの容積を実現した。技術はGSMだけでなくW-CDMA方式の端末にも応用可能。

 「今後もさらに超薄型化実装技術を継続して、さらなる小型化・薄型化を進める。電池の長寿命化やバリエーションを展開して進めていきたい」(田村氏)

通話にはイヤホンマイクを利用する

実装技術進化で、容積半分に〜FOMAにも応用可

 カード型端末を実現するために、NECは超薄型実装要素技術を開発した。半導体レベルで新しいチップを開発することなく、部品レベルの開発と実装技術で実現している。「新部品として起こしてしまうと時間もコストもかかる。設計は見直しているが新部品とはちょっと違う」(上席中国事業プロフェッショナルの山崎康司氏)

 薄型化のため無駄な空間をなくすことに力を入れた。そのため基本機能を3つの層に分けてモジュール化し、重ねている。最上部には液晶やキーなどの「入出力モジュール」、中央には無線回路(RF、ベースバンド)やロジックICを集めた「回路モジュール」、最下部には電池やSIMカードの「パワーモジュール」を配置。それぞれのモジュールを3ミリ以下に制限し、表面実装するチップの背を揃えることで、全体で厚さ8.6ミリを実現した。

 厚みを減らすためチップのスタック(積み重ね)は行っておらず、微細ピッチCSP(超小型パッケージ)を使って実装面積を削減した。

 単に薄く小さくするだけなら簡単だが、「商用レベルで落下やアンテナ感度などを確保しつつ、実現した」(田村氏)のが大きい。「FOMAにせよPDCにせよ、LSIを持ってくれば同じようなことは実現可能。最初に商用化したのがGSMで特に中国を狙ったということ」(田村氏)

 ただし小型薄型FOMAの実現には、機能の妥協が必要になる。今回は薄型化のため、電池も通常の約半分の容量にあたる400mAhのものを使っている。「FOMAでは100万画素以上が普通だが、30万画素カメラでよくてディスプレイもこれでいいならFOMAでもできる。最新機能を入れ込むと厚くなるだろう」(田村氏)

中国市場だからこそできた、カード型端末

 普通に考えれば、かなりニッチなカード型端末を商品化できたのは、中国市場の独特な性格ゆえだ。

 「(中国は)商品や使い方については非常に受容性が高いマーケット。やや尖ったものを出すに当たっては受け入れられる可能性が高い」(田村氏)ことが、製品投入に結びついた。

 山崎氏は中国市場の価格弾力レンジの広さも指摘する。日本円にして10万円という高価な端末でも、確実に市場があるのが中国だ。

 「NECは中国では後発。従来にはないアグレッシブなマーケティングを取る」と田村氏。同社が中国市場の2.5G端末に関わり始めたのは最近で、本格的に端末を投入し始めたのは2003年1月から。2003年は7機種を中国市場に投入し、2004年は20機種を予定するなど、急速な立ち上がりを目指している。

 「年間700機種も投入される、たいへんな激戦区。超薄型実装技術で中国市場でのプレゼンスを高めていきたい」(田村氏)

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