片目で見れば立体に〜バンダイネット、待受画像配信

» 2004年02月06日 15時22分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 バンダイネットワークスは2月6日から、世界初の片目で見る3D待受画像を配信する。磯野仁氏が発明した「Wink3D」という疑似立体表現技術を使い、特殊なフィルターやメガネをかけることなく、一般の液晶ディスプレイで立体表示を実現した。

 対象機種は、ドコモの505i(S)/900iシリーズ。これは、壁紙の配信フォーマットとしてMacromedia Flashを用いるため。技術としては「ゲームなどのオープニングや、ゲーム自体にも応用可能」(バンダイネットワークスビジネス開発部の井原鉄五朗氏)。

 Wink3Dに対応した待受画像は、同社のiモード公式サイト「キャラっぱ!」内のサービスとして「トリックアート画像」という名称で提供される。機動戦士ガンダムやゴジラ、たれぱんだ、しげしげしげおなど、10キャラクターの画像が用意され、毎月1キャラクターずつ追加する予定だ。

 料金は月額100円。「メニューリスト」−「待受画面」−「キャラクター」から。

両眼視差は必要なし〜発想の転換「Wink3D」

 「Wink3D」が、従来の立体視可能なディスプレイと大きく違うところは、両眼視差を全く用いないことだ。

 人が立体感を感じるのは、右目に映る絵と左目に映る絵が異なることによる。遠くにあるものは、右目と左目で見え方が変わらないが、近くにあるものは左右の目で大きく違って見える。この差(両眼視差)を脳が判断して、立体を認識する。

 つまり右目と左目に異なった適切な絵を見せてあげれば、人口の絵や平面ディスプレイであっても立体感を感じさせることができる。左右で色の違うフィルター付きのメガネをかけたり、裸眼で立体視可能な液晶も理屈は同じ。右目と左目に異なった映像を送り込むことで、立体に見せているのだ。

 従来、“立体化”といえばこの両眼視差を使った方法が主流で、劇場サービスから家庭用のテレビ、携帯電話に至るまで商用化されてきた。反面、特殊な機材やディスプレイが必要で、コンテンツも右目用と左目用に作る必要があるなど、一般に普及したとは言い難い状況にある。

 Wink3Dは、両眼視差の概念を使わずに立体感を見せる。片目のほうが立体に見えるという、まさに逆転の発想から立体感を実現した。

片目のほうがより鮮明な立体感

 風景などを見るときも、人が立体感を感じるのは両眼視差が基本。しかし片目をつむっても、立体感がなくなるわけではない。それはなぜか。

 「人は物体と物体、背景との関係で、立体感を認識している」とWink3Dの開発者磯野氏は資料で述べる。

 たとえば、近くにあるものは鮮明に見えるし、遠くにあるものはボンヤリとする。近くにあるもののほうが大きく見え、遠くにあるものは小さく見える。遠くにあるものは近くにあるものの陰に隠れる。動いているものなら、近くにあるものは動きが速くて大きく、遠くのものはあまり動かない。こうした関係をうまく使って、立体感を出そうというのがWink3Dの主旨だ。

 実際のWink3Dでは、立体に見せたい物体を左右に動かし、揺れ幅を調節することで、立体を感じさせている。

 片目で動く画像を見てほしい。奥行きが見えてきただろうか

 その際に、「(通常)立体感がなくなる片目のほうが、より鮮明な立体映像を見ることができる」という。この“片目で見る”のがWink3Dの語源だ。

普及までは難度高いコンテンツ制作

 画期的なWink3D技術だが、商用化がスタートしたばかりとあって、課題もある。コンテンツ制作が大変なことだ。

 コンテンツ制作では、1枚の原画に描かれている要素を、遠くに見せたい物、近くに見せたい物というように複数のレイヤーに分け、さらに近くに見せたい物ほど大きく動かすという作業を行う。

 バンダイネットワークスは当初自社で制作する予定だったが、「一般のデザイナーにやってもらったが、なかなかうまくいかない。結局、磯野さんに素材を渡して作ってもらっている」(井原氏)。レイヤーの切り分け方や、揺れ幅などのノウハウが重要になると言う。

 画像内の要素を別個に動かさなくてはならないため、特に携帯電話の場合、CPUパワーも必要だ。Macromedia Flashを使ってサービスしているのは、「3Dポリゴンでも可能だが、揺れる動きが遅くなってしまう」という理由による。

 とはいえ、カメラ付き携帯が普及するなかで、バンダイネットワークスの立役者であった待受画像コンテンツの勢いが落ちてきているのも事実。同社は、Wink3Dを活用することで、待受画像コンテンツの新たな展開を狙っている。

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