ガタカ「自分に戻ってくれ」Mobile&Movie 第100回

» 2004年02月13日 19時04分 公開
[本田亜友子,ITmedia]

作品名ガタカ(GATTACA)
監督アンドリュー・ニコル
制作年・製作国1997年アメリカ作品

 「Mobile&Movie」100回記念作品としてご紹介するのは、スタイリッシュな映像で近未来を描く「ガタカ」。遺伝子の認証技術が発達し、遺伝子の優劣で人生が決まってしまう社会に立ち向かっていく若者のひたむきさに心打たれます。

 そう遠くない未来。子どもは生まれて数秒後には遺伝子検査により、能力、性格、推定寿命までも分かるようになっていました。遺伝子を尊重する社会では、出生と同時に人生が決まってしまうのです。

 劣性遺伝子のビンセントは、“不適正者”の烙印を押されながらも、幼い頃からの宇宙飛行士になる夢を持ち続けていました。しかしビンセントの家族は「宇宙飛行士になんてなれるはずがない、“不適正者”では無理だ」と諦めさせようとしていました。ある時、弟のアントンと自分の能力に差がないと確信したビンセントは、家出して宇宙飛行士になる夢に向かっていくことを決意します。

 しかし、ビンセントの前には遺伝子の壁が立ちはだかっていました。面接時の遺伝子検査で“不適正者”であることが分かってしまい、職業の選択もままならないのです。「少しでも宇宙に関わる仕事をしたい」とビンセントは、宇宙局を持ちロケット事業を行なっているガタカ社の清掃夫として働き始めます。しかしガタカ社の内部に入り込むほど、ますます宇宙飛行士への憧れは募るばかり。ビンセントは日夜体を鍛え、天文学の勉強に励みます。

 そんなある日、ビンセントのもとにDNAブローカーがやって来ます。優秀な遺伝子を持つ男になりすまし、ガタカ社に就職するよう持ちかけてきたのです。ビンセントは悩んだ末、その契約を結ぶことにしました。ビンセントはその瞬間から、“ジェローム”に生まれ変わったのです。ジェローム・ユージーンは、非のうちどころのない優秀な遺伝子を持った青年でしたが、事故で足が不自由になっていたのです。こうして、ジェロームとユージーンの共同生活が始まりました。ビンセントは毎朝、ユージーンが採取した血液を細工して、ユージーンの髪、皮膚などを忍ばせ、ジェロームになりきるのです。

 ジェロームの遺伝子によって、難なくガタカ社の入社試験をパスしたビンセントは、エリートコースを順調に進み、とうとう宇宙飛行士の候補者に選ばれます。

 しかし夢が現実に近付いた時、思わぬアクシデントがビンセントを襲います。ガタカ社には、警察官が出入りし、潜入者の調査が行なわれるようになりました。ロケットの打ち上げが延期になるかもしれないという動揺で、ビンセントは思わず自分の遺伝子データを内部に残してしまったのです。

 さらに、捜査にやって来た刑事の一人は弟のアントンでした。顔を見られ、ガタカ社にいることを不審がられてしまいます。アントンが、ジェロームの身元を確認するため、家に向かい始めた時、ビンセントは慌てて、携帯電話でユージーンに連絡を入れます。

「自分に戻ってくれ」

ジェロームとして振舞うよう、ユージーンに頼みます。

「難しい」

 車椅子の生活が見破られないようにするには、ユージーンは普通のソファに座っていなければなりません。自力で移動するのは、時間のかかること。

「捜査官が行くんだ。病気のふりを」

「どれくらいで着く?」

「もう、すぐだ」

 焦るビンセントの声。ユージーンは危機一髪でアントンの訪問に間に合うのか、それとも、最後の最後でビンセントは正体を見破られ、これまでの努力が水の泡と消えてしまうのか。ビンセントが宇宙飛行士の夢をかなえられるよう、願わずにいられません。

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