松下電器産業は2月13日、極小画素ながら暗所での高画質撮影が可能な高感度・低消費電力のイメージセンサー「νMAICOVICON(ニューマイコビコン)」を開発したと発表した。第一弾製品として、メガピクセル化が進むカメラ付き携帯電話向けに1/4インチ130万画素タイプを今年2月から、1/3.2インチ200万画素タイプを今年3月から、それぞれ量産を開始する。
カメラの代表的な撮像素子(イメージセンサー)には「CCD」と「CMOSセンサー」がある。画素情報(電荷)をバケツリレー式に順次転送するCCDは、高感度でノイズが少なく、動画特性も優れていることからデジカメやメガピクセル以上の高画素携帯カメラに多く採用されている。だが一般的なCCDは動作に10ボルト以上の高い電圧や、マイナス電圧など数種類の電源が必要で、消費電力が高くなってしまうのが欠点だった。
一方、回路を低電圧で動作できるCMOSは低消費電力が特徴。だが感度が低いため暗い場所での撮影に弱く、それをカバーするため大きなセルサイズで受光部の面積を大きくすることが必要だった。そのため微細化が困難で、同一画素サイズのCCDよりも性能で劣るといわれていた。
各画素のアドレス(X-Y)を指定して個々のデータを読み出すνMAICOVICONは、構造的にはCMOSセンサーと同じ「X-Yアドレス方式」の増幅型イメージセンサーとなるが、受光部面積を広げて高感度化する「新構造画素技術」、画像のザラつきを抑える「低ノイズプロセス技術」、低電圧・低消費電力の「信号読み出し回路技術」の3つの基幹技術によって、CCD並みの「高画質」とCMOS並みの「低消費電力」を両立したという。
「携帯電話向けでは業界最小クラスとなる2.8マイクロメートルのセルサイズと、5ルクス以下の暗所での高感度・低ノイズ撮影を可能にした。また、消費電力はCMOS並み(130万画素タイプが25ミリワット、200万画素タイプが45ミリワット)なので、長時間の高画質撮影が可能。CCDとCMOSの欠点をカバーした、CMOSとは違う新しいイメージセンサー」(同社)
また撮像素子の構造は、CMOSセンサーよりも配線構造がメタル1層分少ないため、さらなる微細化も可能。同社の微細化ロードマップでは2005年にはCCDに追いつき、そのセルサイズは2マイクロメートル以下になるという。
「νMAICOVICONならモジュールをCCDよりも薄く小さくすることが容易で、高画素カメラを搭載した携帯電話の薄型・小型化に貢献する。またCCDとは違ってνMAICOVICONは構造上スミアが発生しないため、監視カメラや車載用途にも適している。製造プロセスの簡略化やシンプルな構成回路などで、コスト的にもCCDの半分以下にすることも十分可能」(同社)
CCDに比べて低消費電力な点と、CMOSに比べて高画質な点が魅力のνMAICOVICONだが、CCDでもCMOS並みの低消費電力と小型サイズをうたう製品(別記事を参照)や、CCD並みの高画質を売りにしたCMOS(別記事を参照)も登場している。
同社でも、νMAICOVICONの性能に最適化した専用の信号処理DSPを併せて開発。イメージセンサーを単体で販売するのではなく、2チップでカメラシステムが構成できるといったソリューション提案を行う構えだ。
「携帯カメラ市場には、CMOSメーカーも多く参入し始めている。2004年はイメージセンサー戦国時代に突入し、価格競争も激化するだろう。われわれはソリューションの付加価値で対応していきたい」(同社)
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